<公開質問状に対する回答>

加藤 拓磨

<公開質問状>本当に工学博士?増田・自殺率のグラフを並べてみた(笑) において私に対して、公開質問状が届いておりましたので回答させていただきます。

まず、渡瀬氏自身がここまでデータを整理されて、私がお伝えしたかった「増田県政時の岩手県が全国と比較して自殺率が向上していない」という事実をより鮮明にしていただいたことに感謝いたします。

そして、この図面をもってPRESIDENT誌に改めて寄稿していただければ幸いです。

候補者へ対する印象が変わってしまう衝撃的な記事ではありましたが、増田岩手県政において自殺率が特別に全国と比較して変化しているとは、どうみても解釈できません。

1990年を自殺率の基準年にした理由としては、バブル崩壊(1991~1993年)という社会現象要因の日本における自殺増加を考慮すべきだからこそ、全国と岩手の比較するわけであるから、バブル崩壊後の深刻期や回復期の地域別良さを出さないためにも、バブル崩壊前の1990年を基準にしています。

バブル崩壊以降、長期間にわたり、全国的に 倒産拡大、経済悪化、雇用減少などがあったため、自殺の増加が全国平均としてみられる中で、そこを完全に無視して、岩手県だけを取り上げて、県政の自殺率だけをみて激増とみるのは、誤解を与えるからため全国と岩手県の両方をみます。

貴殿がおっしゃるように基準年の設定を変えることで印象が変わるということですが、1995年(増田県政開始年)の自殺率を測定する基準とするよりは1994年の増田県政が開始する前年を基準とする方が増田県政の成果が見やすいということから図1を作成しました。

図1 1994年を基準とした自殺死亡率の変化倍率の年次推移(岩手・全国)

図1

全国・岩手県で比較すると、どちらが少ないかでいえば、増田県政の12年間中8年は全国よりも下回っています。

しかしこれの差は統計学的に有意差が認められません。

統計学手法にt検定(分かりやすい参考HP)というものがあります。

これは例えば薬学の分野で薬の投与が患者の病状に影響があったかどうかの有意差を判定する統計学の初歩的な分析手法です。

この手法でp値を計算する。p>0.1のとき:有意差はない、0.05<p<0.10のとき:有意傾向である、p<0.05のとき:有意差があると判定されます。

本計算条件は両側検定、有意水準α:0.05としました。

貴殿が提案された基準年を含めた分布に関してもt検定を行ったところ、p(基準年1990):3.8E-06、p(基準年1994):0.12、p(基準年1995):0.67、p(基準年2006):0.35となり、有意差が認められるのは1990年のみです。

本件の場合はサンプルサイズが12個(12年)では少なく、統計解析手法を使うことでの有意差の議論には疑問があるために、視覚的な感覚で論じざるを得ませんでした。

有意差が認められない、視覚的な感覚にしたとしても、12年分の8年は低下しております。

いずれにしても増田岩手県政で急激に増加したような表現は誤報であるとの信念は変わりません。

 

加藤拓磨
加藤拓磨 中野区議会議員

1979年、東京・中野区生まれ。中央大学大学院理工学研究科 土木工学専攻、工学博士取得。2009年、国土交通省に入り、国土技術政策総合研究所で、ゲリラ豪雨、防災・減災、地球温暖化による影響等の研究に従事。2014年、一般財団法人国土技術研究センターを経て、15年中野区議選で初当選。