蓮舫氏の経歴詐称疑惑は深まった

池田 信夫


先週の八幡和郎さんの記事をきっかけにアゴラが報じてきた蓮舫問題は、われわれの予想どおりの結果になった。事実関係については八幡さんと私がこれまで書いた通りなので繰り返さないが、彼女の記者会見には不審な点が多い。彼女はこう弁明している。

国連の女子差別撤廃条約を受けて、日本の国籍法が1985年の1月1日に改正施行された、その直後の1月21日に日本国籍を取得しました。併せて台湾籍の放棄を宣言しています。このことによって私は日本人となりました。

これはおかしい。国籍法14条では「日本の国籍の選択は、外国の国籍を放棄する旨の宣言をすることによつてする」と書かれているが、宣言だけでは台湾籍は残る。第15条では「選択の宣言をした日本国民は、外国の国籍の離脱に努めなければならない」と定めている。

つまり台湾の国籍法に定める「内政部の許可を得て、中華民国国籍を喪失する」手続きをしないと、台湾には国籍が残ってしまうのだ。この手続きは満20歳にならないとできないので、1985年1月(17歳)に「未成年だったので父と一緒に東京にある台湾の代表処に行って、台湾籍放棄の手続きをしています」というのはおかしい。

この手続きを彼女のスタッフが今日したらしいが、すでに放棄した国籍をもう一度放棄することはありえないので、これは台湾籍が残っている可能性を認めたということだ。したがって「18歳のとき台湾籍を抜きました」というのは疑わしい。「生まれたときから日本人です」というのは、きょうの記者会見と矛盾するので、明らかに経歴詐称である。

公選法235条には「虚偽の事項を公にした者は、二年以下の禁錮又は三十万円以下の罰金に処する」という罰則があり、これまで経歴詐称が明らかになった国会議員2人は議員辞職している。彼女が「台湾語がわからなかった」とか「覚えていない」と弁明したのは、この容疑を逃れるためだと思われる。

しかし公選法の規定は、過去の経緯にかかわらず、選挙中の言論が虚偽であれば適用される。「生まれたときから日本人」と参院選のときから言っていたとすれば、起訴される可能性がある。これは民族差別とは無関係な国会議員としての常識であり、説明が必要だ。「心が折れそうになった」といった表現で差別問題にすりかえるのはやめてほしい。

彼女が国籍という厄介な問題を抱え、しかも台湾という国交のない国の特殊な問題を理解できなかった可能性はあるが、それは野党第一党の党首になって首相をめざす人にとっては基本的な確認事項だ。情状酌量の余地はあるが、民進党の代表にはふさわしくない。今回の代表選挙は撤退するのが、政治家としての最低限度のモラルだろう。

追記:台湾の国籍法では、国籍喪失の手続きができるのは「満20歳以上であって、中華民国法によって能力を有し、自ら外国国籍の取得を申請する者」に限られるが、例外的に彼女の父親が代理として国籍喪失の手続きをしたことも考えられる。その場合は彼女の手元に「国籍喪失許可証」が残っているはずで、きょう代表処に行く必要はない。

追記2:ツイッターで教えてもらったが、1997年のCREAのインタビューで「自分の国籍は台湾」と発言している。これはきょうの会見はもちろん、選挙公報の「台湾籍から帰化」という記述とも矛盾する。