財政危機とは社会保障の危機である

池田 信夫


きのうのアゴラ政治塾では、鈴木亘氏(学習院大学)をゲストに招いて社会保障について話し合った。これについては「言論アリーナ」でも何度もテーマにしたので経済学的な問題は省略したが、政治塾で出てきた(既知の)話を補足しておこう。

よく日本の政府債務は1100兆円といわれるが、これは政府のバランスシートに載っているオンバランスの債務だけだ。純債務はこれより少ないが、財務省の推計では約670兆円で、GDPの1.35倍だ。

これとは別に、社会保障特別会計で向こう30年に払う約束をしているオフバランスの債務は、次の表のように純債務ベースで約1600兆円ある(鈴木氏の推計)。これは毎年約50兆円の赤字になり、一般会計から「社会保障関係費」などで穴埋めされる。したがって日本政府の借金は、合計で2200兆円以上あるのだ。

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今年度の一般会計の中では、一般歳出(裁量的な経費)の半分以上を社会保障関係費が占めており、国家予算は老人に食いつぶされて、日本政府はまともな公共サービスができない状態だ。このような常軌を逸した財政赤字が続けられるのは、大量の国債を日銀が財政ファイナンスで買ってきたからだ。

しかしようやく黒田総裁も方向転換を始めた。日銀が非常にわかりにくい形でそれを表現したのは、金利上昇を恐れているからだ。日銀がもっている国債は、まだ市場の1/3。地銀や信金が国債の投げ売りを始めたら、コントロールできない。長期金利が1%になったら「世界はがらりと変わる」と市場関係者はいう。

もはや財政赤字の要因として、社会保障以外は取るに足りないといってもよい。事業仕分けで「無駄の削減」なんてやっても、焼け石に水にもならないのだ。安倍首相がこの問題に手をつけないで「高齢化はチャンス」などと意味不明の話をしているのは理解できない。社会保障危機=財政危機は国を滅ぼす、憲法改正よりはるかに重大な問題だ。