ペルム紀末の大絶滅の理由 --- 本田 進一郎

2016年10月09日 06:00

地球上に生命が登場して以来、生物は順調に繁栄してきたわけではなく、何回かの大絶滅を経験している。そもそも学校で習った、原生代→古生代→中生代→新生代という地質区分は、大絶滅の前後で、生物相が大きく入れ替わった区分を表している。

一般には、大きな絶滅は5回が数えられており、もっともよく知られているのは、白亜紀末(6550万年前)の恐竜の絶滅であろう。このときには、恐竜やアンモナイトなど、生物種の70%が絶滅したとされている。白亜紀末の絶滅については、ユカタン半島付近のチクシュルーブ・クレーターを形成した隕石の衝突が原因という説が支持されている(文献参照)。

大絶滅の中でも最大のものは、ペルム紀末(2億6年千万年前)の大絶滅である。このときは、陸上生物種の70%、海生生物種では96%もの種が絶滅したとされている。ペルム紀末の大絶滅の原因は諸説あるが、まだはっきりと定まっていない。

ペルム紀の地球には、パンゲア大陸とよばれる超大陸が存在していた。地球上の植物は、シダ植物が繁殖し、針葉樹、イチョウ、ソテツなど裸子植物門も増え始めていた。裸子植物は、シダ植物から進化した樹木である。これらの植物のために、古生代の石炭紀からペルム紀の地層には、石炭が埋蔵されている。

地上の動物は、大型の両生類、爬虫類が多く生息していた。また、ゴキブリ目、トンボ目、甲虫目の昆虫をはじめとする節足動物も繁栄していた。なお、樹木を効率的に分解するシロアリはゴキブリ目であり、甲虫目も樹木との関係が深い。大絶滅が始まる前のペルム紀は、植物が繁栄したために、酸素濃度が高かったと考えられている。

海洋の生物としては、魚類、軟体動物、棘皮動物、腕足類などが多く、フズリナ、アメーバのなど原生生物、アンモナイトなど頭足類、三葉虫も生息していた。

ペルム紀末絶滅の特徴として、他の大絶滅に比べて、その後の生命の回復にきわめて長い時間がかかっていることである。回復に要した時間は、1000万年とされている。

絶滅の原因として考えられているのは、大規模な火山活動である。火山灰による低温化、火山ガス中の二酸化炭素の増加、メタンハイドレードの溶解などが原因ではないかとされている。火山からCO2が噴出した場合、CO2量はその後徐々に減少するはずである。しかし、ぺルム紀末には、CO2の増加が長期に続いており、回復に1000万年もかかったことが説明できないという批判がある。

もうひとつの説は、巨大隕石の地球への衝突である。じっさいに、この時期にイリジウムの濃集が確認されており、さらに大規模火災があった痕跡も見つかっている。しかし、隕石説も、ペルム紀末のあまりにも大規模な絶滅と、その後の回復に要した時間の長さをうまく説明できない。

ペルム紀末の特徴として大きいのは、大気中のCO2の増加である。さらに、大気中でも海水中でも、13C/12Cの値が急速に小さくなっていることが報告されている。これは、蓄積されていた有機物中の12Cが、大量に空中に放出したことを示している(植物は光合成の際に、12Cを多く吸収する)。また、海水中の酸素濃度が低下して、2000万年もの長期にわたって海水が酸素欠乏状態にあったことが判明している。

樹木の木質は、セルロース、ヘミセルロース、リグニンから成っている。木質を分解する生物は、担子菌門の木材腐朽菌である。木材腐朽菌は、セルロースとヘミセルロースを分解できる褐色腐朽菌と、リグニンを分解できる白色腐朽菌がある。

古生代の石炭紀の地層に石炭が大量に残存しているのは、地球上に白色腐朽菌が出現しておらず、樹木のリグニンが分解されずに蓄積したためと考えられている。

白色腐朽菌が、リグニンを分解する中心の酵素であるペルオキシダーゼ遺伝子を獲得したのは、2億9千万年前と推定されている。ペルム紀におきた有機炭素貯蔵量の急激な減少は、ペルオキシダーゼ遺伝子の登場が関与していると考えられている(文献参照)。

じっさいに、ペルム紀の堆積物中には、真菌類の大量増殖の痕跡が確認されている(文献参照)。

fungi

以上のことから考えると、ペルム紀末の大絶滅は、限界まで貯まったダムの水が一気に決壊するように、古生代に地表に蓄積した大量の炭素が、ペルオキシターゼ遺伝子の登場によって大崩壊したというのが、その理由ではないだろうか。そして、この時期の、高CO2・低O2を乗り切った生物たちによって、その後の中生代の生物相がつくられたと思われる。

本田 進一郎
著述、企画・編集業

参考文献、引用文献
The Chicxulub Asteroid Impact and Mass Extinction at the Cretaceous-Paleogene Boundary
http://science.sciencemag.org/content/327/5970/1214
リグニン分解酵素の進化が石炭紀の終焉を引き起こした
http://www.a.u-tokyo.ac.jp/topics/2012/20120702-1.html
The terminal Paleozoic fungal event: evidence of terrestrial ecosystem destabilization and collapse.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC39926/

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