猪谷千香さんの丁寧な取材が光る『町の未来をこの手でつくる』

長島大陸に赴任してから数多くの取材を受けてきましたが、ひときわ丁寧にまとめってくださったのが、ハフィントンポストのこの記事

書かれたのは、猪谷千香(いがやちか)さん。
この度、猪谷さんが新刊『町の未来をこの手でつくる』を出版されたので、早速拝読しました。

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この本は、岩手県紫波町(しわちょう)のオガールプロジェクトの過程や本質について、猪谷さんらしい視点で丁寧にまとめています。

オガールプロジェクトと言えば、

●日本初の国際規格をクリアしたバレーボール専用アリーナ
補助金に頼らない経営
●駅、役場、オガールプラザ等と連携した複合多機能施設
●役場、オガールタウン等と連動した日本初の地域熱供給システム

をはじめ最先端の取組が大きな注目を集めていますが、この本はまさに決定版。関係者への徹底したインタビューが、まちづくりに携わる人たちへの大きなエールになります。

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「たとえば、図書館をつくるという時に、他県にある最先端の図書館に教育委員会の職員と一緒に行くわけです。お金がないから、車に乗って何時間もいろいろな話をしながら一緒に移動します。一緒に話を聞けば、理解も深まる。そうした共通体験のひとつひとつが共通言語になっていきました」(101ページ)

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道路を敷設したり、いっぱい建物を建てたりすれば、町が良くなるというわけではない。制度や商業ではなく、人間がここに住んでよかった、ここだったら住みたい、ここだったら生涯を終えてもいい・・・と思えるような町をつくらなければならない」(36ページ)

東京の人だけおいしいコーヒーを飲める権利を持っているわけじゃないでしょう?と(紫波町には住みたくないと言う妻が)至極真っ当なことを言うわけです。田舎にいたって、おいしいコーヒーを飲めたっていいし、おいしい料理を食べられたっていい。つまり大型施設を建てるのではなく、ライフスタイルを中心としたまちづくりをしたほうがいいと。

そこから目を背けて、制度だとか法律だとかそういったことに、行政はまちづくりの軸を置いてしまうから、結局、全国に同じような町ばかりができる。その最たるものが、地方の駅前開発です。どこに行ったって同じような風景しかないでしょう?」(37ページ)

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補助金が入ってしまうと、どうしても身の丈に合わない施設を造るわけです。身の丈に合わないとどうなるか。テナントが入らない。それでも、無理やり入れたとしても、1年とか2年で出ていかれてしまい、破綻します。
だから、オガールプラザは自分たちが商売する部分については、補助金は入れていません。先に金融機関や投資家がどういう条件だったらお金を出してくれるのかチェックし、その条件をクリアするために優良テナントを見つけ、投資額も抑える。これをしなければ、破綻するのは当たり前です。」(128ページ)

こうした言葉を引き出すのが、猪谷さんの、この本の魅力です。
こうした信念で、オガールプロジェクトでは徹底したメリハリで建設費・維持費の削減に成功したわけですし、メリハリ自体が田舎における大きな魅力になったと考えています。

ぜひ皆さんも、『町の未来をこの手でつくる』を片手にオガールを歩かれたらいかがでしょうか。

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編集部より:この記事は、鹿児島県長島町副町長、井上貴至氏のブログ 2016年10月28日の記事を転載させていただきました(タイトル変更)。オリジナル原稿をお読みになりたい方は井上氏のブログ『「長島大陸」地方創生物語~井上貴至の地域づくりは楽しい~』をご覧ください。