農水相の失言は意図的な計略?

山本農水相

山本農水相の失言連発は意図的?(農水省公式YouTubeより:編集部)

TPPの採決の混乱を狙う

したたかな国会議員がいるものですね。わざと失言して、国会を混乱させ、法案審議を遅らす。本人は失言の効果があったとほくそ笑んでいるのではないですか。山本農水相がTPP(環太平洋経済連携協定)法案の審議の最中に見せた不規則発言は、私も初め「失言」と思っていました。それが「失言」が繰り返されたのをみて、「これは計略だな」。

一回目の失言は「TPPの強硬採決をするかどうかは、佐藤氏が決める」(先月中旬)でした。佐藤氏は衆院議院運営委員で、審議が熟せば、法案の採決をする人です。法案に野党が反対でも、強硬採決をすれば、自民党は勝つ。勝つといっても、機が熟さないうちに「強硬採決」をちらつかせたら、野党が怒り、国会が混乱します。

安倍首相は「われわれは結党以来、強硬採決を考えたことはない」と、立腹し注意しましたから、山本議員の発言は「口が滑った失言」を思った人は多いでしょう。本人は謝罪し、発言撤回しましたから、そこで終われば、やはり「失言」で幕が引かれたのでしょう。11月2日になって、「この間、冗談を言ったら、(閣僚を)首になりそうになった」と、二度目の不規則発言です。

失言の再犯は審議の遅延が狙い

首相の「結党以来・・」は事実に反し、必要とあれば、自民党は強硬採決に踏み切っていました。また、蓮舫民進党代表は「舌の根の乾かないうちにまた。こんな大臣がいるうちは、TPPなど国益に関する質疑はできない」と、声を張り上げました。蓮舫氏は二重国籍者(日本と台湾)の疑いが濃厚で、これまで真実を説明してきたとは思えず、山本農相を追及する資格があるか疑問です。

首相発言も、蓮舫氏の二重国籍疑惑は今回の本題ではないので、言及しないとして、山本農相の失言の「再犯」に接すると、「待てよ。国会の混乱と、TPP法案の採決遅延を意図している」と、推察しました。

米国の大統領選でTPP協定に反対の動きが強まっているため、安倍内閣は選挙前に日本がTPP法案を採決して、日本の姿勢を明示しようという計算できました。それを狂わせることを山本農相は狙ったと、考えられます。安倍政権としては、TPPに賛成でも、保護貿易色が強い農業分野では、自民党議員、農業団体も含め、反対が多いのです。これで山本農相は点数を稼げるという狙いを込めたのでしょうね。

裏の意図を探らないメディア

野党が騒げば騒ぐほど、「反対派のために、農水相は頑張ってくれている」となるのでしょう。テレビは映像ニュースにもってこいの失言騒動ですから、裏にどんな思惑が隠されているかお構いなく、報道します。本来なら、当初からTPP反対派だったとみられる山本氏(農業県の高知が地盤)をなぜ農水相に起用したのかこそ、ジャーナリズムが追及すべきテーマです。官邸も採決が近づいたら、山本農相の意思確認をしておくべきでした。

米大統領選でも、クリントン氏とトランプ氏の間で、品性に欠ける死闘が続いています。あるテレビ・メディアのトップは「特にトランプ氏は米国にとってためにならない。ただし、その言動は視聴率を稼げるので、わが社のためになる」と発言したと、報道されています。いやはや。山本氏の場合も「日本の自由貿易のためにはならない。ただし、今回の行動は視聴率をとれ、テレビ局のためになる」ということですかね。メディアよ、しっかり頼みますよ。


編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2016年11月4日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。