高橋洋一氏の著作権侵害について

アゴラ編集部

次の記事は、高橋洋一『中国GDPの大嘘』で著作権を侵害された金森俊樹氏から編集部に寄せられた公開書簡である(原文PDFファイル)。嘉悦大学のみならず高橋氏と講談社も、金森氏に責任ある回答をすることが望まれる。


嘉悦大学学長御中

嘉悦大学「高橋洋一教授の件についての調査結果について」への質問書

貴大学がそのホームページ上で、2016年11月2日付で公表された標記の文書に関し、下記の点につきまして詳細を明らかにし、また貴大学の見解を示されることを要望します。

私(金森俊樹)が、2016年10月27日付で幻冬舎ゴールドオンラインに掲載した「{お知らせ}高橋洋一著書籍『中国GDPの大嘘』について」(以下、{お知らせ})に端を発するインターネット上での動きを受け、貴大学が調査チームを立ち上げ、本件調査をされたことを評価するものですが、私としては、公表された調査結果に数多くの疑問があり、また不十分と思わざるを得ない点が認められますことから、本質問書を発出します。

速やかに下記の個々の項目毎のご回答を、貴大学ホームページ上で公開していただくことをお願いします。同時に、これら事項を踏まえ、調査の全面的なやり直しと再調査結果の公表、それに基づき、然るべき対応を採られることを強く求めるものです。

-記-

  1. 調査チームのメンバー、調査体制はどうなっているのか。特に、中立性、客観性を保つため、外部の有識者は入っていたのか。
  2. 調査チームは、以下の点を含め、具体的にいかなる作業を行ったのか。
    1. 調査結果にある「経過報告書等」の「等」は、具体的には何か。
    2. 調査チームは、高橋洋一氏本人に対する事情聴取を行ったのか。また、その際、同氏がいかなる説明、弁明をしたのか。
    3. 調査チームは自ら、当該書籍と私の連載記事を照合し、チェックする作業を行ったのか。また、その結果についての見解如何。
  3. 調査結果に添付されている2016年10月31日付、講談社の高橋氏あて経過報告(以下、「報告」)に「粗原稿を確認していただいた際、、、」とある。報告は明示を避けているが、ここで言う「粗原稿」とは、これまでの講談社の私に対する説明では、「(著者ではなく)データマンが私(金森)の連載記事を見て全て用意した」ものである。また、報告はこの段階で、高橋氏から出所を明記するよう指示を受けていたとしているが、ゲラの最終チェックはどうなっていたのか不明である。問題部分は複数個所で相当量に及び、しかも全て当該書籍のタイトルに直結する最重要部分を構成しているにも関わらず、報告で「金森氏の記事のみ、引用を怠った」となっているのもきわめて不可解である。これらの点は、著者の当該書籍との関わりにおける、法的、道義的、あるいは倫理的責任を判断する上で最も重要であり、調査チームとして事実関係の詳細を調査し、それに対する大学の見解を示すべきである。
  4. 調査結果に「なお、著作権の指摘については、、、報告を受けております。」とあるが、この報告を大学としてはどう認識されているのか。報告は「著作権の侵害」「盗用」といった文言を避けているが、私としては、事実上、それを認めたものと考える。また報告は講談社の責任のみを強調しているが、著者として名前を出した者自身の法的、道義的、あるいは倫理的責任はそれ以上に重い、あるいは少なくとも責任は免れ得ないことは当然と考える。これらの点についての大学としての認識を明らかにすべきである。仮に、そうした問題は法律専門家が判断すべきことと言われるのであれば、外部の法律専門家の意見を聴取し、それも踏まえて、大学としての見解を明らかにしなければ、調査として不十分である。
  5. 4に関連し、そもそも報告は高橋氏に対するものであって、大学、あるいは調査チームに対するものでない点、きわめて不可解である。調査チームが本件調査を当事者である高橋氏に「丸投げ」し、高橋氏が講談社に「丸投げ」、講談社から高橋氏に提出された報告をそのまま貼り付けて調査終了という印象は免れ得ない。そうとすれば、調査の手法、客観性、中立性の面で、ゆゆしき問題であると考える。
  6. 調査結果は「本学においての研究不正等の問題は無かった」としているが、その具体的根拠は何か。「研究不正」は具体的にはいかなる行為を指すのか、その定義は何か。また、「研究不正等」の「等」は具体的には何を指すのか。自ら書かず、またデータも集めず、自分が書いたように装うことは「研究不正等」ではないのか。仮に、「本学においての」との記述が、かかる書籍を出すという行為は学外の行為であって、大学として関知しないという趣旨であるとすれば、当該書籍の内容から考えて、そうした判断は著しく妥当性を欠くものと考える。
  7. 万が一、調査結果が「本学においての研究不正等の問題は無かった」との結論であったとしても、それをもって、大学は関係なしということにはならないと考える。一般的に、社会人として、所属する組織の外であっても、法律的、道義的、あるいは倫理的な面で不適切な行為を行った場合に、当該人物の所属する組織が、特にそれが大学のような公共的使命を有する組織であればなおさら、何らかの対応を採ることは社会的常識ではないか。

 

2016年11月10日
金森俊樹