「仕事」への処遇と「費用」としての人材

2016年11月22日 11:30

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企業の人事制度において、報酬は事前に定めるものだから、報酬のなかには、貢献への期待という要素が含まれる。報酬と実績とが一致するまでには、時間を要する。その期間は、報酬が実績を上回っているから、企業からすれば、その差の累積額は、先払いとしての債権であり、雇われている人材からすれば、債務である。債務は、将来の貢献によって弁済してもらわないと困る。

故に、実際、大学新卒で入社した当初は、昇給速度が貢献の成長速度を上回っているのだが、その後、成長が加速してきて、報酬と貢献が均衡した後では、今度は、貢献の成長速度よりも昇給を遅らせるように設計されていて、貢献を下回る報酬によって、それに先行する先払い報酬を回収するように工夫されている。

こうして、企業の立場から、先払いを回収できた人は、そこまでの勤続期間を通じて、期待と実績の累積値が一致している人のことだから、現職務を継続する限り、将来においても、報酬通りの実績を高い蓋然性で期待できる人材である。

この期待通りの実績、報酬通りの貢献ということは、単純作業においても、難易度が高くて経験を要する専門的職務においても、職務の内容とは関係なくなりたつ。いわゆる「仕事」に対する報酬という考え方が適合しているのだ。この場合、「仕事」は、単純作業であろうと、専門分野であろうと、客観的に定義できるほど、報酬と貢献の関係が明瞭になる。

さて、このような「仕事」については、外部の企業等への委託や委任、外部の企業からの派遣等によって代替できるものも少なくない。「仕事」としての客観的独立性が強くなればなるほど、外部化の余地が大きくなるのは当然だと思われる。この類型の人材については、その報酬を外部費用化できる可能性があるという意味で、費用人材と呼んでもいい。

費用人材は、企業の成長戦略にとって、必ずしも重要ではない。いかに希少な高度な専門性をもつ人でも、その能力が一般性をもつ限り、企業固有の付加価値創造にとっては、高級な費用人材として必要な要素にすぎず、組織における創造の原動力にはなり得ない。また、単純作業従事の人材は、いかに必要な人材ではあっても、企業の競争力の源泉たり得ないことは論を待たない。

こうした専門職型費用人材については、従来は、十分に評価されてこなかったが、人事制度改革の流れのなかで、新たに専門職としての資格制度を導入して、処遇のあり方が工夫されてきたことは、周知のとおりだし、また、単純作業型の費用人材については、派遣等の非正規雇用へ転換されたことは、改めて、いうまでもない。

 

森本紀行
HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
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