11月21日に日本証券業協会は10月の公社債投資家別売買高を発表した。公社債投資家別売買状況のデータは、全体の数字と短期債の数字となっているため、短期債を除く債券のデータについて全体から短期債を引いた。ここには国債入札で購入した分や日銀の国債買入分は入っていない。
10月の公社債投資家別差し引き売買高 注意、マイナスが買い越し、単位・億円 ()内は国債の投資家別売買高の超長期・長期・中期別
都市銀行 -12321(-3076、-3123、-5334)
地方銀行 -8334(-2678、-5038、275)
信託銀行 5864(607、-262、4757)
農林系金融機関 -2939(-2012、7、1)
第二地銀協加盟行 -1045(-856、-62、60)
信用金庫 -929(22、-117、15)
その他金融機関 -1581(-856、-1557、1578)
生保・損保 -4493(-2086、210、317)
投資信託 -1481(-472、-172、-396)
官公庁共済組合 -110(-49、46、47)
事業法人 -620(1、19、7)
その他法人 -555(-53、33、67)
外国人 -5717(1051、-5636、166)
個人 238(-1、32、4)
その他 17279(7202、5024、9155)
債券ディーラー -398(26、-12、-375)
9月20、21日の日銀の金融政策決定会合において、金融政策の総括的な検証を行ったことに加え、フレームワークの変更を行った。これは「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」と呼ばれ、その柱のひとつがイールドカーブコントロールとなった。
10月は投資家は国債売買そのものを手控え、売買高は大きく減少したと思われた。ところが国債の投資家別売買高(一覧)での全体合計の国債売買高でみてみると10月は181兆1267億円と9月の216兆335億円よりは減少したが、思ったほどの落ち込みとはなっていなかった。
それよりも興味深かったのは、外国人投資家と買越額の減少と都銀の買越額の増加か。都銀は9月の1139億円の買い越しから、10月は1兆2321億円の買い越しとなっていた。比較的中期債主体ではあるが万遍なく買い越していた。都銀の売買高は8月に1兆7326億円と、データがある2004年4月からでは過去最低水準となっていたが、9月は3兆6046億円、10月は5兆167億円と回復しつつある。
そして海外投資家であるが、最近の買越額は下記となっていた。
4月-36565(328、-9142、-27271)
5月-16775(1347、-6186、-10933)
6月-36565(328、-9142、-27271)
7月-16693(1860、-4453、-13200)
8月-16838(-1108、-5390、-9702)
9月-27674(-3320、-4283、-19310)
10月-5717(1051、-5636、166)
10月の海外投資家は中期ゾーンの買越額が前月までに比べて大きく減少させており、その結果全体の買越額も大きく減少させてきた。相場はそれほど大きく動かなかっただけに、この動きは興味深い。
11月に入ると8日の米大統領選挙の結果、トランプ氏が勝利したことをきっかけに米長期金利は大きく上昇し、ドル円も大きく上昇し、地合が一変した。日本の国債の利回りも上昇し、日銀は11月17日に中期ゾーンの利回り上昇抑制のため、初の国債の指し値オペをオファーした。11月のこの海外投資家を中心に売買状況は大きく変化してきた可能性もあるため、11月の数字も要注意となる。
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編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2016年11月22日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。