連合ってなぜ野党共闘に執拗に反対してるの?と思った時に読む話

2016年12月09日 06:00

今週のメルマガの前半部の紹介です。
連合が、自らが支援する民進党に対し、共産党との野党共闘路線に踏み切らないよう繰り返し警告しています。報道に対するリプなんかをみると、連合の頑なさに相当フラストレーション溜め込んでいる人も多いようですね。

連合が衆院選方針の素案 民進・共産の協力を強くけん制

なぜ連合は共産党との共闘を嫌うのでしょうか。彼らは本音では何を考え、そして民進党には何を期待しているのでしょうか。労働市場の先行きを考える上でもよい素材になると思われるので、今回は連合のメカニズムについてまとめてみましょう。

連合のホンネ

連合というのは主に大企業の正社員たちで組織される労働組合の寄合です。様々な業種が含まれますが、やはり組合員数が多く歴史も長い大手製造業の影響力は強いです。経団連の対になる存在だとみていいでしょう。ちなみに現会長の神津さんは新日鐵、先代の古賀さんは松下電器、先々代の高木さんは旭化成労組の出身です。

“労働組合”といっても高年収企業の正社員中心なので、そこらの野良ユニオンなんかとはまったく毛色が違います。筆者がよく言うところの「二階建て労働市場の二階で暮らす人たち」であり、文字通りの終身雇用が保証されるエリートです。

さて、筆者はなんだかんだ言いつつ連合の人と年に数回は仕事しますけど、だいたい以下のような本音を吐露してくれますね。

「消費税はとっとと上げてほしい」

意外と知らない人が多いんですが、国民年金の未納分は、厚生年金にツケがまわされています。他にもいろいろと社会保障関係で入用な分はサラリーマンの各種保険料から天引きされ続けています。最近も介護保険料の計算方法を見直して大企業の正社員の天引きが増えましたね。

【参考リンク】介護保険料の負担増 来年8月実施を検討 大企業社員ら

なぜか?消費税だと民意を問わないといけませんが、保険料だと税じゃないから政府内でちょろっと数字を書き換えるだけで済むからです。まあ実態としてはサラリーマン税なんですけど。で、この20年ほど消費税上げる上げないでグダグダやってる間中、サラリーマンの天引きはスルスル上がり続けているわけです。まさに自営業者ウハウハです。

【参考リンク】サラリーマンが目先のベアより社会保障の抜本改革を要求すべき理由

あ、ちなみに↑は2年前の記事なんで、現在はもっと天引き増えてますね。消費税引き上げは延期したのに(苦笑)

この事実に対し、連合の中の人たちは腸煮えくり返ってます。もちろん毎年一兆円増加し続ける社会保障の見直しするのがベストなんですが、それはあまりにもハードルが高いです。

「だったらせめて高齢者やニートやフリーターからもとれる消費税にしろよ。なんでボクらの保険料だけ一言の相談も無しにあがるんだよ。保険料っていうのは払った分見返りが増えるべきであって、取りやすいから取るってそれ税金だろ。だいたい消費税だったら工夫次第で節約も出来るけど天引きって工夫の余地ゼロじゃん」

と、まあだいたいこんな具合ですね。

「内部留保とか輸出戻し税にメスを入れろ?バカじゃないの(爆笑)」

階級闘争(笑)の大好きな左翼の皆さんの中には「大企業の内部留保を使えば賃上げも非正規の正社員化も可能だ」という意見が根強く存在します。あと、「大手の輸出企業は消費税から輸出戻し税として何百億円もこっそり還付されている」なんて言ってる人もいます(バカすぎてリンク張るの面倒なんで興味ある人は『内部留保課税』とか『輸出戻し税』でググってください、陰謀脳の方のゴミみたいなブログ記事がいっぱいヒットしますんで)。

まあ今更言うまでもないことですが、内部留保は現金じゃないし、そもそも株主のものだから手突っ込んじゃいけないし、(海外の客から消費税取れない)輸出企業が仕入れ段階で支払った消費税分を還付されるのは当然なんですけど、世の中には本気にしちゃってる痛い人が結構います。で、当然ながら連合の中の人はバカにしまくっています。

「内部留保といってもだいたい設備投資だしキャッシュがあってもそれは不況時にボクたちの雇用を守るための備えなんだから非正規に分配できるわけないだろ。消費税は大企業優遇?バカじゃないの(笑)」

「賃上げ賃上げって外野がちょっかい出すんじゃないよ」

安倍政権は政権成立以来、うるさいほど春闘での賃上げを強力にプッシュしつづけています。その姿は昔の社会党以上です。でも、連合からすれば、はっきりいって余計なお世話です。

賃金というのは上げれば済む話ではなく、組合員の雇用を守りつつ、その水準をこの先10年20年維持できるかどうか、労使で知恵を絞って水準を決めているわけです。会社の売上動向はどうか、日本経済の先行きはどうか、そして人口はどうなっていくか。

国がやるべきは規制緩和や構造改革でそうした日本経済の先行きとか人口を上向かせて企業の先行きを明るくすることであって、「あのさあ、なんか日銀にいろいろやらせてもぜんぜんデフレ脱却できないから、とりあえず賃上げしてくんない?」って絡んでくるのは本末転倒なわけですよ。なので、やはり連合の中の人は安倍ちゃんにかなり怒ってます。

「賃上げ賃上げって知りもしないで余計なこと言うんじゃないよ。ボクらが仕事してないみたいに見えるじゃん。ていうか構造改革まったくやってないのは政府の方だろ!下手に賃上げしすぎたら後でリストラされるのはボクたちなんだよ!なんでボクらが政府の尻拭いのためにリスクとらないといけないんだよ!」

「格差是正とか同一労働同一賃金はほどほどにしといてよ」

最近になってようやく過労死のような正社員内の問題もフォーカスされるようになりましたが、今まで雇用問題というと「正規と非正規雇用の格差」が中心でした。これに対する連合のスタンスはとてもシンプルなもので、一言でいえば「非正規雇用を正社員化させろ」です。

世界で最も解雇の難しい日本の正社員が安定していられるのは、比較的解雇の容易な派遣社員などの非正規雇用労働者がたまよけになってくれるからです。実際、リーマンショック時のような時に、非正規雇用をばっさばっさ雇い止めにすることで、彼ら大手の正社員は雇用が守られたわけです。逆に言えば、労組的には非正規雇用がなくなっちゃうと非常に困るわけです。自分たちが直接被弾するわけですから。

同一労働同一賃金もそうですね。総額でどれだけ人件費が用意できるかは事業内容で決まっているわけで、本気で同一労働同一賃金なんて実現されたら間違いなく貰いすぎの正社員の賃金は下がるわけです。今までのように正規と非正規の間に高い壁作って競争原理が働かない状態にしておく方がメリット大なわけです。

なるほど、確かに全員正社員にしちゃえば格差はなくなるし、同一労働同一賃金も実現するでしょう。なにより、「みんなで正社員」というフレーズはとても分かりやすく美しい響きです。「労働市場を流動化して、職能給から職務給にしたうえで……」とか言ってもわかる人は少ないですけど、全員正社員化なら田舎の爺ちゃん婆ちゃんにも拍手してもらえます。

そして、もっとも「全員正社員化作戦」が魅力的なのは、それが絶対に実現不可能な点です。覚えておいてください。響きが美しく、絶対に実現不可能な政策というのは、既得権を持つ側にとっては実に美味しい政策なんです。彼らの目的は解決ではなく現状維持ですから。

そうそう、旧・民主党は政権時代に派遣規制強化をやって派遣労働者を40万人減らし、失業者とパートを増やしたという輝かしい戦果を挙げています。まさに連合の本音に沿った作戦と言っていいでしょう。

【参考リンク】民主党は派遣を規制して何かいいことあったんだっけ?

「正社員と非正規雇用労働者は連帯して、みんなが正社員になれる理想の社会を目指そうよ。あ、実現できなかったらそれは本人の努力不足か、経営者が悪いだけだからボクらは関係ないからね」

さて、野党の中には、上記のような連合の本音とは相いれない政党が一つありますね。消費税引き上げには「輸出戻し税があるせいで大企業優遇だ」といって一貫して反対、膨張する社会保障のカットにも反対で、大企業の内部留保を使って正規雇用化を主張する政党が。そう、それは共産党です。

狂ってるのか、それとも確信犯的に日本経済をぶっ壊そうとしているのかわかりませんけど、少なくとも共産党の人たちは本気で上記の政策を実行しようと考えています。はっきり言って、連合とは水と油の関係です。

そんな怖い怖い共産党オジサンから「(選挙では)協力しよう!勝ったら俺と一緒に(連立政権に)なってくれ!」という熱いプロポーズをされ「で、でも……」と優柔不断な乙女ばりに迷っている民進党を見て、連合は相当フラストレーションがたまっているというのが実情でしょう。

あ、もう一つ連合の本音を。彼らは別に民進党のセンセイがたなんて落選して無職になろうが野垂れ死にしようがぜーんぜん何とも思ってないですね。自分たちの役に立つなら支援してやるけど、使いもんにならないんだったらいつでもケツ持ち辞めるわ、くらいのスタンスです。

以降、
日本の労使対立はフィクションである
弱者は“和製トランプ”に期待しろ

※詳細はメルマガにて(夜間飛行)


編集部より:この記事は城繁幸氏のブログ「Joe’s Labo」2016年12月8日の記事より転載させていただきました(アイキャッチ画像は毎日新聞より引用)。オリジナル原稿を読みたい方はJoe’s Laboをご覧ください。

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城 繁幸
人事コンサルティング「Joe's Labo」代表取締役

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