日本に必要なギャンブル依存症対策とは?

田中 紀子
希望フリー素材AC

依存症になっても回復の道はある(写真ACより:編集部)

マスコミさんからの取材で、最もよく聞かれるのは、
日本に必要なギャンブル依存症対策とはなんですか?
というご質問です。

現在、手つかずのギャンブル依存症対策ですから、それはもう沢山のことが必要ですが、
その中でもこれだけは外せない!
というものを今日は書きたいと思います。

1.まずなんと言っても病識にたいする「啓発活動」です。

こうしてカジノ法案が騒がれている今だからこそ、「ギャンブル依存症」が取り上げられていますが、
それでもまだまだ病気の正しい知識が、社会に共有できているとは言い難い状況で、相変わらず「楽して儲けようと思うな」とか、「自覚を持って、やりすぎるな!」などというアドバイスもはびこっています。

ギャンブル依存症という病気があること、病気になると、脳のストップ機能が壊れてしまい、適当な所でギャンブルを止めることができなくなりますが、リハビリプログラムを受けることによって、回復することはできます。

リハビリプログラムを受けられる最も手軽な場所は、自助グループと呼ばれるもので、

ギャンブル依存症からの回復したい人達の集まりは、
GA(ギャンブラーズ・アノニマス)

ギャンブラーの家族の集まりは
ギャマノン

と呼ばれ、全国に100か所以上の会場があります。

2.次に必要なものは「予防教育」。

ギャンブル依存症者の経験を聞いてみても、大体、ギャンブルに手を出すのは20歳前後。
早い人は、高校時代からギャンブルに親しみはじめます。

当然、若くしてギャンブルに親しんできた人の方が罹患率が高くなるので、できれば中学生位から、ギャンブル依存症予防教育を導入するべきと考えます。

また、この予防教育によって、親がギャンブル依存症だった場合に、子供たちが、自分の親の問題に気がつける・・・というメリットもあります。

昨今では、子供の奨学金を、親がパチンコで使いこんでしまうという事例もあったり、親の借金の尻拭いを、成人した子供達が、何十年もし続けてしまうというケースもありました。

こうした悲劇の連鎖を防ぐためにも、予防教育は不可欠と思います。

3.そして絶対に外せないのが「回復支援」。

一口に回復支援と言っても様々なものが御座いますが、まずは、家族や当事者を自助グループに繋ぐための相談窓口や、適切な診断が下せる医療機関を最低でも各県に1カ所は作ること、また依存症リハビリ施設への助成、さらには研究費の助成といったものが考えられると思います。

またそのためには、医療従事者、ケースワーカーさん、更には民間団体の相談員への教育プログラムを充実させなくてはなりません。

ギャンブル依存症は、こういった方々にも、まだ「どうすればよいのか?」という道筋が知られていません。

特にギャンブル依存症の場合「保健センター等や医療機関に相談できる」ということが、家族も本人もピンときません。何故なら、身体には健康被害が殆どないからです。ですから仲間達に聞いて案外多いのは「命の電話」のような、民間団体に電話した・・・という人達です。
実は、私も電話したことがあります(話し中で繋がりませんでしたが)。

こうした民間団体の方々にも、是非自助グループの存在や、診断できる医療機関などの情報を共有して頂ければ、
大変助かります。

4.この他に必要なことは、細かい実態調査ですね。

つまり、自殺者の中にギャンブルの問題で亡くなった方はどの位いるのか?
児童虐待、ネグレクトをしてしまう親の中には、どの位ギャンブルの問題がある人がいるのか?
また、罪を犯した人の中に、ギャンブルの問題がある人がどの位いるのか?
などなど、そういった細かい実態調査を行うと、
必要な対策が見えてくるはずです。

5.そして最後に、私が、どうしてもこれが欲しい!
と思っている、ギャンブル依存症対策があります。

それは・・・
「依存症は困難な病気だけれど、支援があれば回復できる!」という社会の雰囲気作りです。

今、ギャンブル依存症がこれだけ注目を浴びたことは、喜ばしいことである反面、ものすごくネガティブなイメージにならないか、少々心配です。

「回復はある!」「解決策はある!」といった、依存症に対する、もっとポジティブな雰囲気が社会に広がると良いと、心から願っています。

私は、今では依存症者であり、またその家族に生まれたことに、感謝しています。
人に支えられ、誰かと助け合い、そしてどん底を味わったものだけが分かる、希望が見えた時の喜びを知ることができたからです。

ですから、まだ苦しんでいる人達にも、回復という希望が見えるよう、社会の皆様にも雰囲気作りの応援をして欲しい!と切にお願いしたいと思います。

どうぞ宜しくお願い致します。