オバマ大統領の特攻隊員への敬意と世界の常識

2016年12月29日 23:00
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駐日米大使館サイトより(編集部)

真珠湾における安倍首相とオバマ大統領の演説は英語でも日本語でも全文を熟読しないとその価値は分からない。こうした演説はニュースのなかで最初から最後まできちんと放送して欲しい。陛下のお言葉のときのような扱いをすべきだ(全放送局が全文放送という意味)。

ところで、オバマ大統領の演説のなかで日本の特攻隊員について触れた部分があった(翻訳は米大使館サイトより)。 

「…これこそ戦艦ミズーリのウィリアム・キャラハン艦長から学んだ教訓です。キャラハン艦長は、ミズーリが攻撃を受けた後でさえ、米海軍兵士が縫った日本の国旗で日本人パイロット(の遺体)を包み、軍の儀礼にのっとり葬るよう命じたのです。また何年もたって真珠湾を再び訪れた(別の)日本人パイロットから学んだこともあります。彼は米海兵隊の老いたラッパ手と友人となり、毎月この記念碑の前で永別のラッパを吹き、バラの花を2輪、1輪は米国人戦没者に、もう1輪は日本人戦没者に供えるようお願いしたそうです…」

これだけを見ると特攻隊員のことでなく、真珠湾攻撃のときに死んだパイロットのことのように聞こえるが、WIKIの「戦艦ミズーリ」の項目を見ると以下のように書かれている。  

「・・・ 4月11日午後、ミズーリに対して特攻機(爆装零戦)1機が低空飛行で右舷甲板に突入した。突入機の右翼は第3副砲塔上にぶつかり、燃料に引火した。艦は表面に損傷を受けたが、速やかに鎮火した。この攻撃の跡は現在も船体に残っている。突入機の飛行士の遺体の一部が40mm機銃座から回収され、ウィリアム・キャラハン艦長はこの飛行士を、名誉を持って自らの任務を全うしたとして海軍式の水葬で弔うことを決定した。乗組員からは反対もあったが、艦長の命により翌日水葬が執り行われた。この飛行士の官姓名は長らく不詳であったが、ミズーリ記念館の調査の結果、鹿屋航空基地を出撃した第五建武隊の石野節雄二等兵曹の機であったと判明した(同時に突入した、同じく第五建武隊の石井兼吉二等兵曹の可能性もある-突入できなかった機は、対空砲火により撃墜された)。ミズーリで行われた葬儀はこの1回のみであった・・・」。

祖国のために戦った軍人に対する敬意をアメリカの大統領すら特攻隊員に対する畏敬をもって扱ったのである。いい加減、意に反して無謀な作戦の犠牲になった哀れむべき人扱いはやめたらどうか。

私は一般に玉砕は評価しない。なんら敵に対して打撃にもならないし恐怖もあたえないからだ。しかし特攻はそういうものでない。その効果についての議論があることも承知しているが結果的に効果がなかったからと言って犬死に扱いされてはたまったものでない。 

反戦平和の運動は結構なことだが、死んだ兵士を侮辱することで説得力を増そうというような手段を選ばないやり方は禁じ手であるべきだ。

同時にオバマ大統領は次のように続けている。平和と人権と豊かさが、空気のように存在するものだという幻想に生きる人にとっては苦い言葉だと思う。

この場所で、我々は、その最も揺るぎない価値観さえも戦争によって試されることに思いをはせます。戦時中、日系米国人は自由を奪われたにもかかわらず、米国史上最も多くの勲章を受章した部隊の中に、主に日系2世で構成される第442歩兵連隊とその下の第100歩兵大隊があったことにも思いを巡らせます。この第442歩兵連隊に、私の友人で誇り高きハワイ人、ダニエル・イノウエがいました。彼は私の人生と同じほどの長きにわたりハワイ州選出の上院議員を務め、私は彼と共に上院に在籍できることを誇りに思ったものです。イノウエ上院議員は名誉勲章と大統領自由勲章を授与されただけでなく、彼の世代の最も優れた政治家の一人でした。 

ここ真珠湾で起きた、第2次世界大戦における米国にとっての最初の戦いにより、この国は目を覚ましました。いろいろな意味で、米国はここで大人になったのです。米国の「最も偉大な世代」である私の祖父母の世代は、戦争を求めませんでしたが、ひるむこともありませんでした。彼らは皆さまざまな戦線で、そして工場で自らの役割を果しました。75年が過ぎ、真珠湾の誇り高き生存者たちの数は少なくなりましたが、ここで思い起こす勇気は永遠に米国民の心に刻まれています。真珠湾および第2次世界大戦で戦った退役軍人の皆さん、起立するか挙手をお願いします。米国民から感謝をささげたいと思います。

国のあり方は戦争で試されます。しかし、それが決まるのは平時においてです。この海で激戦が繰り広げられ、何万人ではなく何千万人もの命を奪った、人類史上最も恐ろしい出来事の一つを経験した後、米国と日本が選んだのは友情であり、平和でした。過去何十年にもわたり、日米同盟は両国を繁栄へと導いてきました。新たな世界大戦を防ぎ、10億人以上の人々を極度の貧困から救い出してきた国際秩序を支える一助となってきました。今日、日米同盟は共通の利益によって結び付いているだけでなく、共通の価値観に根ざしており、アジア太平洋地域の平和と安定の礎であるとともに、世界各地で進歩をもたらす力となっています。日米同盟はかつてないほど強固です。 

良い時も悪い時も、我々は互いのそばにいます。5年前、(東日本大震災で)津波が日本を襲い、福島で原子力発電所事故が発生したときのことを思い出してください。米軍兵士たちは、日本の友人たちを救うため現場に駆けつけました。日米は海賊行為の取り締まり、疾病との闘い、核兵器拡散の減速、戦争で荒廃した地域での平和維持活動など、アジア太平洋地域および世界の安全保障を強化するため、世界各地で連携しています。 

今年、日本は20を超える国々と共に、真珠湾近くで行なわれた世界最大の海上軍事演習に参加しました。この演習には、ハリー・ハリス海軍大将が司令官を務める米太平洋軍も参加しました。ハリス司令官は海軍士官であった米国人の父と日本人の母の間に横須賀で生まれましたが、彼のテネシー訛りからは全く想像できないでしょう。 

ハリス司令官、卓越した統率力に感謝します。

この意味において、本日我々がこの場にいること、すなわち日米は政府間のみならず国民同士がつながっており、そして今日、安倍首相がこの地を訪れていることは、国家間で、そして異なる国民の間で何が可能かを再認識させてくれます。戦争は終わらせることができます。最も激しく敵対した国同士も、最も強力な同盟国になることができます。平和がもたらす恩恵は常に、戦争による略奪に勝ります。これこそが、この神聖な港が語る揺るがぬ真実です。

この地こそ、憎しみが最も激しく燃え盛るときや、同朋意識の力が最も強いときでさえも、我々は内向きになる衝動に抗わなければならないことを思い出す場所です。我々は、自分たちと異なる人たちを悪者扱いする衝動に立ち向かわなければなりません。この場所で払われた犠牲、戦争がもたらした苦悩は、人類全てに共通の神聖な輝きを求めなければならないことを我々に気づかせてくれます。そして、日本人の友人が言う「お互いのための」存在となるよう努力するよう求めています。

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八幡 和郎
評論家、歴史作家、徳島文理大学大学院教授

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