3ヶ月60万円の学校に通って、一流の寿司職人になれるのか?

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SHINOBY`S BAR銀座を経営していて思うことは、飲食業とは奥深く、極めて興味深い業界だということです。仕事の評価は最終的にはお客様が決めるのですが、「素人の発想」によって、専門家が長期間かけて作ったものよりも高い評価が得られることがあるのです。

正月に読んだ「寿司修行3カ月でミシュランに載った理由」は、業界の常識がいとも簡単に覆されてしまう実例とその裏にある戦略が書かれた本です。

飲食人大学という学校で3ヶ月学んだだけのスタッフで営業を始めた大阪の「鮨 千陽」はオープン11か月でミシュランガイドにビブグルマンとして掲載される快挙を成し遂げました。そこには運もあったと思いますが、しっかりとした戦略があったのです(27ページから10の戦略が具体的に書かれています)。

鮨職人というと、有名店で10年修行し、最初は掃除や洗い物で下積みして、少しずつ仕事を盗むように覚えていくというイメージがあります。「飯炊き3年、握り8年」とも言われるようです。しかし、閉鎖的な世界で時間が止まったような料理をしている職人よりも、合理的で新しいものを柔軟に取り入れていく経営的センスをもった飲食業界の人材がこれからは必要になります。

確かに、3ヶ月勉強しただけで完璧な料理人にはなれないかもしれませんが、3ヶ月勉強、9ヶ月実戦した人の方が、1年間調理学校で勉強した人より、職人としてのレベルは上がっている可能性が高いのです。また、自分のやり方にこだわるのではなく、新しい料理や調理方法を研究し、改善していくことも大切です。

伝統的と思われている日本料理やフレンチのような世界でも、世の中のトレンドがあります。また食材の質が変わったり、気候の変化もあります。伝統に新しいエキスをどのように取り込んでいくかが、お店の評価につながるのです。

著者の宇都裕昭氏が紹介しているご自身の仕事術の中で共感したのは、「トライ&エラー」を見えないくらい速くすること、そして「みんなが当たり前と思う」ことをとりあえず疑うという姿勢です。

成功している人は失敗してもそれを即座に認め、回復をはかり、また新しいことに挑戦する。その繰り返しのスピードアップが成功につながると言う訳です。これは私がいつも考えている「意味のあるリスクをたくさん取る」ということと同じです。

また常識を疑うというのも、「日本の常識は世界の非常識」という私の考え方に重なります。常識というのは、時代や場所によって変わるものです。普遍的な真理ではなく、臨機応変に変わっていくのが当たり前なのです。素人の発想で失敗を繰り返し、そこから常識を超えた新しい価値が生まれる。固定観念に縛られていた分、飲食業はこれから日本で最も変化する可能性のある業界かもしれません。

飲食店関係者だけでなく、ビジネスのブレイクスルーを見つけたいと思っている人に一読をお薦めします。

<参考図書>
「寿司修行3カ月でミシュランに載った理由」 宇都裕昭

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編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2017年1月4日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。