新年明けましておめでとう御座います。
正月三ヶ日とも全国的に天候に恵まれ良かったですね。
さて、吉例に従い今年の年相を干支で見ましょう。
今年は、丁酉(ていゆう、ひのととり)です。
最初に、古代中国の自然哲学である五行説(ごぎょうせつ)で見ましょう。五行で見ると丁は陰の火の性を持ちます。他方、酉は陰の金の性質を有します。この二つの性質すなわち火性と金性の相互作用は火が金を溶かすことから、相剋(そうこく)と呼ばれるものです。つまり相敵対する関係があります。こうした相剋は上下で矛盾を孕(はら)んでおり、順調ではないことを意味します。
このことを念頭に置いていただき、丁酉それぞれの字義について詳説致しましょう。
先ず「丁」ですが、丁は前年の陽気すなわち活力がまだ続いていることを表わしており、中国古典の『説文』によると「夏時草木の繁茂を示す」とか「万物の丁壮なる意」と説かれています。丁壮は壮年の男子の意で働き盛りの年を指しています。従って丁は勢い、盛んな状態を言います。ただ「丁は亭(停)なり、亭(停)はなお止まるが如きなり」とも記されており、これまでの進歩、成長のテンポが弱まる年とされています。ですから、「丁」は盛んという意味と同時に、やや盛りを過ぎて末期に向かいつつあるということを表わしていると言えます。
さらに、『丁』は「一」と「亅」とから出来ており、「一」は従来勢力を表わし、下部の「亅」は在来の勢力に対抗する新しい動きを示しています。つまり、新旧両勢力の衝突が示唆されているのです。
次に酉の字義について見ましょう。酉は、酒がめ、あるいは酒壺を指し、中に溜まっている麹(こうじ)の発酵を表わす象形文字です。従って、熟する・老いる・成る・飽くといった意があります。中に醸(かも)されている新しい勢力が成熟の極みに達し、爆発寸前となっている様子です。
以上の「丁」「酉」それぞれの字義を統合しますと、丁酉の年には新しい動きや革命が起こりやすい年と言えましょう。これまでの在来勢力の発展がピークに達する一方で、それが弱ければ酉によって醸された新勢力が突き上げ、破壊することもありえます。正に丁酉は機が熟し、革命を予兆しているのです。
次に丁酉の年にどんな事があったか日本の史実から特徴的なものを拾ってみましょう。
・五四〇年前(一四七七年)、十一年も続いた応仁の乱が終結し、戦国時代の幕開け
・四二〇年前(一五九七年)、秀吉朝鮮再出兵(丁酉倭乱)
・三六〇年前(一六五七年)、明暦の江戸大火(江戸城本丸・二ノ丸焼失)
・二四〇年前(一七七七年)、三原山大噴火
・一八〇年前(一八三七年)、大塩平八郎の乱
・一二〇年前(一八九七年)、足尾銅山に対し鉱毒除防工事命令。足尾銅山に関する第一回鉱毒調査会が組織される。
・一二〇年前(一八九七年)、日本で貨幣法が成立し、金本位法が採用される。日本も独立国家としての体面が整った年。
六〇年前の一九五七年には丁酉を象徴するような出来事がたくさんありました。
・日本の南極越冬隊が南極大陸初上陸
・日本初の女性週刊誌「週刊女性」が創刊
・名古屋に日本初の地下街「名駅地下街サンロード」が開業
・ソニーの前身である東京通信工業が世界最小のトランジスタラジオを発売
・第五北川丸沈没事故。死者・行方不明一一三名
・コカ・コーラ、日本での販売開始
・有楽町にそごうが開店
・東京都の人口がロンドンを抜き世界一となる
・一九五四年から続いた神武景気が七月には急速に冷え込み、一転しなべ底不況となった
・諫早豪雨。死者・行方不明九九二名
・三原山噴火
・東海村で「原子の火」がともる
・日本初の国産ロケットの発射に成功
・大阪にダイエー第一号店が開店
・初の五千円紙幣、百円硬貨が発行
・長嶋選手の巨人軍入団決まる
・トヨタがアメリカへの自動車の輸出を開始
・日米共同声明で日米新時代を強調。共同声明中に日米安保委員会の設置が盛り込まれた。
・国連安保理事会非常任理事国に当選
・日ソ通商条約調印。
海外の丁酉の年(一九五七年)の史実も見てみましょう。
・イギリスが初の水爆実験を行う。
・マレーシアがイギリスから独立
・ソ連ウラルで大規模な原子力事故が発生
・ソ連が世界初の人工衛星スプートニク一号の打ち上げに成功
・イギリスでウィンズケール原子炉火災事故が起こる。
さて、こうして丁酉の年の五行、字義、史実を見てきますと、今年の年相が浮かび上がってきます。
第一に、火と金の相剋関係が二年連続しており、景気も相場も乱高下が続きそうです。前年に起きた英国のブレグジットやトランプの大統領選での勝利といった大波乱はじわじわと世界中に影響を及ぼすと考えられます。本年ヨーロッパで行われる三月のオランダの議会選挙、四・五月のフランスでの大統領選挙及び六月の国民議会選挙、九月のドイツ連邦議会選挙等々があり、いずれの国でも反EU勢力の躍進が続いており選挙の結果次第ではEU崩壊に繋がりかねません。中国でも五年に一度の中国共産党大会が開かれます。最高指導部のポストを巡る権力争いも激しさを増しています。トランプのアメリカファーストの主張もやがて他の国も引き込み、他国がどうなろうと自国の利益を優先という形になって行きましょう。米中の貿易・為替面を中心とした経済的緊張が軍事的緊張の高まりに移行しなければと思います。こうした政治的事象に経済が振り回されそうです。正に「申酉騒ぐ」でしょう。
第二に、六〇年前の丁酉の年の史実でも明らかなように科学技術が飛躍的に進歩します。原子力や人工衛星のように軍事的用途として研究されてきたものもありますが、多くは結果として平和利用を目指した科学的探究の成果として結実しました。
今年も恐らく多くの科学技術が進化して行きます。経済学の中にコンドラチェフ循環と呼ばれる技術革新を主因とする五十~六十年周期の好不況の経済循環があります。日本の場合は二〇一〇年頃に一サイクルの終わりを迎えたか終わりに近づいたと考えられます。従って現在はこの次のサイクルがスタートしてきています。このサイクルでの主要な技術は、AI(人工知能)、IoT(あらゆるモノがインターネットに繋がれること)、ビッグデータ、ロボティクス、ブロックチェーン等々です。
今年はこうした技術が様々な産業で実用化される最初の年になりましょう。我々の金融界でもフィンテックという言葉が広く使用され、各社が先陣争いをして、その技術の導入に尽力しています。こうした新しい技術の他にもガンの免疫療法やiPS細胞を使った治療なども大きく前進して行きそうです。
第三に、丁は陰の火性ですから、大きな戦争よりも火災やテロによる爆発、噴火・地震が頻発しそうです。また、九星気学では本年は一白水星であり、水害も気になります。
最後に本年の年相を踏まえ、我々SBIグループがどう対処すべきかを述べて置きます。
今年は一つの時代が終わり、次の新しい段階に入るという転換期です。我々はこの岐路で正しい選択をし、更なる進化を遂げなければなりません。その為に第一に、転換期は混乱の時代であり、困難な時代であるが、こういう時程、フィンテック革命の覇者になるというグループの共通した強い意思を堅持し、時代の潮流に乗ることが必要です。
第二に、これからの株・債券・為替・金利の乱高下を勝機と捉え、よりグローバルにそしてスマートに対処し、アービトラージを縦横無尽に駆使し収益化に努めなければなりません。
第三に、新たな事業の取り組みには、本年は慎重でなければなりません。一時の熱狂ではなく常に冷静に新たな動きを観察し、大局的・長期的な視野でグループ内外の英知を結集して戦略を立てて行かなければなりません。
以上宜しく御願い致します。
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