インターネットで「神」を探索する

2017年01月17日 11:30

オーストリアのローマ・カトリック教会の信者数は昨年516万人で前年比で0・99%減少した。同国の司教会議が10日、2016年の教会統計を公表した。教会脱会者数は昨年、前年比で微減に留まり、5万4886人だった。

教会脱会者数の動向をみると、2014年5万5003人、13年5万4869人、12年5万2336人、11年5万9023人とあまり変動はないが、2010年には8万5960人と歴史的な記録を作った。同年は教会関連施設内で聖職者による未成年者への性的虐待事件が発覚した年だった。

ここまで書いてきて、宗教改革者マルチン・ルターのことを思いだした。ルター(1483~1546年)が当時のローマ・カトリック教会の腐敗を糾弾し、「イエスのみ言葉だけに従う」といった信仰義認を提示し、贖宥行為の濫用を批判した「95箇条の論題」を発表して今年10月で500年目を迎える。ローマ法王を中心とした教会体制から抜け出し、各自が聖書を中心とする信仰を求めたルターは自ら聖書を独語訳した。

話は急展開し、人類始祖アダムとエバ時代に戻る。彼らは「取って食べるな」という神の戒めを守っていた時は神と直接一問一答できた。神と彼らの間には教会も聖書もいらなかった。

そのアダムとエバが神の戒めを破ってから、神と一問一答できなくなった。人類は家庭から氏族、民族、国家と繁殖・拡大していった。その間、神と民衆を取りなす士師や国王、祭司長らが現れ、神のお告げを民衆に伝えた。神は人間が傲慢となって神のようになるのを恐れ、彼らの言語を混乱させた。そして、ユダヤ民族に約束したイエス・キリストの降臨数百年前には多数の予言者が神の使命を受けて、民衆に神の御心を伝え、「天国は近い」と語りかけた。

「私は神に、神は私と共にある」と叫ぶイエスは、ユダヤ人社会から疎外され、迫害を受け、最終的には十字架で処刑された。神との意志疎通の道が再び途絶えた。イエスが受け入れられていたならば、その福音はローマに伝わり、世界に拡大する予定だった。

イエスの十字架後、ローマ法王はペテロの後継者となって天国のカギを管理した。神との意思疎通はローマ法王を通じて、そしてイエスの体といわれる教会が運営された。
しかし、教会指導部が腐敗堕落する状況になって、ルターなど多くの宗教改革者が登場し、神との対話ルートは教会経由ではなく、聖書にあると宣言し、プロテスタント運動が始まった。

時代は21世紀に戻る。われわれは今、インターネット時代に生きている。神との対話を願うものは教会に足を運び、神父や司教の説教を聞かなくても、インターネット礼拝に参加し、必要ならば聖書の講義を受けることができる。

まとめる。神との対話の歴史は、「アダム・エバの直接対話時代」から「部族・氏族代表、祭司長、預言者経由時代」を通過し、「イエス時代」を迎えた。その後、「教会、ローマ法王経由」から各自が「聖書を通じて神と対話する時代」に入った。そして現代、「インターネット時代」になり、各自が教会に出向かうことなく神を探すことができる時代圏に入ってきたわけだ。神を探索できる時代だ。

ただし、グーグルで「神」をサーチすると、英語で16億以上、独語で1億3700万件以上の結果が出てくるといった具合で、インターネットの世界で自身が求める「神」を探し出すことは容易ではないことが想像できる。

スウェ―デンの国民作家ヨハン・アウグスト・ストリンドベリ(1849~1912年)は「子供の時から神を探してきたが、出会ったのは悪魔だった」と書いているが、インターネットで「神」を探索する場合、「神」より「悪魔」に出会う機会が実際は多いのかもしれない。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2017年1月17日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

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