ダボス会議:ファーリハ・エネルギー大臣の発言

2017年01月19日 06:00

昨1月17日、FT記事を紹介する弊ブログ「サウジ石油相:米シェールの急激な増産を疑問視」を書いた時には未だ詳細が報じられていなかったダボス会議の「未来のエネルギー」セッション、今朝HPを見たら約1時間のセッションがすべて動画でアップされていた。ワクワクしながら早速見入ってしまった。

円形の、まるで水族館のなかのような会場の真ん中に数十センチ高い演壇があり、聴衆はそのまわりを取り囲んでいる。その数、数十人か。

壇上には数人のパネリスト
ウオールストリート紙の国際エネルギー担当編集者エレナ・チェミーがモデレーターを努め、エネルギーに関する現状認識から短期的な展開、さらには中長期的課題について議論をしよう、という設えだ。

モデレーターと共に壇上にいるのは、IEA事務局長のファティ・ビロル、投資会社の創設者兼経営者ケネス・ハーシュ、サウジアラムコの社長アミン・ナッサー(と紹介していた)、伊国営電力会社ENEL社長フランシスコ・サレースと、中国の電力会社社長チャオ・バオ・ピンの5人だった。

中国の電力会社社長だけがイヤフォンをして同時通訳を介しての参加であり、英語による皆の議論には加わらず、中国のエネルギー事情の現状と基本政策、さらには将来の方針について「報告する」という様子で、(他のセッションに参加している人が居るとして)我が日本からの参加者もこうなのかな、と思わず俯いてしまった。

ダボス会議のHPによると、このセッションは 「Strategic Update “The Future of Energy”」となっており、サブタイトルとして次の文言が記載されている。
”What drives are transforming energy and how should leaders prepare for this new context? Dimensions to be addressed”

内容をすべて紹介するのは筆者の能力をはるかに超えているので、昨日テーマとしたファーリハ・エネルギー大臣の発言に関連した箇所だけを紹介しておこう。

・ファーリハ大臣の「米シェールの増産云々」の発言は、これまでの2年間、価格が下落し産油国、石油会社に痛みをもたらした2014年11月の「減産はしない」というOPEC決議に話題が及んだことを機に、モデレーターが聴衆として参加していた大臣にコメントを求めたことからなされた一連の発言の一部だ(ちなみに、モデレーターはカリド・アル・ファラと呼びかけていた)。

・ファーリハ大臣は、2014年のOPEC総会に自分はオブザーバーとして参加していたが、あれ以外に合理的な判断はなかっただろう、とコメントを始めた。

・当時は3桁(100ドル)時代で、毎年コストの高いシェールの生産が100万BDずつ増えていた。もし(3桁の)価格を維持するためにOPECが減産をしたら、その後毎年減産を繰り返さざるを得なくなり、サウジの2017年の生産量は今より2~3百万BD少ないものになっていただろう。どう考えても持続可能なものではない。OPECとしては、たとえば1997~98年のアジア経済危機(タイバーツ暴落から始まった)、あるいは2007年から8年にかけて経済危機(リーマンショックの時)には短期的対応として減産をしたことがある。だがそれは市場をバランスさせるための構造的な迂回措置(structural deviation)だった。

・将来、石油需要の伸びは過去と比べるとなだらかになると思われるが、増え続ける需要を賄うため、技術革新と起業家精神などにより過去よりは多くの生産をすることができるようになっている。(OPECが減産をすることにより)100ドル時代が続いていたら、低コストの生産者がすべて市場からいなくなってしまっていただろう。北米における価格が上向き、50ドルが実現しているが、サウジのエネルギー大臣として謝辞を申し上げる。だが例えば10年間という長期的観点からは、すべての供給ソースが貢献すること必要だ。(そのために価格回復が)持続することを希望している。私の見るところ、痛めつけられ、離職者を多く出したサービス産業からの値上げ要求により今後コストは上がるだろう。一方で、生産性の高いところに集中して生産しているのが事実だ。だから短期間に200万、300万、400万BDの増産をすることはできないだろう。これからはより難しい、より生産性の低いところから生産をしなければならなくなる。インフレもあるだろう。したがってもっと高い価格が必要になる。

・価格は上がるだろうが、いくらなら需給がバランスするのか。それは市場の力が決めることだ。自分が大臣になるずうっと前から、OPECはこのことを知っている。OPECの役割は、価格変動幅を極力小さくすることだ。100ドル、60ドル、70ドル、OPECメンバーの中には希望を持つ人もいるが、価格がいくらになるか、我々が決めることはけっしてできない。

読者の皆様には、雰囲気を知るためだけでも、ぜひダボス会議のHPからこの動画を探してご覧下さい。興味深いですよ。


編集部より:この記事は「岩瀬昇のエネルギーブログ」2017年1月17日のブログより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はこちらをご覧ください。

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岩瀬 昇
エネルギーアナリスト

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