統計資料に騙されない方法!

2017年01月19日 06:00

統計 (写真AC)

世の中には、もっともらしいデータを示されて私たちをまんまと騙そうとしている輩がたくさんいます。

金銭騙取という犯罪的動機もあれば、単に知人を驚かせてやろうという愉快的動機もあります。しかしそれらのトリックを見抜く力を持っていないと、詐欺的動機を持った相手に騙されて大損害を負ってしまう怖れがあります。

そこで、典型的なトリックとその見破り方を以下でご紹介します。

最も幼稚なトリックは、棒グラフや折れ線グラフの縦軸のメモリをいじる方法です。例えば、失業率の年間の推移を表す折れ線グラフを作成する際、1メモリを1%にするとかなり平坦はグラフになります。しかし、1メモリを0.01%にするとものすごく変化しているような印象を受けるはずです。

失業率が5%から3%に下がった場合、前者であれば2メモリしか下がらないのに対し、後者であれば200メモリも下がってしまうのですから。

このトリックに騙されないためには、「変化が大きいな〜!」という印象を受けたら、最初に縦軸のメモリ確認する習慣を見に付けておくことです。

新聞や雑誌のグラフを見た時に「!」と来たら横軸のメモリを確認しましょう。
ほとんどのケースで、大げさに感じるよう細工されているのがわかりますから。

次に、現在も多くの人たちがひっかかっているトリックを検討してみましょう。

縦軸を親の年収に、横軸を子供の成績にして、右肩上がりの分布図が出てきたとしましょう(サンプル数は十分多い)。
これを見ると、ほとんどの人が「子供の好成績の原因は親の高年収だ」という結論を信用してしまいます。
では、同じくらいの数の男性のサンプルを集めて、縦軸を「手の大きさ」横軸を「足の大きさ」にして、右肩上がりの分布図が出てきたとしたら、あなたは「手の大きさの原因は足の大きさだ」と考えるでしょうか?

表現を変えれば「足が大きいことが手が大きくなる原因だ」という結論を、あなたは支持しますか?
ほとんどの人が「何をバカバカしい」と考えでしょう。「図体がでかくなればなるほど手足も大きくなるだけだ。足の大きさが手の大きさの原因になっている訳ではない」と考えるはずです。

このように「手の大きさ」と「足の大きさ」の間に「正の相関関係」(手の大きい人はたいてい足も大きいし、手の小さい人はたいてい足も小さい)があると表現します。

それに対し、2つの事柄の間に「原因と結果」の関係があることを「因果関係」と言います。子供が人間であれば、その親は間違いなく人間でしょう。

「子供が人間」という結果は、「親が人間」だという原因がなければ成立しません。「AがなければBがない」というのを条件的因果関係と言います。

この例では、「親が人間」でなければ「子が人間」ということはありえない、という条件的因果関係が絶対的に成立します。

では、「子供が長身だ」ということと「両親が長身だ」ということの間には因果関係が存在するでしょうか?
確実とは言えないまでも、遺伝学的にある程度の因果関係は存在するのでしょうね(隔世遺伝もあるので先の例ほど確実ではありませんが…)。

そこで、当初の「親の年収」と「子供の成績」との間には因果関係はあるのでしょうか?
「子供の好成績の原因は親の高年収だ」と結論付けることは可能でしょうか?これは成立しませんよね。
いくら親が高年収であっても、子供に学習の意欲や機会を与えなければ「成績良好」にはなり得ません。親が高年収でも自動的に「子供の好成績」とは結びつかないのです。

ですから、「親の年収」と「子供の成績」との間には、せいぜい「正の相関関係」があるに過ぎないのです。

「親の高年収」という要因を「教育機関の充実度」という要因に取り替えてもおそらく「子供の好成績」と正の相関関係ができるはずです。

このように、「子供の好成績」という結果は「親の高年収」以外の要因からも導くことが出来るので、「親の年収」と「子供の成績」が「原因と結果の関係にない」ことは明らかです。

「子供の成績」という結果には、「親の年収」「教育機関が充実している」「親が教育熱心」「家庭環境が良好」「親の学歴」…等々、様々な要因が複合的に絡み合っており、決定的な「原因」というのはおそらく存在しません。

トリックを仕掛けようとする輩は、自分にとって都合のいい要因だけを持ち出して「子供の成績」との相関関係を説明します。

「ほら、このように5歳までに◯◯をした子供は、有名大学に入る確率が高くなるでしょう。だから、リミットは5歳です。今から始めないと間に合いません」という殺し文句に、私たちはコロリと騙されてしまうのです。〇〇とは別の他の要因がたくさんあることに思い至らず…。

このようなトリックを見破るのは案外難しいのです。かくいう私でさえ、(つまらない分野では)しょっちゅうこういうトリックに引っかかっています(汗)

もし大きな決断をしなければならない場合は、「この原因がなければ、この結果は発生しないのか?」と自問自答すれば、騙される可能性は格段に低くなるでしょう。

先の例で言えば、「5歳までに〇〇をやらなければ、有名大学にはいれないのか?」と自問自答すれば、冷静な判斷ができますよね。

もっとも、トリックを仕掛けようとしている人物は、手抜かりなく「確率が高くなる」という曖昧な表現を用いています。あなたが「じゃあ、5歳までに◯◯をやらないと一流大学に入れないの?」と訊ねれば「そんな訳ではありません。確率が断然違ってくるんです」と言い返されるでしょう。「どのくらいの確率ですか?」と突っ込めば、「当社が調査した☓☓名の事例だと80%です」と言って(当方では検証できない)都合のいい結果だけを告げられることでしょう。

これは、「若返り」や「ダイエット」、はたまた「ガンになりにくい」とか「認知症になりにくい」という結論を導くために、極めて頻繁に用いられているトリックです。もちろん、多くの人々を絶望的な気分にさせてしまう「(生まれた時から決まっているという)生来的決定論」の根拠としても用いられています。

「怖い」「間に合わない」「焦らなければ」という危機感を感じたら、ぜひ一度「因果関係の有無」を冷静に考えてみて下さい。他の要因を思い浮かべることができれば、あなたはトリックにひっかからなくても済むでしょう。

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荘司 雅彦
幻冬舎
2016-05-28

編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2017年1月18日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。

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