東京タクシー初乗り410円は成功か?失敗か?

内藤 忍

東京のタクシー初乗り運賃が2017年1月30日から730円から410円に引き下げられました。タクシーの運転手さんに聞くと、滑り出しは収入にはプラスもマイナスも無いようです(写真はYahoo!ニュースから)。

新運賃は走行距離が約4kmだと今までと同じ1450円で、それより短距離では今までより安くなり、それより長距離になると今までより高くなる運賃体系のようです。初乗り運賃を安くして乗車のハードルを下げ、短距離の割安感から「チョイ乗り」と呼ばれるお客様を開拓する。そして長距離は値上げによって収益を高めるという目論見のようですが、思うようにはお客様は動かないようです。

これまでもタクシーを利用してきた人というのは、価格弾力性の低い人(値段に関わらず利用したい時に利用する人)が多いと思います。安いから乗る、高いから乗らないといったバーゲンや割引を狙って購入するような客層ではありません。時間を節約したいから乗る、ハンディキャップがあって公共交通手段では移動できないから乗るといった人たちです。短い距離の人もいれば、長距離の人もいます。このような人たちは運賃改定しても行動にあまり変化はありませんから、全体ではタクシー会社の収入にも影響はありません。

一方、短距離を値下げしたことで新しく利用してくれると期待している新規顧客ですが、こちらは認知度がまだ広がっていません。値下げになったというニュースは知っていても、ほとんどのタクシーが下がっていることや、どこまでの距離だったら今までより得になるのかといった情報はあまり理解されていません。

せっかく安くなるのに、タクシーは高い、勿体ないという先入観がある限り、価格体系を少しいじったくらいでは、早速乗ってみようという需要喚起にはならないのです。

始まったばかりですから、まだ結論を出すのは早計ですが、短距離の値下げのメリットを感じる人たちにアピールする認知度向上の施策を打たないと、このままニュースとしての新鮮味が消えて行って、運賃改定の効果が見えなくなってしまいます。

私自身タクシーにはあまり頻繁には乗りませんが、乗る時には短距離ではなく、旅行の時に羽田空港に行くような長距離での利用が多くなります。私のような利用者にとっては、今回の運賃改定は単なる値上げになってしまうだけで、メリットはありません。

常連の利用者の中には今までより値上りしたということで、運転手に文句を言う人もいるようです。今回の運賃改定は初乗りは値下げですが、中長距離は値上げになっている。そのこともあまり認知されていないようです。

東京タクシー初乗り410円はこのまま認知度が上がらないと、タクシー会社の思惑が外れたまま終わってしまうような気がします。

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※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所をはじめとする関連会社は、国内外の不動産、実物資産のご紹介、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。また投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2017年2月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。