「大きな会社にはいれば安定」という考えが、不安定なのだ

秋元 祥治

若者の安定志向・大企業志向が続いているという報道をよく目にします。

シンクタンクや経済団体が行っている様々な調査でも、例えば新入社員の半数以上が、キャリアアップよりも定年までの継続した勤務を希望しているとのこと。仕事選びで重視していることも、職場での社員との関係性や居心地、無理なく働ける環境などへの注目が高く「居心地のよい安定した環境で、無理なく働きたい」と考える傾向にあるとの指摘も。
だからこそ、安定志向=大企業を目指す、という流れは確かに存在しているようです。

では、そもそも大企業に入ることが安定なのでしょうか?

僕が大学入学をした頃、サークルでOB・OGの進路名簿をみて、大企業がずらっと並んでいたことを覚えています。素直にすごいな、と思っていたのですが一方で、四大証券会社の一つ「山一證券」や、北海道で一番の銀行「北海道拓殖銀行」などが就職先となっていた先輩を見つけ、びっくりしました。そうです、いずれも倒産したのでした。大きな会社は潰れることなどないとぼんやり思っていた18歳の僕が、ハッとした時でした。

安定の代名詞とされてきた自治体も、夕張市が財政破綻したことは記憶にまだ新しいでしょう。
つい最近でも、電機大手のシャープが外国企業に買収されるニュースを見ていると、40—50代の社員の方々が口々に雇用が継続されるか不安だと語っていました。実際に、今後大きなリストラがある、とも言われています。大企業に就職して勤めてきて、よもや突然職を失うことになるとは思いもしなかったのでしょう。
大企業でも中小企業でも同じように、永遠に会社が存続し安定的に給与をもらいながら働けるかなど、わかりません。

「大きな会社にはいれば安定」という考えが、不安定なのだ。 特定のものに依存する、という事ほど不安定なことはないじゃないか

自分自身のことを、小さな会社に置き換えて考えてみるとわかるはずです。
会社の経営という視点で考えてみるととても、わかりやすいのです。

特定の取引先に依存する企業は(つまり特定の下請けに依存する、ということですね)、その売上構成そのものがリスクとなります。売上の大半を依存している親会社に、ある日、突然契約を打ち切りと言われたらば、経営破たんの危機が突然やってくる、となるわけですよね。
いきなりの打ち切り通告はないとしても、例えば価格交渉。もっと値引きしてくれと親会社からリクエストされるとしましょう。そして「それに応じてくれなければ他に代わりがいる」とでも言われようものならば、飲むより無いわけですよ。つまり、依存の構造は足下すら見られるわけです。

なにかに依存することそのものが不安定なのです。

たしかに大口の取引先の存在は、やりとりする先も少なくて楽。一方で、特定の企業でなく複数の会社に取引があるとすれば、その管理は面倒で手間かもしれません。しかし、経営的な安定性はずっとますわけですよね。

では同じように、個人のキャリアについて考えてみればお分かりいただけるのではないでしょうか。
会社組織への依存は、キャリアの不安定ではないでしょうか。にもかかわらず、安定を求めて大企業に入社しようとするのか。たった一つに依存することが、圧倒的な不安定ではないかと思うのです。これは、大企業が中小に比べて破綻確率が高い低い、という問題ではなく。
安定を求めて、組織にぶら下がる人は、組織から必要とされなくなった時、あるいはある日突然会社がなくなった時に、途方に暮れるわけです。
とはいえ、もちろんみんなが起業するのが良いわけではないし、複数の収入口を持つのもまた、多くの人たちにとって現実的でも無いと思います。

自ら稼ぐ力を持つことこそが、安定だ

と考えて、その力をはぐくむために、日々の仕事を過ごせているだろうか。
そう、自問自答するだけでも、大きく変わると思います。

あるいは、そういう力を身につけるのに適したところか、という観点で仕事選びをすることも、良いかもしれません。
会社経営で考えれば、依存が不安定だということはすぐわかるはず。個人のキャリアになるととたんに誰も気がつかないこの点。

ぜひ、知っておきたいことなのです。

秋元祥治
NPO法人G-net代表理事・滋賀大学客員准教授・OKa-Bizセンター長

ではでは。

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編集部より:この記事は、秋元祥治氏のブログ 2017年2月11日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「秋元祥治(岐阜・G-net・OKa-Biz)の活動日記」をご覧ください。