「働き方革命」著者の駒崎です。ちょっとぶったまげました。
正念場を迎える、働き方改革
総理臨席の働き方改革実現会議をウォッチしているのですが、”’今まさに日本の歴史上初めて、「残業の上限規制」を導入するか、どうするか、という正念場に来ている”’ようなんですね。
電通の新卒1年目の高橋まつりさんが過労自殺されたことを受けて、本当にもうこんな犠牲は出しちゃいけない、と多くの国民が思ったわけです。だから、法的に「残業させ放題」「残業時間青天井」の日本の法律を変えて、ヨーロッパのように、残業に上限はめていこうよ、という政治的な流れになりました。
(参考:電通に憤ったみんな、その怒りをこの署名にぶつけてくれ!!- Y!ニュース )
そして、「残業は年間720時間(月平均60時間)」というところまでは、合意が生まれてきたのでした。これはとても評価できることです。
「繁忙期は残業100時間」の抜け穴
しかし、本日の新聞には、こんな記事が。
産業界の「年に720時間は良いけど、忙しい時期は60時間じゃなくて、100時間くらいまで、社員に残業させたいよ」という要望に屈し、労働組合が「今の青天井よりはマシだから、仕方ないか・・・」と心折れかけているのです。
過労死ラインは80時間
みなさん、労災認定の基準となる、過労死ラインご存知ですか?
残業月80時間です。
(http://www.huffingtonpost.jp/2016/05/17/karoshi-research_n_10003896.html)
それを大きく超える、「100時間残業OK」のお墨付きが与えられることになるのです。
抜け穴じゃん!
産業界は「いやいや、繁忙期だけだから」と言うでしょう。安心してね、と。
いやいや、でも例えば、年間で720時間でも、「うちの会社は夏が繁忙で6月~8月の3ヶ月は100時間残業です。あとは早めに帰らせますよ」というのが可能になっちゃうわけですね。
そしたら、その3ヶ月の間に過労死しますよね。普通に。
せめて、繁忙期は年間2ヶ月に限るとか、100時間ではなく75時間にするとかしないと。
今、意思表明しないと
労働者の皆さん、ここは声をあげた方が良いタイミングです。
ただ、繁忙期100時間残業に反対して、せっかくの残業上限規制そのものが先送りになっちゃうのも辛いわけなので、ちょっと複雑ですが「残業上限規制にYES、100時間にNO」という声をあげるべきなんですね。
例えばSNSで、
#100時間残業OKは働き方改革じゃない
#残業規制YES、抜け穴にNO
などとハッシュタグを入れて、呟くのも良いでしょう。
いずれにせよ、アイドルの出家の話題の方が、100倍メディアで取り上げられているようですが、我々の生活への影響で言うと、出家の100万倍大きなインパクトのあることなので、皆さん、今のうち気づいて怒っておきましょう。
我々の愛する人たちが、「働く」に殺される前に。
編集部より:この記事は、認定NPO法人フローレンス代表理事、駒崎弘樹氏のブログ 2017年2月23日の投稿を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は駒崎弘樹BLOGをご覧ください。