根室原発特区構想 --- 田代 克

2017年03月09日 11:30

画像出典:写真AC

福島第一原発事故後5年以上たつが、世論調査でも原子力再稼働反対が50%を超え、立地地域では原発反対を掲げた首長が当選し、裁判所でも稼働差し止め命令が出るなど、原子力の環境は非常に厳しくなっている。

一方、地球温暖化問題対策もパリ協定によって厳しさを増しており、日本は石炭火力発電所の増設などが批判され「化石賞」の不名誉にも輝いている。原子力発電所が稼働しないため、石炭等化石燃料の発電を増やさざるを得ず、温暖化対策は進まない。また、化石燃料輸入増大によって出費が増えるほか、エネルギー安全保障のリスクも増大している。原子力発電は温暖化対策として最強であり、あらかじめ燃料を確保しておくことでエネルギー安全保障にもなる。原子力発電を行うメリットは大きい。

現在、日本国内では原発廃炉派と既存原発再稼働派が対立しており、出口は見えない。両者を並び立たせようという提案が根室原発特区構想である。

根室原発特区構想とは

根室原発特区構想とは、全国の原発をすべて根室近辺に移す構想である。福島原発事故により、最悪の場合半径250km圏の避難があり得ることが明らかになった。逆に言えば半径250km以遠の地域は事故が起こっても避難リスクは無くなる。現状の原発配置では原発から半径250km圏がほぼ日本全国をカバーしているが、これを根室に移転すれば250km圏の人口は100万人。

また、日本付近は偏西風の影響で事故時の放射能は東に飛ぶ。よって日本で最も東に立地することが汚染リスクを少なくすることになる。これもまた根室付近ということになる。1億2千6百万人にとって原発のリスクはほぼ無くなり、反原発は説得力を失い、裁判に負けることもなくなる。原発は政治的に安定して動かせるようになる。

長大な高圧直流送電線

根室で発電した場合、東京・大阪等の大消費地に電力を送る必要があり、この場合長大な送電線が必要になる。送電による電力損失が問題になるが、高圧直流送電なら損失は1000kmで3%と言われる。九州に持ってきても2700kmくらいだから8%くらいの損失ということになり、損失の問題は無い。直流で送ることで周波数の違いの問題もなくなる。

再エネ政策との整合性

風力適地が北海道東北に分布するとか、九州で太陽光発電による電力が増加するなど、再生可能エネルギーは地域的に偏在する。広域送電線が不足すると偏在している再生可能エネルギーは消費できず無駄となる。長大な大容量広域送電線を整備すればいいのだが、稼働率が低くコストメリットが少ない再エネだけのために建設することは難しい。

広域送電線がなければ接続制限は避けられず、再エネ普及にブレーキをかけることになる。原発を活用しても60年後にはウランが枯渇するだろうから再エネに頼らざるを得ない時代がくるが、現在までの導入量を今から毎年導入しても不足する。今からブレーキをかけていては不足に拍車をかけることになる。

根室原発特区構想を実現すれば既存原発は即廃炉になるので既存原発用送電容量を即時に再エネ用に振り替えることができる。その結果、広域送電線の完成を待たずして風力などの再エネを増やすことができる。広域送電線および根室原発が完成するころには再エネ比率も相当な上乗せが可能になり、完成後は原発比率も相当な上乗せが可能になる。根室原発特区構想は再エネも原発も増大させることができる。

地震・津波対策

根室周辺は福島や浜岡と同様な海溝型地震の巣である。危険ではあるが、浜岡や福島より特段にリスクが増えるわけではない。また、これから作る原発は福島の経験を生かして設計されるから地震、津波対策は向上する。さらに想定外に備えて立地としてリスク低減をしておくわけだから移転によるリスクの低減は明らかである。

集中立地のリスク

活断層や地震や津波の影響をまともに受けるのを避けるため原発は一か所に集中立地するわけにいかない。しかし、福島第一と第二の間隔ぐらい離して6基ずつ作っても50基は根室周辺に配置できる。根室市内で分散配置をすることで50基全部が柏崎のように2年も停止することはまず無い。

本構想の収支

今ある原発を即廃炉にして多数の原発を新たに建設し、長大な送電線も建設するわけだから100兆円ほどの出費が必要だ。しかし50基が今後60年動けば300兆円の収入。この構想で増設も可能になれば100基まで増設すれば600兆円の収入になる。収支は十分プラスとなる。さらに、これだけの事業を行うわけだから景気対策としても強力になる。原子力や送電線関連企業は活況に沸き、北海道経済も活性化する。また、これらの原発が完成するころには炭素税や資源量の減少で化石燃料が高騰する可能性もある。今のうちにウラン燃料を確保しておけば燃料費をさらに抑えることができる。実際には上記よりも効果は大きくなるだろう。

その他の効果

強力な温暖化対策になる。エネルギー安全保障にもなる。原子力関係者が失業しない。苦境の原発企業も復活する。世論対策がいらなくなり、原発技術の改善や新技術の開発に邁進できる。原発やその技術者がこれほど集積する場所は他にない。根室が原子力のシリコンバレーとなるのだ。原子力の分野において世界のリーダーになれるだろう。電気代は安くなる。福島の廃炉費用も出る。再エネで高くなった分も吸収できる。そうなれば一層再エネも増やせる。ますます温暖化対策やエネルギー安全保障が進む。そしてこれらの原発が寿命を迎えるころには再エネが勝手に十分なエネルギーを作ってくれる時代になることだろう。

廃棄物処理について

根室の先に北方領土の歯舞諸島がある。無人島だから北方領土が戻ってきたら廃棄物処分場を建設することにすれば廃棄物問題は解決だ。たとえ放射能が噴出しても根室より東だから汚染リスクは他所に作るより低減される。歯舞諸島は根室の隣なので廃棄物処分まで含めて根室近辺で完結できる。

なぜ「移転」か

原発を根室に移すとは言っても各地の原発は即廃炉にして根室あたりに新設することになる。日本で原発の新設はもはや困難と言われているが、単なる新設は不可能でも移転ということなら受け入れられる可能性はあるのではないだろうか。また、既存原発立地地域にとっても単に原発がなくなるとなれば反対するだろうが、根室にあっても飛び地とみなし既存のさまざまな優遇政策も根室で稼働していればそのままにすることで受け入れられる可能性はあるのではないだろうか。

根室周辺住民の説得

根室住民はこれまで日本で一番原発リスクの少ない地域だったのが、逆にもっとも原発リスクの高い地域となる。それを根室付近の住民が受け入れるかどうかが最大の問題だ。日本でもっとも東にあるという、誰の目にも明らかな事実から、汚染リスクを最小にするには根室しかないことを説得するしかない。もちろん、空港、高速道路、新幹線など根室市民が望むものはなんでも実現する必要があるだろうし、別荘をもってもらってその費用もだすなどして、いざというときの避難にも備えてもらう必要もあるかもしれない。600兆円稼ぐものが根室市民3万の肩にかかるのだから根室市民が望めばなんでもできる。これまでの原発立地地域とはけた違いの支援ができる。根室の皆さん、それでいかがだろうか。

田代 克
会社役員・太陽光発電業個人事業主

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