【映画評】ボヤージュ・オブ・タイム

2017年03月12日 06:00

ビッグバンによって宇宙が誕生し、惑星が生まれて変化を遂げていく中で、生命が宿り育まれてきた。自然科学から見たその年代記を映像でたどりながら、過去、現在、未来への命の歩みの本質にせまっていく…。

巨匠テレンス・マリック監督が、宇宙創生から生命の歩みを描く映像叙事詩「ボヤージュ・オブ・タイム」。宇宙、惑星、生命の誕生、地球の変化、人間の営み。それらが魅惑的な映像で綴られる本作では、オスカー女優ケイト・ブランシェットが語りを担当している。もはやマリックはストーリーを語ることは放棄しているようだが、「ツリー・オブ・ライフ」の冒頭で描いた宇宙や、恐竜や太古の植物などが存在する地球の形成を、より深く、より壮大に、より美しい映像でつきつめたのが本作だ。

人間もところどころに登場し、現代社会の病巣をちらりと見せたりもするが、人間は宇宙空間の中では砂の一粒にも満たない大きさ。人間が映像の中心になることは決してない。革新的な映像技術が用いられているが、正直なところ、流麗な映像が連綿と続き、ブランシェットの低い美声を聞いているうちに、抗いがたい眠気に誘われる。だが決して不快ではなく心地よさを感じるものだ。ずっとずっとこの映像に身を委ねていたいというのが本音だが、何事にも終わりがくる。誕生、愛、そして死。そこに人間がどう関わっていくべきなのか。マリックの40年の映画人生の集大成であるこの映画はそれを問いかけているような気がしてならない。
【65点】
(原題「VOYAGE OF TIME」)
(仏・独・米/テレンス・マリック監督/(ナレーション)ケイト・ブランシェット)
(体感型映画度:★★★★★)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2017年3月11日の記事を転載させていただきました(アイキャッチ画像は公式YouTube予告動画より)。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。

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