東日本大震災の惨禍から、丸6年の時が流れました。
今なお、避難者は約12万3千人に上り、仮設住宅での暮らしを余儀なくされている被災者は3万5千人を数えます。
大震災後も平穏無事に暮らしている自分は、3月11日というこの日にいかなる使命を与えられ今なおこの世に生かされているのか。
そう考えた末に私は、教育という仕事に現在携わる者として、また国政に国会議員として携わった者として、森友学園をめぐる一連の問題について、できるだけ率直に言及することを決めました。
「森友学園」問題の本質
強烈なキャラクターを持つ籠池泰典理事長という人物にマスコミの注目がとかく集まりがちな「森友学園」問題ですが、その本質は違うと思います。
この問題の核心、それは虚偽と不備と偏向のオンパレードである森友学園に対し小学校設置の許認可を与え、国有地を破格の安さで払い下げた大阪府や政府、そしてそれを陰で主導あるいは加担した政治家たちという政官民の癒着構造。
しかもその志向する先には、子どもたちが自分の心で感じ、自分の頭で考え、自分の価値観に基づいて自ら判断し、自分の意志で行動する主体性や自律性を否定する「思想統制教育」を日本で実行しようという目的が存在しています。
森友学園についての報道を見るにつけ、そもそもどうしてこのように大きくバランスを欠いた思想を持つ団体が「学校法人」として認可されたのか、一私学経営者としては理解に苦しみます。
虚偽に虚偽を重ねた申請内容、不安定な財務状況、持論を一方的に主張するだけで質問には応じず、過ちはすべて他者のせいにし嘘八百を並べ立てる籠池泰典理事長の言動、幼稚園児に安保法制を礼賛し隣国を攻撃し貶めるような言葉を暗誦させ、教育勅語を素読させる著しく偏向した教育内容etc.
遂には、補助金の不正受給も疑われています。
学園は、新設中の小学校校舎の建築費として国交省に事業費23億8400万という契約書を提出。その結果これまでに5650万円の補助金(つまり私たちの血税)が国庫から学園に支払われています。
その一方、設置認可申請を提出していた大阪府の私学審議会には、学園の財政負担を少なく見せ認可が下りやすくするため7億5600万円という契約書を提出。更には、騒音対策の助成金申請のため関西エアポートには15億5千万円の契約書を提出、と同じ日付で3種類の契約書を使い分けていました。
籠池理事長は小学校の設置認可申請を取り下げ、理事長を辞任する意向を示しているようですが、補助金の不正受給に関する疑惑は理事長退任で済む問題ではありません。
また理事長を退任しようとも、一連の森友学園をめぐる疑惑の中心人物であることに何ら変わりはないのですから、国会は参考人として籠池氏を速やかに招致すべきです。
「森友学園」 3つの疑惑
この問題には、大きく3つの疑惑が存在します。
1. 国有地の格安払い下げ問題
2. 小学校の設置基準緩和
3. 総理夫人と大物政治家の関与
<1.国有地の格安払い下げ問題>
国から森友学園に払い下げられた大阪府豊中市にある土地8770㎡の不動産鑑定評価額は9億5600万円。ちなみに隣接する国有地9492㎡は、国から豊中市に14億2300万円で売却されています。
しかも、森友学園に払い下げられた国有地にはゴミが埋められているということで、その撤去費用として8億1974万円が控除され、結局この土地は1億3400万円で同学園に払い下げられました。
ここで最大の問題となるのが、ゴミの撤去費用として8億2000万円という膨大な費用を計上した政府の算定根拠です。政府にはこの撤去費用を算定する上で根拠とした調査結果資料と、その資料の数値に基づいて撤去費用を算定したデータが必ず存在するはずです。
国会は国政調査権を行使し、政府に対し8億2000万円の算定根拠となった全資料の公開を求めるべきです。
また同時に、同額を投じて森友学園側がゴミ撤去を本当に行ったのかどうかを籠池理事長を参考人招致し確認すべきです。
<2.小学校の設置基準緩和>
小学校の設置基準が森友学園の要望で大きく緩和されたと聞いても、一般の方々はあまり関心を持たれないかもしれません。
しかし私学関係者からすれば、この基準緩和は天地をひっくり返すくらいの大事です。
大阪府はもともと、幼稚園しか設置していない学校法人が小学校の開設に借入金を充てることを認めていませんでしたが、森友学園から要望をうけるとこれを容認しました。
府の私立学校審議会の議事録によると、委員から「借り入れが今もっているものよりオーバーしている」と疑問が呈され、また入学希望者も定員の半数程度にとどまっていることが報告され、学園の財務状況を懸念する声も出ていたそうです。
それでも大阪府は森友学園の小学校設置を妥当と判断し、設置を認可しました。
許認可や補助金などの申請の際は、当たり前のことですが一点の瑕疵もないように書類を整えるため、学校法人の担当者は細心の注意を払います。膨大な資料を用意し長時間をかけて用意し、何度もチェックを重ね提出しますが、それでもお役所からは繰り返し不備を指摘され、そのたびにまた多くの労力を投じて修正を行い、高い山の頂きに一歩一歩登り詰めて行くように慎重に粘り強く申請手続きを行っていきます。
ましてや学校の新設などと言ったら、その天文学的な労苦とエネルギーはダムを作ることにたとえられる程で、歴代の責任担当者で最後まで体を壊さずに新設を迎えられた者は滅多にいないというのが私学の常識です。
私学経営に携わる者たちが皆、自らの命を削るようにして実現してきた学校新設といった事業が、今回のようにあまりにも杜撰な体制のもとで認められ一気呵成に進行して行ったことには呆然唖然の一言です。
<3.総理夫人と大物政治家の関与>
1と2で指摘したような常軌を遥かに逸脱した厚遇が、なぜ大阪府および政府から森友学園に行われたのか。
そこで指摘されるのが、安倍昭恵夫人の名誉校長就任をはじめとする政治的な力です。
総理夫人は私人か公人かという議論があるようですが、そんなものはケース・バイ・ケースで、今回のように学園の名誉校長として「安倍昭恵総理夫人」と顔写真とともに明記されていれば、それはどこからどう見ても完全なる公人でしょう。
もし私人ですと主張なさるなら、せめて総理夫人というタイトルははずすべきです。
安倍総理は予算委員会の質疑で、夫人は名誉校長就任を固辞していたと答弁していますが、もしご自分の意志に反して自らの名前と写真が勝手に掲載されていたなら、なぜ昭恵夫人は森友学園を訴えないのでしょうか。
私が同様の事態に遭遇したら、間違いなく学園側を告訴します。
しかも昭恵夫人は、森友学園での講演の際に血税で給与が支払われている政府職員を同行させています。
政府職員に同行を依頼しておきながら、その活動は私人で行ったと主張することは理に反しています。
いずれにしても、時の総理夫人が名誉校長に就任しているという事実が、国有地の破格の払い下げをはじめとした一連の森友学園への、あまりにも優しすぎるお役人たちの判断や行動の背景にあるのではないかという疑念は、このままではおいそれとは払拭されないでしょう。
昭恵夫人におかれては、政治不信をこれ以上助長することのない様に是非とも、多額の血税が不正にそして無駄に使われた疑惑をもたれている森友学園との関係について、公式の記者会見を開き、一国のファーストレディーとして事実を国民に対しつまびらかにすべきだと思います。
折しも、愛媛県今治市では安倍総理夫妻と懇意にしている加計孝太郎理事長が運営する岡山理科大学の用地として、約36億7500万円相当の土地が無償で提供され、さらに2023年までの学校の総事業費192億円の内、半分の96億円を市の補助金で負担するという話が、「第2の森友疑惑」として急浮上してきました。
今治市の財政規模に鑑みて、岡山理科大学に対する支出額に妥当性があるとは到底考えられませんし、現に財務省も以前はこの案件に反対していたそうです。
財務省の反対をひっくり返せるだけのパワーをもつ機関を、私は一つしか知りません。
いずれにしても政治や行政に対し、国民から大きな疑念を持たれた現在の状況を放置しておいて良いわけがありません。
関係者の国会での参考人招致を実現し、真実が国民に明らかにされる日が一日も早いことを願っています。
編集部より:この記事は、畑恵氏のブログ 2017年3月11日の記事を転載させていただきました(アイキャッチ画像は森友学園理事長辞任を表明した籠池泰典氏関係者のYouTubeより)。オリジナル原稿をお読みになりたい方は畑恵オフィシャルブログをご覧ください。