(豊洲)第5回専門家会議概要〜問題解決まであと一歩〜

宇佐美 典也

ども宇佐美です。
3/19の「第5回豊洲市場における土壌対策等に関する専門家会議」、いわゆる専門家会議、に参加してきたのですが、大変内容が濃かったので簡単に概要をまとめます。

なるべく私自身の見解をいれず、情報を要約しているつもりですが、私は築地から市場を移転をした方がいいと思っている人間なので多少のバイアスはかかっていると思って読んでください。

なお重要と思われるところは太字、色付けをしています。

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<冒頭>

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①平田座長より改めて専門家会議の趣旨説明。

・また今回もモニタリングの再調査のデータが漏れて「環境基準の100倍のベンゼン」などと報じられたことは遺憾。

・今日の会議は第九回モニタリングの数値上昇の原因究明と地下ピット対策が主たる議題。再調査のデータが漏れるようでは専門家会議の意義が問われる。

・そもそも地下ピットのある状態でのリスク管理の在り方を審議するのが専門家会議の本来の役割。モニタリングの数値急上昇への対応で遅れたが、今回は本来の仕事に戻る回となる。

②築地市場協会の伊藤会長より都庁に対する抗議
・なぜ、どこからモニタリングのデータが漏れたのか?

・これだけメディアが報じているとなると組織的にリークしているとしか思えない。なぜそのようなことをするのか。

・前回も同じだった、ましてや知事が前日の記者会見で「明日はひどい数値が出る」と予告した。市場長は知事に対してこの件について、なんの抗議もしていないのか?

・小池知事にとって都合のいい情報だけが、先行的にリークされて、都合の悪い情報は隠されているようにすら思える。

・あまりにも人を馬鹿にしている。東京都としてこのような情報の扱い方でいいのか。

③村松市場長
・データの漏洩は非常に遺憾だ。組織的にデータを漏らしているというようなことはない。今後は専門家会議が一元管理できるよう情報管理を徹底したい。小池知事に対しても報告する。

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<論点1:地下水モニタリング結果の評価について>
https://youtu.be/hCcpqlWWSqw?t=21m4s

①第9回地下水モニタリングの分析結果はパージ水を検査に回した一箇所を除き「暫定」を外し正式な値とする。なお第9回モニタリングの調査時に油臭、腐敗臭がした井戸が各所にあり、こうした情報も9回調査のデータと整合的である。

②第1~8回地下水モニタリングの数値についても、ガイドラインにそった調査が行われており、分析結果は有効と判断する。一部で再採取が行われていた理由も、懸濁物質が目立つ時により正確な数値を観測しようという試みであり、問題ないと判断する

③第9回モニタリングのデータが急変した原因については、平成28年8~9月に地下水管理システムが稼働を開始し、帯水層下部を中心に地下水流動に変化が生じたことが影響した可能性が高い。

(主たる理由は以下の通り)
・A.P2m以浅の土壌は全て入れ替えられており、土壌汚染は残存していない。A.P2m以深も調査時に基準超過した範囲の土壌は全て掘削しており、その範囲では土壌汚染は残存していない。

・10メートル区画のメッシュ調査では、地下水に関してもh26.11~h28.5の1年半は基準超過しておらず、土壌汚染や地下水汚染が残存していたとは考えられない。

・上記メッシュ調査では把握できなかった、A.P2m以深の帯水層に部分的に存在する透水性の低い土壌(粘土・シルト)の間隙水にベンゼン、シアン、ヒ素が含まれて残存しており、地下水管理システムの稼働によって透水性の低い土壌の間隙水が透水性の良い砂層に移動してくることによって地下水基準を超過する状態になったという可能性がある

・第9回地下水モニタリングにおいて地下水基準を超過した観測井戸の大まかな分布は、平成20年2月に実施した詳細調査と地点の分布に相関性が高いことから、土壌汚染対策後も局所邸に土壌汚染が残存していた可能性が高い。

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<論点2:地下水管理システムの稼働状況について>

・地下水管理システムは順調に稼働しており、地下水は順調に低下してきている。ただA.P1.8mまで水位を下げるという目標は、ごく一部を除き達成していない。

・地下水の排水については全て下水排除基準を満たしている。

・地下水管理システムが稼働し続ければ、少しづつ地下水の浄化が進み、将来的な地下水環境基準の達成も見込める。このまま地下水が下がり続ければ問題ないが、しばらく水位の変化を見守る必要がある。

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<論点3:地下水の再調査方式を変えた理由等について>

・再調査はパージして、水位が戻るまで待つ通常の手順で調査

・ただし揮発を抑えるため、これまでのベーラーとは変え、ゆっくりと揚水する低流量ポンプを使用した

・パージ終了から採水までの時間による影響については、1時間、24時間、48時間の3つ試料を比較した結果ほとんど変化はなかった。よって当日採水と翌日採水はほとんど差はない。

・環境基準の100倍(1.0mg/l)と先行報道された5街区のベンゼン濃度については、0.8~1.0まで値が出ており、前回数値(0.79)から取り立てて上昇したというわけではない。

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<論点4:地下ピットの状況>

・地下水管理システムが稼働した影響で、地下ピットからは捨てコン以下に水が引いた

・地下ピットの排水も全て下水基準を満たしていた

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<論点5:豊洲市場における水質調査および空気測定の結果の評価>

・大気環境基準を見たしているが、ベンゼンの濃度が上がっている。これは都内全域で上がっており、豊洲独自の汚染の影響があったことが理由とは考えられない

・地下ピットの水銀の大気濃度は地下水管理システムが稼働し排水が進んだ結果、基準値以下に低下した

・12月時点では地下ピット内の水質はベンゼン、シアン、ヒ素、、水銀全て基準を満たしている

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<論点:地下ピットがある状態でのリスク管理対策>

・豊洲市場において地下水の利用は予定されてないため、地下水経由のリスクはない

・汚染土壌についてはA.P2.0メートル以深に自然由来の汚染土壌が存在するが、建物床面は敷均コンクリートまたは厚さ50cmの再生コンクリート砕石層となっており、建物以外の部分は50cm以上盛り土されているため、直接摂取のリスクはない

・地下ピット水が溜まり水銀が気化し換気のない地下ピットに滞留することが確認されたが、1階部分に侵入している可能性はないので現状において問題はない

・将来的に床面にひび割れが生じたりして1階部分に地下の大気が侵入する可能性を考慮しても、地下ピットが現在測定されているレベルで保たれていれば問題ない

・対策の方向性としては、①地下水から気化したガスの地下ピット内の侵入防止、②地下ピット内の換気による濃度上昇防止が考えられ、また③地下ピット内のモニタリングが管理として重要になる

・このうち①の地下ピット内の侵入防止工事は環境を大きく変化させ別の問題を生む可能性があり好ましくないと委員から指摘

・②の換気についてなるべくシンプルで、構造に影響を与えない形で進めることが好ましいとの意見

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以上を踏まえて最後個人的に思うところですが、とりあえずは

・都庁の情報管理体制の問題について、都議会として早急に真相究明、再発防止策を求める
・地下水管理システムの稼働をしばらく見守り、問題があれば対策を取る
・地下ピットの換気方法について、新たな工事をするのか、ソフトで対応するのか決める

という三点が重要になってくるのではないかと思います。都庁のガバナンス問題以外は、確実に問題は解決に向けて進んでいるという印象です。

ではでは今回はこの辺で。


編集部より:このブログは「宇佐美典也のblog」2017年3月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は宇佐美典也のblogをご覧ください。