毎日新聞と高橋源一郎さんは人の命の重みを考えて欲しい

2017年03月21日 11:30

本日の毎日新聞の人生相談に、ギャンブル依存症についてのご質問が掲載されました。
37歳の、結婚して奥様もお子さんもいらっしゃる息子さんが、ギャンブルのために度々の無心。どうしたらよいか?というお母様の悲痛な叫びです。

それに対する、作家 高橋源一郎氏のご回答がこちらです。
ギャンブル依存抜けさせたい=回答者・高橋源一郎(毎日新聞)

ギャンブル依存症について書かれたもので、私が目にした中で、史上最悪の、無知と無理解、その上、無責任で残酷な回答だと思いました。

依存症の患者は、ギャンブルの何に惹(ひ)かれるのだと思われますか?
理解し難いかもしれませんが、実は「徹底的に負けること」です。
負けて負けて負けて死に近いところまで行くこと。
それが、彼らの(無意識の)願望です。
そこまで追いこまれ、ぎりぎりのところで死から生に戻ってくる。

高橋氏は、無頼派小説の読み過ぎか、はたまた破天荒な生活に憧れでもあるのではないでしょうか?

ご自身も相当な競馬愛好家の様ですが、愛好家の方は、このようなことをある種ロマンチックに語られても構いません。高橋先生は、間違いなく愛好家であり、依存症者ではないのでしょう。けれども依存症問題に悩むご家族に、このような回答をしては絶対にいけません。愛好家と依存症者は全く違うのです。

死を選ぶことを、まるで自ら望み、芸術家の崇高な志と同等のような心の葛藤のごとく書かれていますが、ギャンブル依存症者の実際は全く違います。

ましてや「負けたい」となんて思ってもいません。
「勝つしかない」と思っています。
「勝ってこれまでの負けを取り戻して、借金を返したら絶対にやめるんだ!」
と考えるしかなくて、苦しいのにやってしまうのです。

依存症者は、あまりの辛さ、絶望感から「死にたい」「死んでやる」「死んでも構わない」そんなことを何度も口走ります。

「死にたい」「死にたい」私も毎日泣きながら口走っていました。
ある日、あまりの苦しさに、泣きながら「死にたい」と仲間に電話すると「りこちゃん、私に死にたいって電話をしてきたってことは、本当は生きたいんでしょ」と言われ、そこでハッとしました。
あれが私の第一のターニングポイントでした。

「そうか、聞く耳を持ってないから、本当は生きたいのに、死ぬくらいしか、解決策が見つからないんだ・・・」と、自分の気持ちに気がつけたのです。

確かに、ここで書かれているように、
「ギャンブルや買い物をやめて、平穏な凪のような生活を強いられるくらいなら、死んだ方がマシだ」と思っていた時期もありました。

けれどもそれはあくまでも病気が発症したからそう考えただけで、本心から望んでいたわけでもないし、実際にはギャンブルをやめてからの人生の方が、ずっと刺激的でした。依存症者には「ギャンブルなんかより、人生の方がずっと面白いよ!」と、是非とも真実を伝えて下さい。

高橋先生、ギャンブル依存症には回復があるのです。
IR以来、何度もそのことがマスコミに取り上げられ、そして回復に繋ぐための支援策に今国が乗り出そうとしていること、先生はご存じないのでしょうか?
だとしたら、相当アンテナの感度が鈍いと思います。

また、毎日新聞社さんは、一体どうされたのでしょうか?
何度もギャンブル依存症について取り上げて頂いていますし、
昨年末にもまさに私の回復についても取り上げて頂いています。

ギャンブル依存症対策、義務づけ訴え(毎日新聞)

このような全く事実と違う回答を、無責任に掲載した意図はどこにあるのでしょうか?
何か理由がおありでしたら、是非とも教えて下さい。

高橋先生、あなたはもし子供のことで悩み苦しんでいたとして、
「お子さんは、死にたい情動を抱えて生きている」
「社会的な死を与えることでのみ、本当の死から逃れられる可能性があります」
と言われたらどう思われますか?

ギャンブル依存症者の家族は、うつ病を発症してしまうケースも多く、むやみに不安を煽ることはどうかおやめ下さい。

また先生の周りでも、沢山の方が自殺されたとのこと、本当に胸が痛みます。
私たちも、この3年間の間に9人もの仲間が自死を選びました。
だからこそ一人でも多くの人を助け出すべく、助かる方法を発信すべきではないでしょうか?

このご質問に応えるなら、
「奥様は離婚を選ぶ前に、そしてお母様は絶望する前に、同じ状況から抜け出し、まずはご家族の自助グループか家族会に繋がるべきです。そして、回復に向かった人達の話しを聞き、そのやり方を真似て、状況を改善させるのです。」
とお答え頂きたかったです。

先生がおっしゃる底つき神話は、依存症界ではもう10年も20年も前に否定され、今は「底つきを底上げ」する方法が様々に編み出されています。なぜなら、底つきを待っていたのでは、多くの人が本当に死んでしまうからです。

高橋先生、あなたはこんなことをおっしゃっておられます。

本を読むようにしてください。自分の得意ジャンル以外の本を。
視野の狭い人間にならないように。他人の言葉に、真剣に耳を傾けるようにしてください。
自分の信じる「正しさ」以外にも「正しさ」があることを知ってください。

この言葉通り、是非、依存症についての本もお読みになって下さい。
依存症は、人の生死が関わる病気です。
先生のように発信力のある方が、思いこみや、思いつきで回答なさらぬよう、くれぐれもお願い申し上げます。


編集部より:この記事は、一般社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」代表、田中紀子氏のブログ「in a family way」の2017年3月21日の記事を転載しました(アイキャッチ画像は毎日新聞「人生相談」コーナーより引用)。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「in a family way」をご覧ください。

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田中 紀子
一般社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」代表

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