百条委員会を見て思った「豊洲」とは関係ない話

渡瀬 裕哉

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写真・産経新聞から引用

豊洲の地下水汚染にはほとんど関心がない筆者が思うこと

豊洲新市場の地下水汚染と東京ガスとの土地売買契約を巡る経緯に関する石原氏と浜渦氏に対する百条委員会が終りました。かつての大物知事と辣腕副知事が登場してなかなか見応えがある質疑が成されたものと思います。

しかし、筆者は「豊洲新市場にさっさと移転したら良いんじゃないの」 派なので、百条委員会で石原氏らに環境基準が意味がなかったことを認めさせる一定の意義は認めつつも、質疑内容とは正直言って全然関係ないことが気になってしまいました。

2005年の百条委員会で偽証認定されて辞任した元副知事が天下りしている事実

浜渦氏は副知事時代に議会にやらせ質問を依頼したことを問われた2005年に行われた百条委員会で「偽証」を認定された方です。つまり、百条委員会での偽証なんぞナンボのもんよ、という胆力を持った方ということになります。

結局、浜渦氏は偽証認定されたことで都議会で問責決議を受けて副知事を辞職することになったのですが、まさかその直後に「東京都の第三セクター(東京都交通会館)に副社長になった」とは驚きました。

東京都における議決機関である都議会で「偽証」し「問責決議が可決された」人物に天下りを認める東京都とはどれだけ腐敗した組織なのか、と率直に思います。私自身は浜渦氏が辣腕な方だと耳にしたことはありましたが、副知事以後のポジションは知りませんでしたので、正直言って唖然としました。

石原慎太郎氏が百条委員会で問われるべきは「新銀行東京」の末路ではないのか

石原氏が百条委員会で問われるべき問題は新銀行東京の内実でしょう。新銀行東京は議員の口利きやヤクザものなどによって都民の税金が食い物にされたと噂されている事例です。その杜撰な経営について石原氏に対する住民訴訟も起きています。

筆者としては、本件は納税者の血税を政治家が浪費した最たる事例であったように感じています。豊洲新市場よりも政治責任を問われるべきものであり、その設立からの経緯を徹底的に見直されるべきものです。そして、二度と政府が金融という愚策に新たに手を出さないようにする戒めとすることが重要です。

石原慎太郎氏には百条委員会で今度は新銀行東京の顛末についてじっくりと語って頂きたいものだと思いました。

今回の豊洲に関して、今までの証言をそのまま信じるならば、都知事・副知事が与り知らぬところで、都民に不利益な契約内容を結んだことが明らかになったわけですが、そのようなガバナンス上の問題が発生しないようにすること、更に政治家の都合で新銀行東京のような大失敗が二度と発生しないようにすることをもう一度確認するべきです。

政治家は60歳程度を限度に定年したほうが良いということ

石原慎太郎氏が脳梗塞を患って体調不良のため、彼の百条委員会は1時間で終了しました。その上、非常に明瞭に記憶していること、記憶から無くなってしまったこと、が混在しており、高齢になっても自分に都合が良いことは覚えているものだなと人の記憶の在り方に感心させられました。

しかし、東京都知事のような重大な意思決定を為す要職についていた人が職責から退いて僅か数年で全ての記憶が無くなってしまうことは問題でしょう。日常的に忙しくて過去のことは忘れてしまうのも理解できますが、具体的な証言や資料が出てきたら思い出すことも多いのではないかと思います。

そこで、首長職などの重要な職責を担うポジションの人は比較的健康体である60歳くらいまでを上限に設定するべきなのだろうと思いました。高齢化社会以前は何歳の人でも要職に座っても良いということは道理がありましたが、現状のような長寿社会では少し非現実な気がします。

立候補に制限をかけるわけにはいきませんので、有権者は投票判断に際して「年齢」というものをもう少し気にしても良いのではないかと感じました。

石原都政に関する検証、その失敗を繰り返さないために

石原都政は長期に渡るものでしたが、久しぶりにその流れにない都知事が誕生したことで、石原都政の功罪について徹底的に検証を加えて反省材料にすることは重要なことのように思います。

石原氏には財政健全化などについては一定の功績はあったと思いますが、東京都の隠蔽体質・官僚体質、放漫な財政運営、政治家による口利きなど、注目が集まっているうちに全て掃除することが大事でしょう。

百条委員会を見ながら、一時代の終わり、そしてその反省の必要性を感じてしまったわけで、同委員会はそのための象徴的な意味はあったかなと思います。

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