人口別での世代交代より、注目すべき米国内の変化とは

ミレニアル層といえば、米国の将来を担う大事な世代ですよね。

こちらで指摘したように、人口では既に4分の1を占めるだけでなくベビーブーマー世代を抜き去り首位に躍り出ました。それだけでも十分時代の変化を象徴しますが、もう一つ重要な潮流の変わり目を現す世代でもあるのです。

何かと申しますと、人種別動向です。

ベビーブーマー世代と言えば、1946〜1964年に生まれた人々を指します。このうち、白人の比率はというとヒスパニックを除き平均で72.2%でした。ミレニアル層はというと、1980年〜1999年ですからベビーブーマー世代の最後とミレニアル層の最初の間には16年しか違いがありません。それでも、ミレニアル層の白人比率は平均で55.7%まで低下しました。

白人の比率は、年齢が下がるごとに低下。
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(作成:My Big Apple NY)

他の世代をみてましょう。1925〜45年生まれは79.2%、ベビーブーマー世代で72.2%とそれぞれ70%台を維持していました。しかし、ミレニアル層の直前、ジェネレーションXで地殻変動が起こります。そう、ウィノナ・ライダーとイーサン・ホークが主演した映画”リアリティ・バイツ”の世代ですね。同世代になると、白人の比率が60%とベビーブーマー世代から8%以上も低下してしまいました。その流れは止まらずミレニアル層で55.7%、2000年以降の生まれになると51.1%へ下がります。0〜5歳に限れば49.7%で、とうとう白人がマイノリティになってしまうのです。

新生児数では移民を下回るとはいえ大きく水を開けられていないのに、なぜここまで白人の比率が下がってしまったのでしょうか?白人女性の社会進出はもちろん、増加するヒスパニック層の移民と彼らの出生率の高さ、それに加えて異人種間の結婚が白人の比率が低下させていると考えられます。上記のチャートをみても、わずかながら混血の割合が徐々に高まっていますよね。ピュー・リサーチ・センターの調査では新婚夫婦の13%が異人種間と過去最高を記録し、筆者もその年に数字を押し上げた1人です。2050年にはアメリカ人の顔がこんな風に変わっていくとの予想も、あながち間違っているとは言えないでしょう。

こうしてみると、トランプ旋風はつくづく多数派だった白人の最後の抵抗のようにも見えます。ただし、忘れてならないのは移民や若い世代が必ずしもリベラル寄りではないという事実です。世論調査ではトランプ米大統領の入国禁止令に、ほぼ半数の49%が支持していましたよね?たとえ移民2世でも米国市民のアイデンティティは根強く、人種だけではなく政治理念や価値観によって第二の多数派が出現してもおかしくありません。

(カバー写真:Brian Geltner/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2017年4月3日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。