終身雇用制が生み出した「情報」科目の代用教員

記事「青少年のネット利用とモラル教育の課題」で、「情報」科目を「情報」免許を持たずに教えている教員が27.6%も存在するという文部科学省の調査結果を引用した。これについて理由を尋ねられたので説明する。

週5日、一日あたり6時間の授業をする高校を想像してほしい。この高校では、5×6=30時間(以下「コマ」)が、「国語」と「数学」はそれぞれ4コマ、「理科」は3コマというように配分されている。

この高校で新規に「情報」科目を必修化した。週に30コマは決まっているから、「情報」を入れるためには他の科目を減らさなければならない。そこで、「理科」を2コマに減らしたとしよう。一クラスについて「理科」は1コマ減るだけだが、三学年合計で15クラスあるとすれば、高校全体では15コマ減少する。この高校では、教員は週に15コマ授業をして、残りの15コマは授業の準備をしているとすると、「理科」15コマの減少は教員一人分の労働を奪う。

「理科」免許の教員は一人失職するのだろうか。文部科学省は、講習を受講すれば「理科」免許の教員に「情報」免許も与えるという救済策を採用した。

大学の教員養成課程では、「情報」の必修化に対応して「情報」教員の育成に乗り出した。しかし、本来は「理科」の教員が「情報」を教えているから、いくら免許を取得しても高校への就職はかなわない。この「理科」教員が定年退職するとやっと本当の「情報」教員が採用される。しかし、それまで待たされるというのでは大学生に魅力はない。文部科学省数値でも、2010年度の「情報」免許取得者数2169名が、2015年度には1568名と減少している。

「情報」の教員養成課程が人気を失った結果、「理科」教員が退職しても「情報」教員が採用できず、代用教員に頼らざるを得ない。これが27.6%の説明である。

そもそもの原因は、「情報」を必修化しても他の科目の教員を減らすことができなかったという終身雇用制にある。