「デジタル超学校」を妄想してみた。

2017年04月06日 11:30

90年代のデジタル化、2000年代のスマート化を経て、AI/IoTの時代に入りました。日本はその90年代以降、成長が止まり、世界の中での地位も低下しています。デジタル技術の開発と利用に後れを取っていることが一因です。しかし、高度成長を支えた「ものづくり力」と、クールジャパンに代表される「文化力」が廃れたわけではありません。
 力を発揮するには、産官学がそれぞれの機能を高める必要があります。しかし日本は、大学のプラットフォーム力が弱い。ぼくが身を置いたMITやスタンフォード大学が果たしてきた機能とは比べるべくもありません。強みを集結し、力を発揮する拠点が必要と考えます。
 
 その芽はあります。
 ぼくが所属する大学院、慶應義塾大学メディアデザイン研究科(KMD)。メディアのテクノロジー、デザイン、マネジメント、ポリシーの文理融合4本を軸として、産学連携のリアルプロジェクトに学生が身を置くことでサービスやビジネスを創り出すという挑戦的な研究教育機関で、国際色も豊かです。
 そしてぼくが代表を努めるポップテック特区「CiP」。東京・竹芝1.5haの土地にデジタルのテクノロジーとコンテンツの集積特区を創る民間の構想で、研究開発、人材育成、起業支援のクラスターとなります。そこにはKMDに加えスタンフォード大学等の拠点が置かれるだけでなく、世界オタク研究所などの研究コミュニティが活動を進めることが期待されています。
 既に国家戦略特区の認定を受けており、それを活かして、メディア融合、サイネージ、アーカイブ、ロボット、超人スポーツなどの産官学プロジェクトが走り始めています。韓国政府が進めるコンテンツの人材育成拠点やマレーシア政府の研究開発拠点との連携も始まっています。
 しかし、こうした大学単位や民間企業のみの取組には限界があります。小さな点でしかありません。これを国家戦略レベルで検討してもらいたい。
 実はそのような議論は政府でも始まっています。内閣府・知財本部では「クールジャパン人材育成検討会」が開かれ、コンテンツはじめクールジャパン分野の人材育成策がたたかわされています。ぼくも参加し、CiPの構想をテーマにしてもらっています。経産省・産業構造審議会では、AIに関するグローバル研究拠点整備策が論じられています。いずれも先端分野での教育・研究拠点を整える方向です。
 その受け皿となる技術・文化融合の開発拠点構想を具体化させましょう。ぼくらのCiP構想は既に場所を確保し、特区としてコミュニティも形成されつつありますから、それを活かした青写真を描いてみましょう。以下、妄想です。
 デジタル分野の技術を軸とする文理融合の国際的な教育・研究機関であり、既存の大学や研究機関の枠を取り払い、最先端の人材が集いつつ、教員も研究者も学生も、産業界からの参加者も一体となって、具体的なサービスや商品の実装からビジネスや産業の創成までを手がけていく環境を造ります。「超学校」、「超大学」とでも名付けておきます。
 デジタル超学校、ポイントは10点あります。
1 技術主導の教育と研究と実装。
 大学院レベルの塾です。21世紀の松下村塾。先端の教育者、研究者、クリエイター、起業家等のコミュニティを核とします。参加する学生の年齢は問いません。
2 デジタルに特化した教育・研究。
 AI、IoT、ロボティクス、VR、ビッグデータ、ブロックチェーンなどのデジタル分野に特化し、その先端を探求します。
3 重点領域の実装。
 医療、福祉、防災、農業など課題先進国の重点テーマの技術による解決を図ります。同時に、コンテンツ、デザイン、食などクールジャパン戦略を追求します。
4 文理融合。
 教育はテクノロジー、デザイン、マネジメント、ポリシーの4本を軸にします。情報工学、アート、経営学、法学など分野横断的なアカデミズムをバックボーンとします。
5 バーチャルリアル。
 講義は全てオンライン=バーチャル多言語環境で実施。一方、研究や実装はリアルなラボで行い、実フィールドでの実証や事業化を進めます。
6 リアルプロジェクト主体。
 企業等のスポンサを持つユニット制のプロジェクトで、起業、ビジネス化、さらには産業化を目指していきます。産業界・学術界による評価機関を設け、各プロジェクトを厳正評価します。
7 世界最高級の教育レベル。
 国内の大学(KMD、東大など)、研究機関(理研、産総研、NICT、NTTなど)、海外の大学(スタンフォード、MITなど)から教員・研究者単位での参加を求めます。専任教員は若手中心とします。
8 学生はハイレベル研究員。
 学費は無料です。さらに学生には月々の研究費を支給します。企業派遣も受け入れます。修士・博士などの学位はありませんが、独自の修了証を付与します。
9 多様性。
 海外からの参加は3割以上を確保し、英語公用としつつ、母国語でコミュニケーションできる多言語環境を用意します。保育環境も用意し、出身・年齢・性別を問わず活動ができるようにします。
10 国家戦略特区の活用。
 「CiP」特区を活用し、研究教育に必要な規制緩和を導入します。電波特区、著作権特区、道路占用特区、ロボット特区、ビッグデータ特区等に加え、ビザや税制等の特例も検討します。
 10名程度の教授・リーダー陣と100名程度の学生で、10本程度のプロジェクトを常時走らせる。このような形の拠点があれば、あれこれ動き出すと思いません? 年10億円もあればできると思うんですよ。成功したデジタル起業家のみなさま、お大尽さま、カネが余ってる投資家のみなさま、政府のみなさま、有力政治家のみなさま、ガッツある研究者のみなさま、いかがでしょう?

編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2017年4月6日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。

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