新潟日報は、3月30日付で、新潟大学が2018年度から4年間で教授60人分に相当する教員人件費を削減する方向、と報道した。文部科学省からの一般運営費交付金の削減よる財務状況の悪化を避けるための処置だという。労働組合は「教育の質が下がるとともに、教員の負担が増える」と反対している。
新潟大学が公表している平成27年度業務実績報告書によれば、学部は学生定員を充足しているが、修士課程では現代社会文化研究科・自然科学研究科・医歯学総合研究科の一部専攻で定員割れが起きている。博士課程でも自然科学研究科の一部専攻に定員割れがある。新潟大学がどのように教員削減を進めていくか定かではないが、学生の定員充足率を指標とするならば自然科学研究科が狙われる可能性がある。
産経WESTが鳥取大学でアカデミックハラスメントによって教員が処分されたと報じた。記事によれば、工学部4年生の就職で推薦書の作成を拒否したほか、高圧的な態度を取ったという。教授は「研究者向きで大学院に進ませようと思った。配慮に欠けた」と話しているそうだ。鳥取大学の公式サイトにもこの件に関する発表が掲載されていた。
鳥取大学の平成27年度業務実績報告書を見ると、地域学研究科・工学研究科・農学研究科修士課程の一部専攻と、医学系研究科・工学研究科博士課程の一部専攻に定員割れがある。優秀な4年生を大学院に進学させようという、処分された教授の動機の裏には定員割れ問題が潜んでいる可能性がある。
全国レベルでの学生と教員の増減傾向について調べてみよう。文部科学統計要覧(平成28年版)によると、国立大学の教員数は年々増加し、2014年度には64252名である。2000年度には60673名だったので4千名弱の増加である。これに対して、学部・大学院合計での学生数は、2000年度には62万4082名、2005年度は62万7850名だったのが、2014年度には61万2509名に減少している。
学生数が減少に転じたのにも関わらず教員は増加し続けたが、財政事情の悪化には抗しきれず、教員数の削減に動き出す大学が出てきたというのが現状である。博士学位を取得しても就職できない「ポスドク就職難民問題」がかねてより指摘されてきた。国立大学における教員定員の削減はこの問題をさらに深刻化させる恐れがある。