都民ファーストの会・野田代表の行動は公職選挙法違反では ?

宇佐美 典也

野田数・都知事特別秘書(野田氏の旧オフィシャルサイトより:編集部)

ども宇佐美です。
本日は豊洲の話から一度離れて、都民ファーストの会の野田数(かずさ)代表に関する話です。

さてまず「野田数氏とは何者なのか?」ということについて簡単に説明しますと、もともとは自民党の都議会議員だったのですが、2012年に離党し柳ヶ瀬都議らと今は亡き東京維新の会を立ち上げ衆議院議員選挙に立候補するも落選しアントニオ猪木氏の秘書を務めるなどをしていましたが、2016年の都知事選で小池陣営の選対責任者を務め、小池知事の特別秘書の座を得ました。

野田氏は現在東京都の特別秘書ということで特別職の公務員の立場にあります。一般職の公務員は地方公務員法36条に基づいて政治的中立が求められるのですが、特別職の公務員はこの対象外とされており、政治活動として地域政党「都民ファーストの会」の代表も務めています。

さてそんな野田数氏ですが、どうやら週刊新潮の報道によると2016年11月に「東京私立中学高等学校協会」に対して、露骨に2017年夏の都議選で都民ファーストの会の候補者を支援するように圧力をかけた模様です。(以下記事リンク及び引用)

〜こう振り返るのは、私立高校授業料無償化の「当事者」である一般財団法人「東京私立中学高等学校協会」の関係者だ。
「その月の21日に、私どもの協会の70周年記念式典があり、そこに小池知事も出席されるとの返事をいただいていたので、5日ほど前に式次第を持参し、協会の幹部が都庁に挨拶に伺ったんです。知事はお忙しいので野田さんが応対したんですが、まずノーネクタイで偉そうだなとの印象を幹部たちは抱いたそうです」

確かにクールビズの産みの親は小池氏ではあるが、期間は5月から9月までで、秋風の吹く霜月は対象外である。そして、

「挨拶後に幹部たちが着席した途端、野田さんは『来年の夏には都議選があります。その時は知事が推す候補を応援してくれないと困ります』『あなたたちの協会は自民党に近いですよね』と言ってきたんです。その上、『今後、予算の要望は自民党ではなく、小池知事にお願いします』と畳み掛けてきた。話の流れからして、都議選で知事陣営を応援しなければ私立中高関連の予算を切ると脅してきたも同然です。知事側近の野田さんの言葉ですから、私どもにしてみれば知事本人に宣告されたに等しい。こんな露骨な対応をされたのは初めてです」(同) 

もしこの報道が事実ならば、野田数氏は公職選挙法136の2に違反した恐れがあります。同条は特別職を含む全ての公務員に、地位を利用した以下のような選挙運動を禁止しています。

一  その地位を利用して、公職の候補者の推薦に関与し、若しくは関与することを援助し、又は他人をしてこれらの行為をさせること。
二  その地位を利用して、投票の周旋勧誘、演説会の開催その他の選挙運動の企画に関与し、その企画の実施について指示し、若しくは指導し、又は他人をしてこれらの行為をさせること。
三  その地位を利用して、第百九十九条の五第一項に規定する後援団体を結成し、その結成の準備に関与し、同項に規定する後援団体の構成員となることを勧誘し、若しくはこれらの行為を援助し、又は他人をしてこれらの行為をさせること。
四  その地位を利用して、新聞その他の刊行物を発行し、文書図画を掲示し、若しくは頒布し、若しくはこれらの行為を援助し、又は他人をしてこれらの行為をさせること。
五  公職の候補者又は公職の候補者となろうとする者(公職にある者を含む。)を推薦し、支持し、若しくはこれに反対することを申しいで、又は約束した者に対し、その代償として、その職務の執行に当たり、当該申しいで、又は約束した者に係る利益を供与し、又は供与することを約束すること。

もちろん報道が事実かどうか、また実際にどのようなやりとりがあったかどうか、を確認しなければいけないわけですが、政府見解としては2014年6月2日の参議院憲法審査会では以下のようなやり取りがあります。

○石田昌宏君 おはようございます。自由民主党の石田昌宏です。質問の機会をいただきまして、感謝を申し上げます。

限られた時間ですから焦点を絞って質問をしたいと思いますが、この日本国憲法の改正手続に関する法律の一部を改正する法律案、これでは、公務員の政治的行為に関わる法整備が進められて、公務員が国民投票運動に正しく関わることを規定しています。これまでの議論の中でも、公務員の活動をできるだけ広げるにしても、どうしても制限を掛けなければならないという事項が指摘され、その一つが地位利用であることはおおむね一致していると思います。
そこで、まず公務員の地位利用について考えてみたいと思いますが、今回の法律案の先行例を考えますと、既に公職選挙法が長年にわたって運用されていて、百三十六条の二に公務員の地位の利用の制限がうたわれています。
そこで、まず確認したいと思います。幾つか質問しますので簡潔にお答えいただきたいと思うんですけど、まず、補助金の交付とか許認可でその職務権限を持つ公務員が関係の会社や団体の関係者に対して特定の候補者や政党への投票を働きかけるのは、地位の利用に当たりますか。

○政府参考人(安田充君) お答えいたします。

個別具体の事案が地位利用による選挙運動であるか否かは個々具体の事例に即して判断されるべきものでございますが、一般論として申し上げますと、その地位を利用してとは、公務員等としての地位にあるがために特に選挙運動を効果的に行い得るような影響力又は便益を利用する意味でございまして、職務上の地位と選挙運動等の行為が結び付いている場合をいうものと解されておりまして、御指摘の補助金の交付や許認可の職務権限を有する公務員が関係する会社や団体の職員に対しその権限に基づく影響力を利用して選挙で特定の候補者や政党への投票を働きかけることは、一般的には地位を利用して選挙運動を行うことに該当するものと考えております。

。。。ということで、もし報道されている内容が事実ならば、都民ファーストの会の野田数代表の行為は完全にアウトでしょう。なお公職選挙法136条の2を違反した場合には「2年以下の禁固または30万円以下の罰金」に処されるものとされています。

個人的にはこの問題は、民主主義の根幹に関わる非常に重要な問題と思うので、ぜひ都議会議員の皆様におかれましては真相の追及に努めていただければと思う次第です。

ではでは今回はこの辺で。


編集部より:このブログは「宇佐美典也のblog」2017年4月9日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は宇佐美典也のblogをご覧ください。