長期間遅延していたミャンマー・中国間の原油パイプライン開通へ

2017年04月12日 13:50

パイプライン開設を報じるFTの記事(FTサイトより:編集部)

なぜか本邦主要メディアは報じていないようだが、中国が「国家100年の計」に基づき推進していたパイプライン・プロジェクトがようやく開通することになったというニュースをFTが掲載している。”China and Myanmar open long-delayed oil pipeline” (around 18:00 on Apr 11, 2017 Tokyo time) という記事で、Lucy Hornby記者が北京発として書いている。なおサブタイトルは”Strategic supply route helps Beijing avoid Malacca Strait chokepoint” である。

読んでいて「『二つの大洋』戦略(’two oceans’ strategy)」なる用語の意味が分からなかったので、クリックしてみた。普段は気がつかないのだが、用語に引かれているアンダーラインをクリックすると、アーカイブされた記事に飛ぶようになっているのだ。

「『二つの大洋』戦略」に関連した記事は、2013年1月30日に掲載された “Pipeline marks scrambles for Myanmar” というもので、当該原油パイプラインが同年5月に開通予定だ、ということを報じている。その中で “Where China Meets India” という、ミヤンマーの地政学的重要性を指摘した本の著者で、ミヤンマー政府のアドバイザーだったThant Myint-U氏の言葉を紹介しているのだが、同氏は「中国に欠けているのはカリフォルニアだ」と刺激的な言葉を紹介しながら、中国にとって太平洋とインド洋という「二つの大洋」へのアクセス確保が重要戦略の一つなのだ、と指摘しているのだ。

うーむ。
2013年1月といえば、完全退職後の生活スタイルを模索していた頃で、ロングステイを念頭にタイ関係の勉強をしていたはずなのだが、この重要な記事を読んだ記憶がまったくない。まだまだ勉強しなければ。
さて、と。気を取り直して、続けよう。

なぜ本邦メディアは報じていないのだろうか?
検索してみたが、朝日新聞が「ミヤンマー大統領、習主席と会見 特区開発など協議」(4月11日1:04)と題して報道しているが、原油パイプラインについては記載がない。

当該記事を読むと、本件がミヤンマー大統領の訪中にあたり何か具体的成果を出すべく事務方が折衝した結果、ようやく合意したものらしい、ということが分かる。また、発表したのが中国の外務副大臣Lin Zhenminだということも、ことの重要性を多い隠す役割を果たしているのかもしれない。

だが冷静に考えると、やはり中国恐るべし、と言わざるを得ないほどの重要な意味を持っている気がするが、如何だろうか。

さて、記事の要点をスペースの許す限り紹介しておこう。

・供給ルートの多様化に貢献し、緊張の高まる南シナ海を避けることができる、中国南東部とミヤンマー間の石油パイプライン(P/L)を開通することに、両国はついに合意した。

・ミヤンマーのHtin Kyaw大統領訪中の最後に、中国の外務副大臣Lin Zhenminが発表したものだが、中国側は多くのプロジェクトが停滞している中でより多くのインフラ・プロジェクトをミヤンマー側に要求していた。

・中国のミヤンマーに対する支配力の象徴とみなされていた15億ドルのMyitsoneダム・プロジェクトは、何年も前に中断されたままだ。

・国営新華社通信は、当該パイプラインに通油するため、ミヤンマーのKyaukpyu港にて原油の荷下ろしがすぐ始まった、と発表した。

・原油とガスの並列P/Lは、争いのある南シナ海シーレーンとマラッカ海峡という難所からエネルギー供給ルートを多様化する「二つの大洋」戦略の鍵となるものである。

・当該原油P/Lは、完全操業されると中国の原油輸入(約670万BD)の6%(約40万BD)に相当する(ちなみに日本の総消費量は約400万BD)。ガスP/Lはすでに操業している。

・Chinese Academy of Social Sciencesの東南アジア専門家Du Jifeng氏は、中国が推進している一帯一路戦略の一環として行おうとしているもっと重要な利権に関する契約合意に至れないという事実を覆い隠すためのもので「中国はインフラやエネルギー関連プロジェクトを要求しているが、ミヤンマー側は農業や軽工業分野での投資を望んでいる」と指摘している。

・両P/Lの操業はCNPA or PetroChinaが行うが、同社は、いまや名誉を剥奪されたエネルギー・治安部門のドンだった周永康の下で海外資源を獲得すべしという”going out(走出)”戦略の旗手だった。沿岸部分の製油販売をライバルのSinopecに押さえられているため、周氏の地盤である中国南東部に製油所を建設するというPetroChinaの戦略にも合致している。


編集部より:この記事は「岩瀬昇のエネルギーブログ」2017年4月12日のブログより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はこちらをご覧ください。

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岩瀬 昇
エネルギーアナリスト

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