“尼崎のトランプ”勝谷氏、兵庫知事選出馬へ

2017年04月27日 11:30

勝谷氏Facebookより

「尼崎のトランプ」…いや、現地のみなさんには「尼のトランプ」といったほうがシックリくるかな(笑)そういうわけでコラムニストの勝谷誠彦氏が、初めて選挙に出ることになった。きょう13時から兵庫県庁で出馬記者会見する。

すでにネットでも波紋は起きまくっていて、辻元清美氏と親しいものだから、一部のネトウヨの方々の中には拒否反応を示している(ただ、勝谷さんは、安倍総理とも携帯でたまにやりとりする仲だから、彼らの心境は複雑なのだろう)。あるいは、原発事故直後に「逃げた作業員が酒を飲んでいた」とデマを流したとする記事が拡散されたり、早くも“ネガティブキャンペーン”が始まる兆候もある。

しかし、このあたりのことは、「公人」を目指す上での試練として百戦錬磨の本人は百も承知のことだろう。そしてネット選挙の草分けともいえる軍師を始め優秀な参謀もいるので、的確な対処を随時していくのだろうとみている。

余談だが、勝谷さんの有料メール日記『勝谷誠彦の××な日々。』は、もう10年以上愛読していて、ボクシング担当記者時代に当時の国民的スター、内藤大助選手の人気を読み解く記事の取材で初めてお目にかかってから、ごくたまにメールをやりとりさせていただいている。最近も、大手ネットメディアの左傾化について指摘をしたことがきっかけで、月刊Hanada編集部に推薦いただき、論壇誌で初めて執筆する機会を得たこともあり、今回の挑戦は非常に興味深く注目している。

言動ではなく戦略でトランプになれるか?

情勢調査はこれから行われるので、その数字を見てみないと、どこまで戦いになるのか未知数なのが正直なところだが、現時点での自分のドタ勘では、「華々しく惨敗するか、予想外に健闘するか」のどちらかだと感じる。いまのところ、選対事務局長を決めるのもやっとの「市民選挙」で組織的な支援もなく、前者のシナリオの可能性もある一方で、その知名度は侮れない。

アゴラメンバーで、大阪在住の松本孝行氏も指摘するように、「そこまで言って委員会」で存在感をかつて放っていた印象と知名度は、政治や社会問題への関心の高い層との親和性もある。

著名人候補の場合、選挙準備のメディア露出が進むにつれ、ロイヤリティーの高いファンを中心に、士気の高いボランティアスタッフの確保はスムーズに行くのではないかと思われる。ていうか、都議選とかぶってなければ、手伝いたかったくらいだ(笑)楽しい選挙戦になるのは、まちがいない。

ただ、楽しいばかりでは意味がない。ご本人も本気だ。勝谷さんが勝機をつかむには、「尼のトランプ」路線で行くしかないだろう。これは、メディアでの過激な言動で本家と似ているという表層的な話で言うのではない。2015年の年末時点からトランプ初当選をロジカルに予想していた渡瀬裕哉さんのブログや初の著書「トランプの黒幕」にも書いてあるように、エスタブリッシュメントから政治を取り戻す運動として、極めて戦略的なPRを奏功させたのが「トランプ流」だった。

5選を目指す現職、井戸敏三氏は、自民、公明、民進と既成の有力政党に支援されており、選挙態勢として普通に考えれば「盤石」だ。これに対抗する候補者たちは、NHKの世論調査の政党支持率の割合が兵庫県内でも同様に傾向があると仮定して、自民党支持率に匹敵する4割近くの「支持なし層」を中心に取り込んでいくしかないわけだが、元兵庫労連議長の津川知久氏は共産支持層以外に浸透は難しいだろう。また、行政改革などの政策が評価され、都知事選にも出た前加西市長の中川暢三氏は面白い存在ではあるが、組織的な支援はなく、井戸陣営と互角に戦えるほどの知名度や社会的インパクトには欠ける。

そういう中で、勝谷氏が、これらの候補者の間で群を抜くテレビ的知名度を存分に活かし支持なし層を幅広く取り込めていけるかがカギだろう。保守的志向の無党派層との親和性はあり、市長選でのジャイアントキリングがあった西宮市などの都市部での支持は確実に集めていきたいところだ。

勝谷陣営のベンチマークは田中康夫氏なのか?

ネット上の反応で散見されたが、勝谷氏の健闘があるとすれば、2000年の長野県知事選でまさかの初当選を果たした作家の田中康夫氏の「長野革命」がベンチマークになるのだろうか。勝谷氏の参謀がまさに長野革命の当事者だったこともあり、そのイメージは真っ先に浮かぶ。この時は長野五輪の後始末で財政が疲弊し、県政の隠蔽体質が露見するなど、5期20年続いた当時の吉村県政の弊害と閉塞感を打ち破ってほしいという民意をつかんだ田中氏が、吉村氏の後継指名の副知事を破って奇跡の勝利だった。

ただ、田中氏の初勝利の時は、知名度だけではなく、対抗馬の後援会有力幹部をはじめ、長野県内の「名士」が県政の停滞打破を願って、田中氏支持に回る造反が出た。連合などの組織的な支援もあり、選挙運動を展開する実働部隊がいた。今回、勝谷氏にはそういう「兵力」が今のところは見当たらない。その点でも、本家のトランプ陣営の選挙戦のごく初期を彷彿させるものがあるが、現時点で近いケーススタディとしては、田中康夫氏の初選挙よりも、青島幸男氏ではないだろうか。青島氏は「都市博中止」を掲げ、家族や知人など10人にも満たない体制で1995年都知事選を制すという日本選挙史上、最大の奇跡的成果を残した。対立軸を井戸県政に対してどういう形で仕掛け、なおかつ県民の心をスイッチさせるだけの説得性を持たせられるかどうかが第一関門だろう。

井戸県政を巡っては、友党の公明党からも昨年12月、「独断専行が見受けられ、職員の自主性が薄れている」という厳しい指摘があったようで(神戸新聞より)、突っ込みどころが満載なのはたしかだ。たとえば井戸県政が推進してきた神戸空港。勝谷氏自身もたしか有料メール日記の中で何年も前に神戸空港の問題点を指摘していたと記憶しているが、過去10年で一度も需要予測を上回ったことがなく、長年赤字状態(参照;産経新聞)。

選挙結果いかんにかかわらず、勝谷氏の発信力で現県政のかかえる「ブラックボックス」を追及し、劇場型選挙にできるのか。「尼のトランプ」の挑戦を楽しみにしている。


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新田 哲史
アゴラ編集長/株式会社ソーシャルラボ代表取締役社長/NPO法人ICPF 情報通信政策フォーラム理事

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