【映画評】ワイルド・スピード ICE BREAK

渡 まち子
ワイルド・スピード アイスブレイク

長い逃亡生活と最悪の敵との闘いを終えたドミニク・トレット(ドム)は、愛するレティや仲間たちと固い絆で結ばれた“ファミリー”を誰よりも大切に思っていた。そのドムが謎の女サイバーテロリスト・サイファーの側に寝返る。残されたレティたちは突然の裏切りにショックを受けながらもドム奪還を狙うが、犯罪のエキスパートにして史上最強のドライバーである彼にかなうものはいなかった。一方、ホブスはドムの裏切りによる任務失敗の責任をとって刑務所送りに。残された手段は、ファミリー最大の敵だったデッカート・ショウと手を組むことだったが…。

大人気カーアクションシリーズの第8弾「ワイルド・スピード ICE BREAK」。ポール・ウォーカーの突然の事故死という悲劇を乗り越えた前作は見事な出来だったが、本作の暴れっぷりはさらに上を行く。ドムの裏切りというまさかの事態には、もちろん深い理由があるのだが、仲間たちはドムをとことん信じて彼を取り戻すために奮闘しつつ、シャーリーズ・セロン演じる天才ハッカーが仕掛ける最凶のテロに立ち向かうというのが大筋だ。ワイ・スピらしい、あきれるほどブッ飛んだカーアクションが次々に登場する。キューバの公道での炎のカーレースに始まり、NYでは無人の車が大挙して暴走し高層ビルから車の“雨”が降る。クライマックスは、氷上で潜水艦や装甲車とのカーチェイスなのだから、もう、笑うしかない…というより、素直に興奮するしかない。ストーリーなどもうでもよろしい!と思ってしまう怒涛の136分では、今回共闘するデッカート役のジェイソン・ステイサムが最も美味しい役どころだ。ロック様演じるホブスとのガチンコバトルも用意されているが、この二人、いがみ合いながらも心の底では互いを尊敬していて、いいコンビなのである。毎回のお約束で、豪華な新キャラが登場するが、今回はあの名女優が意外な役で登場。ワクワクさせてくれる。本作は新たなワイスピ3部作のはじまりとなる作品だ。常識を超えた圧巻のカーチェイス、全員主役級の個性豊かなキャラクター、何よりも大切なのは家族。この3つさえ覚えておけばワイスピは楽しめる。ド派手なお祭りムービーなので、ぜひ映画館の大スクリーンで堪能してほしい。
【70点】
(原題「THE FATE OF THE FURIOUS」)
(アメリカ/F・ゲイリー・グレイ監督/ヴィン・ディーゼル、ドウェイン・ジョンソン、ジェイソン・ステイサム、他)
(ありえない度:★★★★★)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2017年4月28日の記事を転載させていただきました(アイキャッチ画像は公式Twitterから)。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。