知財本部・新情報財委員会、終了。

知財本部・新情報財委員会、終了。ビッグデータとAIの知財問題と格闘してきました。AI創作物や3Dデータ、創作性を認めにくいデータベース等の新しい情報財について検討を行ったものです。紛糾したものの、なんとか報告書がまとまりました。

データ利活用については、データ利用に関する契約の支援、健全なデータ流通基盤の構築、公正な競争秩序の確保の3点を具体的に進めることとしました。

AIについては、学習用データの作成の促進に関する著作権法 の権利制限、学習済モデルの契約による保護策や特許化の具体的な要件等を検討することとしました。

最後に座長としてコメントしました。

昨年の次世代システムでは、主に著作権領域について、AI生成物も含む論議をしました。かなり挑戦的な取組でしたた。しかし、それを通じ2点に直面しました。

1) AIやIoTによる第4次産業革命が国の中心課題となる中で、データそのものの扱いが戦略的に重要と認識されるようになったこと。

2) 著作権だけでなく、特許、営業秘密、契約など知財システム全般にわたる整理が必要となったこと。

その結果、今回も世界に先駆けての挑戦となり、現時点で到達可能な整理ができたと考えます。知財計画2017への反映を通じた国家政策にもちこみたい。知財本部での議論は毎年紛糾するのに、毎年うまい報告がまとまってよかった、となるんだが、報告ではいけない。実行が大事です。

この知財システムは報告書「はじめに」で指摘されているとおり、政府全体の取組とセットでなければならない。特に、IT本部が手がけるデータ流通のインフラ整備と対をなすもの。知財とITの政策連携を望むところです。

報告書「おわりに」には、日本から積極的に提言し、国際的な議論を起こしていくこと。知財制度の根本に立ち返って法体系を見直していくこと。を指摘しています。はじめに、おわりに、に強いメッセージが込められています。

しかし、この議論は専門的で地味なので、我々の議論や認識が十分に世の中に伝わっていません。

第4次産業革命、データ駆動型イノベーションにとって、知財システムを整備することが重要であり、今回こうした整理をした、ということをわれわれ自身がプロモートしていく必要があります。


編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2017年4月30日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。