このままでは日本の展示会市場が中国に無償譲渡される --- 本元 勝

2017年05月24日 06:00

オリンピック期間中の展示会使用が大幅制限される東京ビッグサイト(写真ACより:編集部)

東京ビッグサイトが、2020年東京オリンピックでメディアセンターとして使用される為、準備から撤退までを含め約1年半の間、大部分が使用できなくなり、この期間の商業展示会の開催が通常の約25%程度しか出来なくなるという。

まず、この展示会について簡単に説明すると、見本市ともよばれ万博の小規模版ともいえる。一般的には、産業や商品等カテゴリー別に企業を一堂に集めて、各企業の商品やサービスのお披露目と商談などが行われるイベントである。また、その歴史は古く、日本では1871年に京都博覧会が行われており、ドイツでは800年以上の歴史があるとも言われている。

さて、話しを今回の問題に戻すと、毎年開催してきたビッグサイトでの展示会の約75%が開催できないことへの善後策に関し、企業・団体側とビッグサイト側が現在継続した交渉を行っている。この間、団体側は展示会出展企業などから8万通以上の署名を集め、既に東京都知事に提出。さらに現在では合計14万通の署名が集まっているという。しかし、先月4月26日、3度目となるビッグサイト側からの説明会では、使用出来ない期間がわずかに短縮されただけに止まり、団体側が求める「例年通りに近い開催状況」には程遠い状況となっている。この問題解決が困難なところは、代替となる大規模施設が首都圏に存在しないことである。

現在、日本で行われている大規模展示会の殆どは首都圏にあるビッグサイトと幕張メッセの2つに集中している。これは、東京一極集中社会もあるが、最たる要因は展示会の出展者と来場者の双方が「展示会の規模」を求めているからに他ならない。

出展者にとって、5千人来場の展示会より、5万、10万人来場の方が、当然可能性が広がる訳であり、また来場者にとっても50社の出展よりも、300、500社出展に参加した方がニーズにマッチする確率がより上がるからである。展示会の価値とは、即ちスケールメリットなのである。

ちなみに、日本の展示会市場は世界に比べると小さく、また相当遅れていると言わざるを得ない。例えば、日本最大のビッグサイト、それに次ぐ幕張メッセは、日本では大規模展示場と言われているが、世界ランキングではビッグサイトが70位、幕張メッセは100位であり、世界では中規模のレベルでしかない。そして、世界の展示会場の面積上位10傑には、ドイツが4会場、次いで中国が3会場、そして、イタリア、フランス、アメリカが1会場ずつランキングされている。そしてこれらの会場は、なんとビッグサイトの2.5~5倍の面積を有しているのである。

また、アジアにおいてもビッグサイト以上の会場は多数存在し、韓国・タイ・シンガポールが1会場ずつ、そして最大の中国は12会場を有し、幕張以上で数えれば18会場ともなる。さらに、国全体としての展示会場総面積を比較すると、日本は先進国中最下位であり、インド・韓国と同規模の総面積しか有していないのである。

前述した理由からも、展示会とはその開催規模が極めて重要なのである。参加するならば、よりニーズにマッチする可能性が多い方を選択することは当然の判断なのである。

そして筆者は、この問題がオリンピック期間の使用禁止だけには止まらない可能性が高いことを危惧している。この期間に展示会に出展出来ない企業は約4万社程度と推定され、それら企業が国内の小規模展示会を代替選択する可能性は低い。展示会の価値を知るそれら企業は、大会場を幾つも有する中国を目指すことになるだろう。そして、桁の異なる大規模感を実感した多くの企業が、わずか3時間で行ける中国をその後も選択する可能性は必然ともいえるだろう。また、既に多くの欧米やアジア企業が中国の展示会を選択しているのも事実である。日本企業が外に活路を見出すことは大賛成である。しかし、4万社もの企業が短期間でまとめて流出するならば、展示会だけの経済損失では済まなくなるであろう。

企業にとって展示会は、参加すれば取引先や売り上げが確実に増えるようなものではないが、一度に何万・何十万人へ提案や露出が出来る貴重な機会なのである。また、現在、新興国や先進国の多くの国の政府・行政は、展示会の利用価値を新たな国際商取引の入り口として捉え、積極的に関与し支援を行っている。ちなみに、国内外の展示会における営業支援を行っている弊社においても、台湾・韓国・中国等の国や地方行政機関、また民間企業から展示会での支援を求めるオファーが毎月複数届いている。

巨額を投じことになるであろう2020年のオリンピック。
史上最大規模の訪日外国人数が記録されることも予想されるこの大きなイベントが、日本経済の転機となった素晴らしいイベントであったと未来で述懐されることを願う。

東京商業支援機構株式会社
代表取締役 本元  勝

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