「都20億円視察船、小池知事『見直しをしている』」(スポーツ報知)。ここには次のように書かれている。
東京都の小池百合子知事(64)は19日の定例会見で、都が約20億円で売買契約を結んだ視察船が「豪華すぎる」と批判されていることについて「見直しをしている」と明らかにした。「セレブも乗るかもしれないが、(一般客からの予約が)殺到し、クローズアップされている。それだけにワイズ・スペンディング(賢い支出)なものにしていく。精査中です」と述べた。
しかし少々解せない。小池都知事はこれまでも税金の「ワイズ・スペンディング」(賢い使い方)を主張していた。豊洲市場への移転可否、東京五輪・パラリンピックの会場や費用負担問題で結論をなかなか出さなかった姿勢とは大きく異なる。充分に精査したのだろうか。これが、ワイズ・スペンディング(賢い支出)なのだろうか。
クルーザー発注の理由は次の通りである。「現在の『新東京丸』が就航から33年たち老朽化したため新規発注の必要性があった」。老朽化すると新造しか手段は残されていないのだろうか。海上保安庁のHPには耐久年数延長の実情と「次のような記載」がある。
新造に多額の予算がかかるヘリコプター搭載型大型巡視船については、平成21年度から順次耐久年数を延長する工事を行い、新造に比べて半額程度の予算で、耐用年数を15年延ばすことにしています。2013年現在では「そうや」を含めて4隻が耐久年数延長工事を行うこととなっています。
2009年(平成21年)度予算で15年程度延命させるための改修工事の予算が計上され承認された。これによって改修が行われ、2010年に改修を終了し任務に復帰している。こちらが、任務復帰した、巡視船「そうや」(PLH-01)である。
実は、クルーザーを保有していたのは東京都だけではない。かつてクルーザーを所有していた、大阪市、横浜市、神戸市は 老朽化した時点で廃船にしている。クルーザーは自治体が所有していてもメリットは少ない。維持費、燃料費がかさむからである。
英国王室のウィリアム王子が来日した時には、一般の会社が所有する「リムジンボート」をチャーターしていた。ウィリアム王子はチャールズ皇太子とダイアナ元妃の長男で、王位継承順位はチャールズ皇太子に次ぐ2位。日本との文化、経済交流を目的に来日し、前知事の舛添氏がエスコートをしていた。当時の写真(産経ニュース)。
王位継承順位2位ということは、誰がどう考えてもVIPであることに間違いない。そのVIPが乗船したリムジンボートでは不足なのだろうか。
このリムジンボートをオリンピック期間中利用したらいったい幾らかかるのだろうか。利用金額は、人数に関わらず基本料金×時間で算出する。60分で2万円と仮定。24時間借りても48万円。オリンピック開催期間は17日と設定されているので、48万円×17日=816万円。仕様の変更などで多少の増減があったとしてもコストメリットは高そうだ。
そういえば、このリムジンボートの費用については追求されなかった。都議会でも問題がないとされたのだろうか。
また、一般的に、ビジネスの現場においてカタカナ英語の多用は好まれない。「クール・ビズ」までは良かったが、「ワイズ・スペンディング」はいかがなものだろうか。プレゼンの場面であれば、「日本語を知らない人」と思われてしまう危険性がある。都議会議員選挙の前に、カタカナ英語の是非についてアンケートをとっていただきたいと思う。
参考書籍
『蓮舫VS小池百合子、どうしてこんなに差がついた? 』 (ワニブックス)
尾藤克之
コラムニスト
<アゴラ研究所からお知らせ>
―2017年5月6日に開講しました―
第2回アゴラ出版道場は、5月6日(土)に開講しました(隔週土曜、全4回講義)。
講義の様子「アゴラ出版道場第2回目のご報告」