職業免許って必要なの?

池田 信夫

北里大学ホームページから

加計学園の問題がいろいろ騒がれていますが、獣医学部って6年もやるんですね。人間の病気ならともかく、動物の病気にそこまで勉強する必要あるんでしょうか。

規制改革するなら「特区」も「需給調整」も必要なく、獣医の免許を廃止して、だれでも動物の病気をなおせるようにすれば、市場メカニズムで需要と供給は一致するでしょう。

もちろん飼い主にとっては、自分のペットの病気を直してもらうことは大事でしょう。「悪い獣医にかかって、うちの犬が死んだら取り返しがつかない」という人がいるかもしれません。

そういう人は資格試験に合格した獣医にかかり、安いほうがいい人は無資格の獣医にかかればいいのです。免許は必要ありません。これはミルトン・フリードマンが1960年代に断言し、その後それに反論できた人はいません。

この違いは大事です。免許というのは無資格の業者の参入を禁止する制度ですが、ちゃんとした獣医かどうかを知るためなら、参入を禁止する必要はありません。無資格の獣医には「私は無資格です」という表示を出すことを義務づけ、消費者が選べるようにすればいいのです。

同じように、弁護士や税理士にも免許は必要ありません。自分で本人訴訟ができ、自分で税務申告ができるのに、その代理人に免許が必要だというのは理屈にあわない。資格試験を設けて無免許の「ディスカウント弁護士」も認めればいいのです。

それを使って訴訟に負けたら困ると思う人は、普通の弁護に頼めばいい。今は「非弁業務」と称して弁護士免許のない人の仕事の範囲を制限していますが、そんな規制は弁護士以外の誰の役にも立ちません。

ただし医師免許については昔から議論があります。医師を資格試験にすると、無資格の「ディスカウント医師」がたくさん参入して価格が下がり、隠れて手を抜くモラルハザードが起こる心配があります。

免許制度というのは、すべて供給制限のためのギルドなのです。ギルドには、いい面もあります。治療で手を抜いて患者が死んだら免許を失うようにすると、いい加減な治療はできません。これは免許によって保証される独占レントが、モラル・ハザードを防ぐ役割を果たしているのです。

でも獣医にはそんな心配はありません。犬や猫に人権はないからです。毎年8万3000匹の捨て犬・捨て猫などが「殺処分」されています。その中には、病気のペットに高い治療費をはらいたくないから捨てる人もいるでしょう。獣医の免許は廃止して、誰でも自由に動物の病気を直せるようにすることが、動物愛護にも役立ちます。