知的財産戦略本部検証・評価・企画委員会、産業財産権分野・コンテンツ分野合同会合。知財計画2017に向けた最終会合です。第4次産業革命の基礎となる知財システムの構築、データ・AIの利活用促進、コンテンツの海外展開促進と産業基盤の強化、映画産業の振興、デジタルアーカイブの構築。方向が定まりました。
データ・AIの利活用促進については新情報財委員会で激論を繰り返したので、親会ではさほど突っ込みはありませんでした。ベンチャーはデータが使えないのでオープンデータの仕組みを(奥山委員)、公的データの活用促進を(林委員)といった確認がされた程度です。
コンテンツについては多くの意見が提出されました。海外展開については、音楽業界は活発化しており、アニソンのデータベース作りに着手した(斉藤委員)、放送も順調であるが人材育成も兼ねて地方のクリエイター助成を望む(重村委員)といったコメント。
しかし海賊版対策は「いたちごっごが続いている」(野間委員)状況で、リーチサイト対策(斉藤委員)、サイトブロッキング(林委員、宮川委員)を求める声がありました。川上委員は、違法DL対策はサイトブロッキングしかなく、世界的にも導入が進んでいることを力説しました。
アーカイブに関しては、分野横断的な利活用の効用を具体的に見せるべき(木田委員)、効果がわかりにくいがAI時代のインフラであり、AIデータも集積すべき(瀬尾委員)という意見がありました。
迫本委員は、省庁タテ割りと単年度予算というネックを打破すべきと主張。内山委員は、知財戦略の成果は現れてきているので、食べられるエコシステムといった次のアジェンダを考える時期、とコメント。いずれも賛同します。2020年に向けてどうとらえるか(野坂委員)、新アジェンダの設定時期です。
宮河委員が、キャラとお菓子の合体がコンテンツと非コンテンツの連携のはしりで、日本独特のビジネス。マーチャンダイジングがあるから海賊版も作られる。小学校からコンテンツに親しませるなどの長期的な取組が大事、と指摘。ですね、施策の長期・短期を意識せねば。
喜連川委員:問題を指摘しても議論に2年かかっている。未来の変化に早く気づく仕組みを国に導入し、政策をリアクティブからプロアクティブにすべし。何が起きるかウォッチする体制を作るべし。・・そうですね、こういう大きな構えが次のアジェンダなのかもしれません。
閉会にあたりぼくもコメントしました。
「コンテンツ分野は今回、映画タスクフォースを組んだりして新しい論点に挑むとともに、海外展開やインフラ整備の施策も厚みを増しました。
特に今回は「新情報財」としてデータやAIの利活用促進策に挑戦しました。昨年度はAIのコンテンツについて議論したが、今回は産業財産権と合体して審議。著作権と産業財産権の関係者が1テーマで一緒に戦略を練るという、今後の知財戦略のモデルとなる枠組みができました。
そこで2点。重要なのはこうしてできあがる計画を実行すること。政府が実行していくことを、委員としてチェックしていくとともに、その成果を対外的にプレイアップしたい。もう一点は、2020年に向けた次のアジェンダを作りたい。引き続きよろしくお願いします。」
編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2017年6月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。