世界と隔絶した日本のCEO意識

山田 肇

友人から「第20回世界CEO意識調査」という資料が公表されていると教えてもらった。PwC Japanが発表した資料は確かに興味深い。

「現在の経営環境を前提に、新たな機会を活用するために以下のうち最も強化したい項目を一つ選んでください」という質問に対して、世界のCEO(1379名)は第一に「イノベーション」を選択し、その比率は23%だった。それに続くのが、「人材」と「デジタル及びテクノロジーに関する能力」のそれぞれ15%。

これに対して日本のCEO(110名)では「イノベーション」が32%に増加するが、「人材」が30%で「デジタル及びテクノロジーに関する能力」はわずか4%である。世界のCEOはイノベーションを人材とデジタル技術で起こそうと考えているのに対して、日本のCEOは労働集約型の事業でイノベーションを起こす。情報社会において何ということか!

日本のCEOのデジタル音痴は群を抜いている。紙メディアよりもデジタルメディアを利用している割合は、世界が69%で日本は31%。高度なデジタルスキルがあると自覚している割合は、世界が55%に対して日本は29%に過ぎない。個人的な買い物はオンラインでという割合ですら、世界40%に対して日本は21%と低い。

デジタル音痴だから、今後の経営での重要性にも気付けない。それが実態である。デジタル技術の新しい活用法はスタートアップ企業から生まれることが多いが、一年以内に「起業家やスタートアップ企業との協業」を予定しているCEOは世界で28%(西欧では39%)に対して、日本は12%と半分以下になっている。

「今後12か月の自社の売上の成長の見通しについてどれくらいの自信をお持ちですか」という質問に対して、世界では38%のCEOが「非常に自信がある」と答えているのに対して、日本のCEOでは12%である。今は株主総会シーズンだが、デジタル音痴で自社の経営に自信を持てないCEOには退場を求めるしかない。