責任追及を推奨するユダヤ式会議とはどのようなものか

尾藤 克之

写真は立川氏(中京テレビ・キャッチ!/2017年6月9日)

「ユダヤ人」と聞いてどのような印象を持つだろうか。「非常に頭が良い」「勤勉で真面目である」「金儲けが上手い」「合理主義」など様々なイメージがあるに違いない。では、彼らの仕事や思考ついてどこまで知っているだろうか。

今回は事業家でIT会社を経営する、立川光昭(以下、立川氏)の近著『ユダヤから学んだモノの売り方』(秀和システム)を紹介したい。ユダヤ系の商社に勤務した経験のある立川氏がユダヤ人の仕事振りを詳細に分析している点が興味深い。本書はアゴラ出版道場でもお世話になっている、秀和システムの田中氏が編集を担当している。

日本以上に会議に時間をかけるユダヤ人

――日本でも会議の効率性が求められている。特に長時間にわたる会議をムダな時間と考えるビジネスパーソンが多いが、ユダヤ人はどのような会議をするのだろうか。

「もう少し、ユダヤ流の仕事の進め方についてお話ししましょう。日本で『効率的』と考えられているビジネスのやり方は、次のようなものだと思います。
・ムダな会議に時間を使わない
・『誰のせい』という責任追及に時間をかけない
・考えるよりも、まず行動しろ
会議についてですが、日本だと会議に時間を費やすのはよくない、と昨今では考えられていると思いますが、ユダヤ系商社ではこれはまったくの逆でした。」(立川氏)

「とにかくやたらとミーティングが多く、しかも問題が起こるたびに『誰が悪いんだ』『何が原因なんだ』と、犯人探しを執拗なまでに繰り返します。」(同)

――犯人探しは組織内に対立を生みやすい。また、対立を生めば仕事がしにくくなり、コミュニケーションを阻害する危険性がある。日本人は犯人探しをおこなうのではなく、対立を生まずに玉虫色に決着させることが多い。

「確かに仕事上のボトルネックを解消する、行き詰まったプロジェクトの軌道修正をするなど、ときには犯人探しを厳格に行なう必要はあるでしょう。しかし、彼らの場合は、どんな小さなことであっても責任追及をしないことには、先に進まないのです。そのたびに会議が繰り返されますから、正直、面倒くさい以外の何ものでもありません。」(立川氏)

「しかも、会議の途中であっても、何か別の問題が生じれば、さらなる責任追及がそこからはじまります。」(同)

――それはどのようなものだろうか。

「たとえば緊急な仕事が入り、私が会議に5分遅れたとします。すると会議はその場で中断され、『なぜ君は遅れたのだ』と追及がはじまります。『緊急な仕事が入って……』と答えれば、『どうしてそんな緊急の事態が起こったのだ』『その原因はお前にあるのか。それとも先方にあるのか』という始末でした。」(立川氏)

「とにかく、実務的な仕事で仕方なく遅れようとも、責任の所在や原因を解明させない限り、彼らは納得しません。『ここを放置したなら、あとで取り返しのつかない問題になる』と考えるからです。」(同)

些細な問題でもハッキリさせる理由

――ところが問題の原因追求の観点でみれば意味があるのことが理解できる。

「仕事において、些細な問題でも、ハッキリさせなければいけない問題は、どうしても発生するものです。しかしながら、『誰が悪いか』という議論に終始しても責められる人間が辛いだけで、仕事にプラスにならないことは往々にしてあると私は思います。こうしたユダヤ流の会議の進め方は、日本では好まれないでしょう。」(立川氏)

「ただ、彼らの『完璧さ』に対するこだわりは見直すべきところだと思います。よく日本では『完璧にこだわるな』と言いますが、彼らは結果よりも、『ビジネスプランの完璧さ』にとことんこだわります。だから完璧な計画が描けるまで、彼らはどんなに時間がかかろうが、徹底的に考えることにこだわるのです。」(同)

――世界的な成功者や有名人が、ユダヤ人から次々と誕生する点は、この辺りに理由があるかもしれない。小さなことであっても、その原因をとことん追求する。そうした些末なことを見逃さない姿勢が、大きな成功をつくるのかもしれない。ユダヤ人の仕事振りに関心がある人には参考になるのではないかと思う。

参考書籍
ユダヤから学んだモノの売り方』(秀和システム)

尾藤克之
コラムニスト

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