取ってつけた屁理屈で自爆した前川元事務次官 --- 山田 高明

寄稿

出典:「(全録)前川氏、FNNのインタビューに応じる」から

加計学園の獣医学部新設の件で「少子化でニーズが減っていくから新設不要」と主張しているのが獣医師会。また、そこまで明言していないが、「獣医師がどれぐらい必要なのか検証したのか」と疑問を呈することで、暗に同様の主張をしているのが前川元事務次官。

だが、語るに落ちた、とはこのことだ。

四国の関係者は「今足りていない」と言って困っているのに、そのような論理で新設阻止を正当化できるなら、保育園も増やさなくていいではないか。

問題は今(そして当面)、地域によって足りず、公益が毀損されている状況だ。監督官庁が改善しないなら、誰がやるのだろうか(まあ、だから内閣府がやったわけだが)。専門人材の過不足に柔軟に対応することが文部行政ではないのだろうか。

それに、新設に際して「獣医師の需給について検証したのか」と問うのであれば、これまで新設を認めてこなかった方針に対しても同じ検証を求められるはずだ。

そうすると、文科省の公表した例の内部文書は、むしろ前川氏へのブーメランとなるのではないか。というのも、文書には文科省側の記したこんな記述があるのだ。

上の記述は、「文科省の手元には獣医師の需給動向に関する資料がなく、今回の新設検討段階になってようやく農水省にそれを問い合わせた」という事実を示唆している(しかも農水省も新産業でどれだけ獣医師のニーズが生じるかは未調査らしい)。

すると、それまでは需給にとりたてて関心を持っていなかったわけだ。ならば文科省は今までいったい何を根拠にして獣医師を増やすことを拒んできたのか、という疑問が沸いてくる。こうなると、獣医師会との政治的な関係を疑われても仕方がない。

つまり、業者と癒着していたのは前川氏ら文科官僚だった、ということになりはしないか。これは証人喚問して問い質したほうがいいのかもしれない。

だいたい“検証”も何も、四国側はずっと足りないと訴えてきた。文科省はその「現場の声」を15回も撥ねつけてきた。これが公益に奉仕する役所のやることか。

結局、前川氏はさも公益に基づいて政権の姿勢を糾しているようでいて、実際には自己保身のために詭弁を弄しているに過ぎない。

もちろん、既得権益者側の反論のための反論とはいえ、少子化で将来的にニーズが減少し、中長期的には獣医師が過剰化する懸念はある。だが、言ったように、それこそ監督官庁の出番ではないか。定員の調節で柔軟に対応していくなど、いくらでも知恵はあろう。だいたい、それを“行政”というのではないだろうか。

(*全体が長い文章なので、以上はその一部を抜き取ったものです)

(フリーランスライター・山田高明 個人サイト「新世界より」