小池悪運の大勝利。安倍首相は蓮舫と差がなくなるまさかの展開?

2017年07月02日 20:01

今回限りは、明暗が別れた2人だが…(首相官邸サイトより)

たった今、NHKの都議選開票速報を最終確認して投稿ボタンを押した。まあ、情勢については選挙中の報道、そして各陣営の独自調査を仄聞していたので、ほぼ書き上げていたわけだが、ほぼ予定稿通り、都民ファーストの会は第1党になるどころか、公明党と合わせて都議会の過半数を大きく超える雲行きだ(午後8時現在)。自民党の議席は「過去最低」の大惨敗の情勢という。今回の都議選が、政局にあまりにも大きすぎる意味をもたらすのは必至だ。

小池陣営ピンチから一転…1か月で様変わりした政局

それにしても、小池知事は「悪運が強かった」というしかない。早川さんが指摘したように、この1か月であまりにも政界の風景が一変した。豊洲市場問題の迷走と都外の五輪会場負担を巡って、小池知事に「決められない知事」のレッテルが定着しかけ、6月の上旬まではたしかに効果はあった。

根強かった小池人気がじりじり落ち、組織力で劣る都民ファーストの脆弱性もあって、渡瀬さんがFLASHで予想したように小池、自民、公明の「痛み分け」という展開は十分あり得た。

その時は、都民ファーストが第1党を窺うところに躍進し、公明と合わせてぎりぎりで過半数を制したとしても、自民党の負け数が40台前半に踏みとどまるかどうかに注目していた。というのも、「政変」次第で、公明が再び小池から自民に寝返るという「自民+公明」の“逆過半数” となり、都民ファースト側が切り崩される可能性も考えられた。その一環で、不仲が噂される都民ファースト内の「野田特別秘書VSファーストペンギン3人集(おときた、上田、両角の各都議)」の内部抗争も表面化し、小池派、反小池派ともに不毛な政争劇に陥ることで、この都議選が「勝者なき戦い」に陥るのではないかと予期し、私はベストセラーにひっかけてこの都議選を「応仁の乱」と評したこともあった。

「加計」「豊田」…相次ぐ敵失。小池氏の悪運の強さ

“倒閣のトリックスター”となった前川前事務次官(BSフジより)

しかし、その流れを全て覆したのが都議選リング外からの乱入ともいえる加計学園問題の勃発だった。

春先の森友学園問題と同じく一蹴できるかと思いきや、前川氏が出現。文科省前事務次官が公然と反旗を翻したインパクトは、同じトリックスターでも、森友の籠池前理事長とは役者が違った。そして「安倍憎し」の左派メディアが一気に勢いに乗った。週刊誌は面白ければなんでもありなので、反安倍の流れに加担。折悪く、“共謀罪”(テロ等準備罪)の採決という可燃性の高い燃料も投入。しまいには、豊田真由子のパワハラ音声というワイドショー受けするネタも自民のトドメを刺す形で飛び出した。2012年の政権再交代以降、安倍政権の安定化を支えていた“消極的支持層”の離反を一気に招き、まさに東京都全体がスイングステートと化す様相となった。

そういうわけで、当初は自民党に議席数で及ばないはずだった小池知事・都民ファーストの会のバカ勝ちというのは、明らかに「敵失」に過ぎない。まさに、小泉政権退陣後、第一次安倍政権→福田政権→麻生政権と失策を重ねた末に、棚ぼたで政権をゲットしてしまった民主党政権と同じような展開になりはしないか不安は残る。

都民ファーストの会は、情報公開推進や議会改革などは好感が持てるし、政策的発想はイノベーション分野などについては良い意味での若さを感じる。しかし政治経験・人脈は相対的に明らかに劣る。頭目である小池知事とともに、オリンピック・パラリンピックを大過なく成功させられるか。築地再開発との併用という大風呂敷を広げてしまった豊洲市場問題、そして肝心要の「After 2020」の少子高齢化、首都直下地震対策もろもろ、きちんと進めていくことができるのだろうか。

そもそも、「東京大改革」とは一体なんなのか?維新の会が大阪で目指した大阪都構想のような具体的なゴールが見えない。都議会で知事に睨みを効かせるドンも勢力もいなくなった今、変革へのわずかな期待以上に、さらなる混迷の入口に見える。

連合と組んだことで職員の待遇見直し・天下り規制などもおよそ期待できそうにない(むしろ、このことが民進党からの合流組と、旧みんなの党系や希望の塾系との内部抗争に発展するリスクも孕む)。下世話な予測では、新人議員たちの脇の甘いスキャンダルが早晩週刊誌で取り上げられる可能性もある。

自民都連と維新は虚心坦懐に敗因分析を

東京ローカル政局に関して付言しておくならば、自民党都連・都議会自民党も、維新もなぜ負けたのか率直に敗因を分析すべきだ。真珠湾で日本軍の航空奇襲に敗れた米軍は、ゼロ戦を入手して徹底研究するなどして太平洋戦線での反攻につなげた。一方、日露戦争で勝利した日本軍は、1930年代になっても19世紀型の歩兵突撃主体の陸戦を続け、ノモンハンでソ連軍の戦車主体の機動戦に惨敗した。

いまの自民都連は、米軍ではなく日本軍になってしまうのではないかという不安がある。国政の自民党は2009年の下野後、ネット選挙導入を敬遠していたような古参議員が相次いで引退し、学生時代からネットを使ってきた世代を含む若手中堅への世代交代が進んだが、都議選は中選挙区のため、柔軟性はあるが、組織力の劣る若手議員の落選が相次ぎ、“A級戦犯”のはずのベテラン議員が組織力によって大量に残りそうだからだ。昭和型の政治、選挙を繰り広げるベテラン勢に対し、複数の若手地方議員が筆者に不満を漏らすのを聞いてきたが、世代交代・新陳代謝が進まない恐れを感じる。

次の都知事選、都議選まで時間は数年ある。辛口で申し訳ないが、これを生かすも殺すも自分たち次第だ。小池氏に対して嫌悪感はあっても、一度、感情を手放し、この現実をしっかりと見つめる。なぜ都民の支持が離れるようなことになったのか、どこに小池氏に“付け入れ”られる問題があったのか。冷静に分析して戦略を立て直せるかどうか。それをせずに、小池都政の目先の粗探しばかりをしているようでは、野党転落後に政権失敗の反省が足りない国政の民主党(現民進党)のように、有権者の支持を簡単に戻り戻せない恐れがある。

維新についても、反省・総括の必要はある。なぜ東京進出にことごとく失敗しているのか。今回の選挙戦では当初、SNS発信の低調さも目に余ったが、除名された三鷹市議が指摘したような課題も含めて、もう一度虚心坦懐に謙虚に見つめ直し、都民の政策ニーズ調査・分析からメディア対策まで再構築していく段階だろう。

「改憲」表明からガチンコの政治闘争に

政権運営が狂い始めるきっかけとなった(?)憲法改正の意向表明(読売新聞より)

さて、昨年の都知事選に続く「第二次小池ショック」が、足元の揺らぎ始めた安倍政権の寿命を大いに縮めるシナリオが現実味を増してきた。二階さんや麻生さんが苛立つように、左派メディア&週刊誌によるネガティブ報道は行き過ぎの感もあるが、党内で「安倍おろし」の風をいま本格的に吹かせることが、日本のためになるのかどうか。すでに石破さんは安倍批判の発信が精力的になり、リベラル派の名門、宏池会領袖である岸田外相も、憲法改正が直ちに必要ないとの見解を公然と示すようになった。安倍政権への風圧が強まるほど、党内では、冷静に考えることなく、浮き足立つ人たちが増えそうな懸念を感じる。

振り返れば、朝日新聞を始めとする左派メディアが、加計学園問題で「倒閣」キャンペーンを本格化させたのは、5月3日に2020年の憲法改正を目指す意向を表明してからだった。その時も予測したように、日本型リベラル勢力にとっては、護憲はレゾンテートルに関わる問題であり、倒閣をガチで狙い、牙を向き始めた。

ここまで、安倍政権はメディア世論対策は、それなりにうまくやってきたはずだが、加計学園問題では初動対処で鎮火できず、霞ヶ関に文科省という「抵抗勢力」が露骨に造反。前次官が公然と面従腹背の旗印を掲げ、職員が野党やマスコミなどに内部文書を流すという展開に。朝日新聞も追及していた、私大への天下り問題は実質的に棚上げになり、文科省とリベラル勢力の「利害」が一致。政権側は完全に守勢に立たされている。

安倍政権としては、早々に内閣改造で稲田氏などの問題閣僚を交代して急場をしのぐしかないだろう。しかし、衆院選の任期は来年12月まで。任期満了近くまでの「追い込まれ解散」となれば政権転落はなくても、議席数の大幅減となって、責任論が浮上する恐れは高い。

となると、逆襲のためには、ここぞというところで「伝家の宝刀」を抜くしかない。それをちらつかせるだけでも党内の雑音を封じる効果があるが、実際に抜かずの宝刀になったのでは抜本的に局面は変えられない。それがいつなのか、秋から来春にかけての政局で最大の見せ場になるかもしれないが、自公維3党合わせて3分の2を確保できる見通し、党内の敵対勢力、野党や小池新党国政進出の動向、そして、残存する政治的体力のバロメーターとのにらみ合いになる(もしかしたら北朝鮮情勢などの変数は加わるかもしれないが)。

混迷深まる与野党の夏

それにしても1か月前まで、都議選の結果が、野党第1党党首のクビの想定を超えて、一国の首相を瀬戸際に追い込むなど、誰が予想していただろうか。拙著のタイトル風に言えば、「安倍VS蓮舫、まさか差がなくなっちゃうのか?」という驚きを禁じ得ない。

以前は、都議選での「小池圧勝」で民進党が惨敗し、蓮舫執行部の退陣が囁かれていた。そして、櫛の歯が抜けるように離党していく動きがやがて党分裂→野党再編への機運につながるという話ばかりがクローズアップされていた。

もちろん、このシナリオは安倍政権の動向に関わらず、今年12月の新党結成のシーズンに向けて水面下の動きは激しく加速していくだろう。すでに合流している感たっぷりの長島さんや若狭さん、そして維新を除名された渡辺喜美さんらキーパーソンの動きや、民進党内の離党予備群の動向も含めて、目が離せないことに変わりはない。

しかし、衆院解散のカギを握るのは政権与党トップの安倍首相であるのは間違いない。このまま退却を余儀なくされるのか、それとも押し戻す展開があるのか、そして2020年の憲法改正実現への筋道は打ち立てられるのか……国会は閉じたものの、政界は与野党ともに今年の夏は近年にない緊張感が漂う。政界の混迷は一層深まっていきそうだ。


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新田 哲史
アゴラ編集長/株式会社ソーシャルラボ代表取締役社長/NPO法人ICPF 情報通信政策フォーラム理事

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