日銀 vs 債券市場参加者

日銀で行われた第5回「債券市場参加者会合」の議事要旨が5日、日銀のサイトにアップされた。この中から市場参加者による「債券市場の機能度・流動性についての見方」を見てみたい。

「イールドカーブ・コントロールの導入以降、長期ゾーンを中心にボラティリティが低下し、価格変動に対する安心感が広がっている。」

最初はひとまず日銀の政策の効果について好意的な意見が載せられているが、

「ボラティリティの低下は、一見機能度改善にも見えるが、実際には取引量の減少や既存の市場参加者の退出という形で機能度の低下に繋がっている。」

こちらが本音の部分といえよう。取引量の減少も無視できないが、既存の市場参加者の退出は、今後の市場の大きな不安要因となりかねない。

「現在の市場は、日本銀行のコントロールの下で安定しているが、金利水準もボラティリティも極端に低い市場環境の下で、これまでの日本国債のプレーヤーが市場から退出するなど、参加者層が薄くなっている。」

金融市場への直接参加者は金融業界全体からみるとそれほど多くはない。しかもここでは経験が重要な要素となる。日銀の異次元緩和は債券市場の参加者を減らすばかりか、金利が動くという経験もさせなくさせている。このため下記のような意見も出ている。

「中長期的に金利を市場に委ねるとなった際に、市場参加者の厚みが足りないが故にボラティリティが急に上昇することを懸念。参加者層の厚みや多様性も市場機能の一つだと思うので、引き続き留意して欲しい」

今の日銀にとって金融政策の正常化の動きは「他人事」かもしれないが、政権の行方等次第で状況も変わりうる。また、何かのきっかけで金利が大きく動く懸念は現在の日銀のコントロール下であっても存在する。

「良くコントロールされていると思うが、一方で債券市場の価格発見機能は失われている。株価は上昇し、日本経済の状況も良くなっているなかで、長期金利が殆ど反応しないという状況は健全ではない。」

このあたりの歪みも知らず知らずに蓄積されている可能性がある。価格発見機能は失われているのではなく、日銀が力尽くで見せなくさせているだけである。

「現状、市場機能が低下しているとすると、調節運営のなかでもう少し変動幅を許容するようにしないと、実際にマーケットで金利が動き始めた際に市場が対応できないのではないかと危惧している。」

少しでも市場参加者の経験を積み上げることも大事であり、日銀もある程度、長期金利の変動幅を許容したほうが、マーケットの機能は多少なり回復しよう。日銀はマイナス金利を残したいのであれば、長期金利の目標値をもう少しフレキシブルにしてプラス0.5%あたりまで許容するなりすれば、債券市場の機能がある程度改善してくるのではなかろうか。本来市場に委ねていたはずの長期金利である以上、変動幅の許容範囲をある程度大きく持っても問題はないのではなかろうか。それが今日の日銀の国債買入等で試される。


編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2017年7月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。