音楽の都ウィーンも日本と同様、猛暑に襲われている。この1週間、日中は34度から37度、早朝も20度を超えるといった日々だ。暑いだけなら何とか過ごせるが、湿気もある。20年前までは湿気などなかった。ワイシャツ一枚で数日過ごせた。空気は乾燥し、清々しかったからだ。それが変わった。ここ10年余り、日本と同じような気候で高温で湿気が多い夏の日々が続く。
もともとは猛暑とは縁が少なかった国だからクーラーの普及率は悪い。ここにきてやっと市電にもクーラーが入ったが、古い市電は昔と同様、クーラーはないので、窓を開ける以外に対策の余地はない。
当方の日課は午前4時前に起床、簡単な朝食後、仕事を始める。午前9時頃になると、部屋の全ての窓を閉め出す。熱風が部屋に入らないようにするためだ。そして頭がまだ回転している時にその日の仕事をほぼやり遂げる。
昼食を終える頃になると、気温は30度を超えている。もはや外出できない。仕事もはかどらないから、ベットに横になり、タブレットで情報をチェックする。1時間ほど昼寝ができれば最高だが、むし暑いので眠ることはできない。タオルを水に浸し、それを頭に巻き付ける。タオルが乾くとまた水に浸す。その繰り返しだ。少々、原始的なやり方だが、効果はある。小さな扇風機を回すよりも涼しい。
暑さに耐えられない人はクーラーの入った喫茶店を見つけ、一杯のコーヒーを飲みながら日が陰るのを待つ以外にない。ラジオからは「必要がない限り、外出を控え、水分は欠かさず摂るように」と市民に呼びかける声が流れる。
当方は6年前、「ウィ―ン市で今夏、最も涼しい教会」(2011年7月16日参考)をこのコラム欄で紹介したことがある。ウィ―ンに観光にきた日本人旅行者向けの情報だった。
「外気温が35度でも教会内は24度前後、カタコンべ(地下墓地)まで足を伸ばせば、10度以下と涼しい。暑い日の観光では、定期的に最寄りの教会に逃げ込むことを推薦する。罪からの救いは分からないが、暑さから一時的としても解放されることは間違いない」と書いた。教会関係者は、「祈りのためではなく、涼しさだけを求める市民にはアウグスティナー教会(Augustinerkirche)か、ルプレヒト教会(Ruprechtskirche)を推薦します」と親切に助言してくれる。
ウィ―ンの仕事部屋でタオルを巻きながら仕事をしていると、クロアチアのアドリア海岸で夏季休暇を楽しんでいる友人夫妻から観光客で溢れている現地の写真が届いた。今夏はイスラム過激テロ事件が多発するエジプトやトルコを避け、クロアチアに海水浴を楽しむ旅行者が殺到しているという。
オーストリアの日刊紙によると、同国で最も涼しい場所はヒンターブリュ―ルの地下湖ゼーグロッテで9度という。同湖は第二次世界大戦終戦直前、ヒトラー・ナチス軍が地下の戦闘機製造工場だったところを爆発したが、その後に誕生した欧州最大の地下湖だ。歴史を学びながら、涼しさを満喫できるというわけだ。
わざわざ地下湖ゼーグロッテまで足を延ばすことが出来ない読者には、やはり冷たい水で浸したタオルを頭に巻いて猛暑を凌がれることを推薦する。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2017年8月5日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。