世界最大のVRイベント「LAVAL VIRTUAL」


フランス、LAVAL。パリからTGVで2時間、人口5万人の落ち着いたロワールの町。ノルマンディーとブルターニュの結節点。カマンベールの宝庫です。日本でもみかける「PRESIDENT」はここで作ってるそうで。

世界最大のバーチャルリアリティ大会「LAVAL VIRTUAL」に参加しました。この小さな町に、1万人の参加者が集います。8,000㎡の会場いっぱいに、240の出展者。20年続く、名門イベントです。

責任者(Director General)ローラン・クレティエンさんによれば、参加者の60%がフランスで、その多くが地元のかたがた、20%が欧州、残りはその他の国々から。地域と国際のバランスがいい具合です。一般参加日には、大勢の親子連れが押し寄せます。

自治体、スポンサー、研究者、ベンチャー企業、学生、そして一般参加者のバランスがいい。運営は非営利で、地元自治体、スポンサー、参加者の入場料からの収入でまかなう。公益と商業のバランスも勉強になります。

LAVAL市が運営し、スポンサーには国鉄、通信、電力、農林中金、通信などインフラ企業が並びます。VRという先端技術が町づくり行政に意味を持つだけでなく、多様な分野に溶け込むインフラという意識が見えます。

ジャック・シラク大統領時代に、この地域の知事も務めた産業大臣がデジタル技術での町おこしを図ったのがスタートだそうです。このイベントを開催するだけでなく、VR関連の企業や研究所、大学機関などを誘致し、それを育てていったといいます。

立ち上げに際しては日本の岐阜を参考にしたそうです。梶原知事時代のソフトピアジャパンやIAMASのことですね。今度は日本がLAVALを都市づくりの参考にしたい。ポップテック特区CiPとも連携できないか、相談を持ちかけてみます。(ここはアンリ・ルソーの生家だそうです。)

今回ぼくは、HADO、キャリオットをはじめとする超人スポーツで参加しました。

VR/ARのHADO、大ウケ。ヨーロッパでも羽ばたいてもらいたい。ぜひよろしくお願いします。

超人スポーツはRevolutionコーナーにブースを構えました。コーナーのチェアを務める神奈川工科大学の白井暁彦先生に大変お世話になりました。

Revolutionコーナーは「トランスヒューマニズム++」がテーマ。スポーツのほか、医療、教育、育児、宇宙開発などVRの応用を示しました。ぼくもVRは拡張性が問われる段階だと考えます。その点、このコーナーで日本が高いプレゼンスを見せていたことに希望を抱きました。

ドローンサッカー。ドローンからボールの映像をプロジェクションするとともに、靴の位置をセンサーで測り、屋内外どこでもサッカーができる仕組み。ロシアから。

Table Tennis Trainer。ドイツから。MITメディアラボ石井教授のピンポンプラスを思わせる超スポ系だが、ラケットにタグがついていて、ユーザのプレイスタイルを分析し、トレーニングメニューを出すという。プレイするフランス人がみな卓球がヘタでいかんわ。ドイツ向きなのかのう。

Real Baby Real Family。育児体験VR、愛を伝えるVR。ユーザの顔から赤ちゃんの映像を作り、だっこしたりあやしたりミルクを与えたりゲップさせたりするうちに、愛情がわいていく。出生率向上に一役買うか?白井研究室の出展。ぼくも改めて子育て体験をしてみました。

Mixed Reality Surgical Navigation。患者のCTで血管・内蔵などの映像を作り、ホロレンズでその人体の中に入ってつまんだりする。映像は30分でできるので、低コストで外科手術に使えるシステム。
愛知工科大学板宮朋基先生の出展。

Mitsu Domoe。立命館大学大島登志一先生。小学校の生物の授業で、三種の別パラメータを持つ生物の生態系をシミュレートする実験器具+ディスプレイ。HMDをつけず、映像を共有する仕組みはますます重要になると考えます。

鳥や雲や、夢さえも、つかもうと、している。
LAVALの人々は、20年も前から、若者は物心ついたころからVRが身近にあり、ごく自然に使いこなそうとします。ステキ。

「ラストラビリンス」という日本の作品。囚われの少女を、HMDでバーチャル空間の中に入ったぼくが行動を共にして、助け出す。
ぼくも自然に使いこなそうと思って試したら、少女が無残にも殺される結末となり、想像以上にショックでした・・。

おおっと声が出る日本の往年のマニアックなゲーム機やゲームソフトが実機として触れる大きなコーナーもあり、ゲーム文化とVRとの地続きな関係を確かめるとともに、日本の果たすべき役割を改めて考える次第です。
(こういうコーナーは日本の展示会でこそ用意できませんとね・・。)

ローラン・クレティエン代表は地元紙に、過去最大のイベントとなって満足だが、来年はもっと会場を広げると話しています。拡大していきますね。

リ・ド・ヴォー(仔牛の胸腺)を喰らいつつ、LAVAL VIRTURLと超人スポーツのコラボ、LAVALとポップテック特区CiPのコラボとを考えることとします。ではまた。


編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2017年8月31日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。