『今後の基準認証の在り方(案)』への意見

産業構造審議会の答申案『「今後の基準認証の在り方-ルール形成を通じたグローバル市場の獲得に向けて-」がパブリックコメントにかけられている。

日本工業規格(JIS)の対象は工業製品に限られるが、新たにサービス分野などにも広げて名称を「日本産業規格」に変更するというのがもっとも重要なポイントである。国内標準の対象を工業製品に限るとしてきたわが国は、先進各国の中でも特異な存在で、各国ではサービス標準を当たり前だったので、答申は正しい方向を向いている。

介護やカーシェアリングというようにサービスを対象にすると、福祉行政を所管する厚生労働者や交通行政を所管する国土交通省と標準化担当の経済産業省の間で棲み分けの問題が起きる恐れがある。

今は、厚生労働省や国土交通省は所管する行政に関係する規格を独自に『技術基準』という名称で定めている。日本工業規格とは別体系なので、個々の行政に通じていないと探すのもむずかしい。

経済産業省、厚生労働省、国土交通省等どの府省も、統一された形式で「日本産業規格」を定めることができ、統一した番号体系で管理され、一度に検索・参照できるというように改善すべきではないだろうか。

答申案が他に強調するのは、官民が連携して標準化に取り組むべきということである。かねてより官民連携の強化は叫ばれてきたが、なかなか実態が伴わない。

「民」といっても業界には大企業から中堅・中小企業までが存在する。外資比率も異なる。それにも増して個々の企業の経営戦略は異なるので、一致団結して取り組むというのは、「官」の声がけがあったとしてもむずかしいからだ。そのうえ、標準化活動には5年、10年という長期の関与が必要で、その間は費用が発生するだけ。標準化活動に社員が参加するのは「逸失利益」に相当する。

答申案に抜けているのは、標準化のプロを独立コンサルタントとして企業は必要に応じて彼らに業務発注するという形態である。シリコンバレーのIT企業や中国等の新興企業も実はこの方法を利用している。独立コンサルタントは標準化プロセスに通じ人脈があり、委託元の企業の要望に沿う形で標準をまとめることができる。発注側には社員という貴重なリソースを使わなくて済むというメリットをもたらす。

中途半端な官民連携よりも企業が自らの意思で標準化活動に投資することを促進するほうが適切である。答申案には標準化人材の育成が謳われているが、コンサルタントの活用にも大胆に踏み出すべきである。