軽視できない!小池都知事の元に「いざ、鎌倉へ」

「希望の党」公式動画より

アゴラ新田編集長の投稿(侮れないぞ!小池百合子の“隠し芸”注意報発令なう)でも指摘しているが、公示前までは目が離せないと考えている。昨日の安倍総理の記者会見の前に、電波ジャックをしたのは小池都知事だった。解散前に情報が小出しにされることは当然だが、それでも小池都知事の元に駆けつける政治家の名前が挙がる。

小池都知事の元に「いざ、鎌倉へ」

まさに北条政子の「いざ、鎌倉へ」を体現している。当時、朝廷から北条義時討伐の院宣が出され、御家人は動揺していた。「吾妻鏡」によれば、動揺する御家人に対して北条政子が読み上げた演説の一節が「いざ、鎌倉へ」になる。

「しかるに今逆臣の讒によって、非義の綸旨を下さる。名を惜しむの族は、早く秀康、胤義らを討ち取り三代将軍の遺跡を全うすべし」。これを現代語に訳すると次のようになる。

「天皇や上皇をたぶらかす者があらわれ、朝廷より幕府討伐命令が出された。名を後世に残したいなら、藤原秀康、三浦胤義らを早々に討ち取り、頼朝や、源氏の恩に報いなさい」。

鎌倉幕府討幕のため朝廷が挙兵したものの、幕府側に撃破される。昨日の会見で、小池都知事は安倍晋三首相が今月28日に衆院を解散する見通しとなっていることについて、大義なき解散であり、北朝鮮情勢が緊迫化するなかで、ふさわしい時期か疑問であると呈した。まさに、北条政子の演説の時とシチュエーションが同じではないか。

「希望の党」という党名も予想されてはいたが、ネーミングは及第ではないかと思う。非常にわかりやすい。しかし、私は、よもや「民主党」を使用するのではないかと予想していた。まだ、「民進党」が一般的に浸透していないことや、「国民が主役の民主主義を再構築する」という主旨で使用すると考えていた。

使用すればいまの民進党に大きな打撃を与えることは必至だ。戦略は相手に勝つことだから、ターゲットはより明確化したほうがいい。小池都知事は、自民党よりも民進党を本命のターゲットにするのではないかと考えていた。さらに、その後の小泉元総理との面会などリークも秀逸だった。各党を戦々恐々にする効果がある。

日本新党が躍進した、第40回衆議院議員総選挙を思い出してみたい。前年の第16回参院選で議席を獲得した日本新党と、選挙直前に自民党から離党した議員らが中心となって結成された新党が躍進して「新党ブーム」が巻き起こる。

最初は、熊本県知事であった細川護煕氏が『文藝春秋』に「『自由社会連合』結党宣言」を発表する。そこには、55年体制下で停滞・固定化している既成の政治・行政を打破し、新しい政策を進めていく体制の実現のため、新党を結成して10年以内の政権交代を目指す構想が掲げられていた。細川氏は広く参加を呼びかけたのである。

発足から2ヶ月後、第16回参議院議員通常選挙の比例区で3,617,235票を獲得し、細川護煕、小池百合子、寺沢芳男、武田邦太郎の4人が当選する。第40回衆議院議員総選挙では、35議席を獲得する。日本新党の躍進の際、埋没したのは社会党(日本社会党)だった。その後、社民党(社会民主党)と党名を変更し、現在、所属国会議員数4名となる。

私には、民進党が社民党と重なって見えてしまう。かつて、選挙のプロと言われたのは、小沢一郎(自由)だが、いまや小池都知事がお株を奪いつつある。

「希望の党」を過小評価すべきではない

現在、若狭勝衆院議員を中心に、細野豪志(民進)、松原仁(民進)、福田峰之(自民)などが集結しているが、影響力を発揮しそうなのが、中山恭子(日本のこころ)ではないかと考えている。中山議員は保守論客で主張は自民に近い。年齢は77歳である。中山議員が合流するということは、年齢制限解除を示唆するものではないか。

年齢制限により優秀な政治家が追われることは国益にとっても好ましくない。前回のエントリー「違うだろー。ここは早川忠孝元衆議院議員に期待したい!」に記したとおり、「都民ファースト」の政治家は若すぎて重石がいない。

国政となるとやはり重石となるベテランの存在が必要になる。そう考えれば、ベテランの重鎮といわれる方々が数日の間に集結する可能性も否定できない。当然、水面下での動きははじまっている。誰が合流する可能性が高いのだろうか。

前川喜平(前事務次官)が合流することになればインパクトがある。オブザーバーという肩書で合流するだけでも印象が違うだろう。「加計学園」が一気に争点化する。ほかにも、早川忠孝元衆院議員(埼玉4区)のような実力者にも声を掛けているように思えてならない。そういえば、早川氏はまだ政界引退を表明してはいない。

争点が明確化すれば、小池都知事の独壇場だろう。昨日、小池都知事は首班指名について、山口那津男(公明)を支持するとの発言をした。連立政権にゆさぶりをかける充分な効果がある。公明党はどのように感じただろうか。小池都知事は日本国総理大臣に、山口那津男衆院議員が相応しいと申し上げているのだからインパクト大である。

「希望の党」を過小評価すべきではない。小池百合子氏はそもそも選挙に強い。細野豪志(民進)、松原仁(民進)などの実力者は、逆風のなかで当選を重ねてきた。まったく侮れる存在ではない。10月10日公示までに何があるか予断を許さないだろう。なお、私はあくまでも中立な立場で寄稿していることも申し上げておきたい。

参考書籍
朝日新聞がなくなる日 – “反権力ごっこ”とフェイクニュース』(ワニブックス)

尾藤克之
コラムニスト

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