31歳のクルツ氏が首相に就任か

2017年10月01日 11:30

10月15日はオーストリアの国民議会選(下院、定数183)が行われるが、同日、ドイツのニーダーザクセン州議会でも早期解散され、前倒し選挙が行われることになった。連邦議会選(9月24日)で躍進した極右政党「ドイツのための選択肢」(AfD)がフラウケ・ペトリ―共同議長の離党後、どのような戦いを展開させるか興味深い。同州議会選ではメルケル首相の「キリスト教民主同盟}(CDU)と社会民主党(SPD)が拮抗している。

▲世論調査ではトップを走るクルツ外相の選挙ポスター(2017年9月26日、ウィ―ン市内で撮影)

▲世論調査ではトップを走るクルツ外相の選挙ポスター(2017年9月26日、ウィ―ン市内で撮影)

読者の関心が分かれるところだが、ここは当方がお世話になっているオーストリアの国民議会選の見通しをまとめたい。複数の世論調査では、セバスティアン・クルツ外相(31)が率いる国民党が約32ポイントで第1党、それを追ってケルン首相の社会民主党と極右政党「自由党」が25ポイント前後で並び、その後、「緑の党」、中道リベラル新党「ネオス」など小政党が6・7ポイントとなっている。投票日まで大きな変動が生じない限り、クルツ外相が31歳の若さで首相の座を射止めるのはほぼ確実だ。

▲社民党のケルン党首(首相)の選挙ポスター(2017年9月26日、ウィ―ン市内で撮影)

▲社民党のケルン党首(首相)の選挙ポスター(2017年9月26日、ウィ―ン市内で撮影)

国民党が政権を担当したのはシュッセル首相時代以来(2000~07年)だ。社民党との連立ジュニア政党として久しく第2党を甘んじてきたが、クルツ国民党が第1党に躍り出る可能性が高いわけだ。

社会民主党のジュニア政党として国民党は選挙の度に得票率を落としてきた。自由党に追い越され、第3党に低落するのも時間の問題だった。それが5月10日、国民党党首のラインホルト・ミッテルレーナー副首相が突然辞任表明。14日には国民的人気の高いクルツ外相(国民党)が新党首に選出された。そして16日、社会民主党と国民党の2大政党から構成されたケルン連立政権は任期を1年以上残し、今年10月15日に早期総選挙を実施することで合意した、というわけだ。その後、クルツ旋風が吹き荒れてきたのだ。

中道右派国民党の党首となったクルツ外相は党比例代表の選出を州党幹部に委ねず、独自に選ぶ。これまで州党首の意向を無視できなかったが、クルツ氏は「私に選出権を与えてくれないならば、党首を引き受けない」と主張し、州国民党の幹部たちから了解を受け取った経緯がある。だから、クルツ氏が作成した比例代表制リストはクルツ氏の意向が100%反映しているわけだ。

社民党も自由党も州レベルの党幹部たちの意向を無視できないが、クルツ氏はその慣習をいとも簡単に破棄させ、自身の意向に沿った人材を選んでいった。党内の老幹部たちから不満の声も聞かれたが、クルツ氏以外で選挙に勝てる人材はいない。若いが行動力がある。女性票も取れる。

前「緑の党」のピルツ氏(現「ピルツ・リスト党首)は、「私はウィーン大学で国民経済を学んだが、あなた(クルツ)は国民党を学んできた」とテレビ番組の討論で述べていた。表現はきついが、正論だろう。。クルツ氏は若い時から国民党青年部のリーダーを務めるなど、党内で成長していった政治家だ。外部で仕事をしたことはない。そのクルツ氏が国民党を抜本的に刷新してきたわけだ。ウィ―ン大学法学部に在学中。時間が取れれば、卒業したいという。

第1与党の社民党のケルン首相は選挙戦では様々な不祥事が発生し、ついてない感じはする。こまめに工場や現場を訪問し、アピールしているが、ケルン首相には残念ながらクルツ氏のような若さと輝きがない。実業界出身で経済分野では明るいが、政界入りしてまだ1年しか経過していない。まだ職業政治家になりきっていない面が見られる。

一方、選挙の度に注目されてきた極右政党自由党は今回はメディアの関心がクルツ氏に集まり、影が薄くなってきた。クルツ外相は国境の厳格な監視、政治的イスラム教徒の追放など、自由党の難民政策より厳格な政策を実施し、欧州の難民対策で大きな影響を与えてきた。自由党のハインツ・クリスティアン・シュトラーヒェ党首は、「クルツ氏は自由党の難民政策をコピーしている」と批判しているほどだ。

今回は「緑の党」が分裂し、「緑の党」とそこから出たピルツ議員が結成した「ピルツ・リスト」に分かれた。かなりの得票率が後者に流れる可能性が予想される。「ネオス」は前憲法裁判所長官で大統領候補者だったイルムガルド・グリス女史を招いたが、あまり効果は出ていない。

そこで選挙後の連立政権は国民党と自由党の連立政権が発足する可能性が高い。ケルン首相は「第2党になれば、野党になる」と主張、クルツ首相の下で第2バイオリンを弾く考えはないことを明らかにしている。ただし、クルツ国民党の票があまり伸びなかった場合、社民党と自由党の連立政権も考えられるが、ウィ―ン市社民党内には自由党との連立に強い抵抗がある。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2017年10月1日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

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