新聞の発行停止とサイバーカスケード化

西日本新聞は宮崎県・鹿児島県での発行を来年3月末で停止する。九州全体で発行部数65万8900部だが、宮崎県では1373部、鹿児島県では914部に過ぎなかったそうだ。

先日はWall Street Journal(WSJ)が欧州版・アジア版の紙媒体を廃刊すると発表した。欧州版は9月29日が、アジア版は10月7日が最終発行日だった。休刊の理由は広告収入の減少で、2017年第二四半期WSJの広告収入は12%減とForbesは報じている

発行部数の減少は業界全体の傾向である。日本新聞協会の統計によれば2016年の発行部数は4328万部で、5年前2011年の4835万部から507万部減の惨状である。それが広告収入の減少に結びついて経営を悪化させている。

新聞業界は生き残りをかけて電子版に注力し始めた。西日本新聞は「デジタル時代にふさわしいメディア企業への転換」を掲げており、Wall Street Journalも電子版の購読者が130万人に達しNew York Timesに次ぐ規模だそうだ。

これに対して、一部の新聞は特定の読者だけにアピールする過激化への道を歩み始めている。ネットには、同種の考えを持つ者だけが集まる場所が生まれ、それぞれの場所は排他的になって異種を排除するサイバーカスケード(集団極性化)という現象がある。「パヨク」「ネトウヨ」と批判しあうのが典型である。新聞は「社会の木鐸」としてこのような現象に歯止めをかける良識を持っていたはずだが、今では朝日は左翼、産経は右翼と互いに罵りあう。東京新聞記者の講演会に産経新聞記者が入場を拒否される事態も起きている。

サイバーカスケードは限りなく進んでしまうのが問題である。集まる人々の考えはどんどん純化されていくが集団の規模もどんどん小さくなっていく。新聞のサイバーカスケード化は読者の急縮小をもたらす恐れがあり、その時には新聞は完全に死ぬだろう。